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転生皇子の魔導録 ー未発見の魔導書を求めてー  作者: ビーグル犬のぽん太
第一章 アルスという名になって
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魔人ふたたび

 カブールのお葬式が終わった日のこと。

 エブール、カブールの代が終わり、次はカブールの子のヴィルが長老となる。

 彼も穏やかな性格で、知的で、三代にわたり長老家はいい人ばかりだ。

 俺は、十二歳になっている。

 狂獣バーサクが暴れていると聞いて、俺は仲間たちと森の奥へと進んだ。狂獣バーサクとは、三つ目の熊といえばわかりやすい。しかしその巨体は、ヒグマよりも大きいと言える。魔族とは違い、言語が通じないので意思疎通は難しい。魔族でも、魔獣とは距離をとっているが、それは支配しようとしても無駄だという諦めが、そうさせていた。

 どこかの森から、移ってきたらしいその魔獣は、ゼグスが率いる部隊の追撃を避けるうちに、コボルトの縄張りに侵入したようだ。

 子供たちが、川遊びに通う方向で、目撃されている。

 お葬式が終わったばかりでバタバタだけど、俺とタボ、ケイの三人は斥候として、その場所へと急いでいた。

 痛がりのケイも、立派な戦士になって……キャンキャン言ってた頃が懐かしいよ。

「なに? 顔に何かついてる?」

「いや、気のせいだった」

「変なの」

 ケイが視線を転じて、枝葉の向こうを示した。

「匂いがする」

 慎重に、低い体勢を保って進むと、枝葉の向こう、大樹の根本にそれはいた。

「あれ、黒い毛並み……ここから見てあのデカさ……やばいね」

 彼女の言に、タボが弓に矢をつがえながら言う。

「仲間を呼ぼう」

 俺の言葉に、タボが頭を振る。

「いや、俺たちに気づいている……だけど、気づいていないフリをしている……これは襲ってくる前触れだ」

 やるしかない。

「アル、狂獣バーサク勇気を折る叫びメティオテロレームは、聞いた者の心を折るらしい。気をつけようね」

 ケイの言葉に、頷きを返した。

「ああ、俺が前衛、矢で相手の気をそらして」

 俺は素早く前進する。

 馴れた森、後ろには仲間、前には敵。

 巨体は、俺の接近で素早く反転した。

 デカい!

 魔獣が、咆哮する。

『グォォオオオオオオオオオ!』

 おお!?

 聞いた直後、一気に不安と恐れが襲ってきた!

 脚が!

「アル!」

 ケイの声。

 肩越しに、彼女とタボが腰を抜かしているのがわかった。

 これは、たしかにヤバい! 脚に力が入らないし、心臓がバクバクとして呼吸が荒くなる。

 狂獣バーサクが、勝ち誇って突進してくる直前、俺は火炎弾フレイムを発動した。

 これまで散々、練習して、術式への理解を深めてきたんだ。

 恐慌状態となっていても、俺は一瞬で巨大な炎を発生させる。

 火炎の塊が狂獣バーサクにぶつかると、奴は吹っ飛んで爆発した。

 俺が作り出した火炎弾フレイムはすさまじい威力で、狂獣バーサクの肉片も血も全てを焼き尽くす。

 ものすごい威力……我ながら驚いていると、前方からその声が聞こえてきた。

「誰かいるのか?」

「ゼグス様! こちらに誰かいます!」

 ゼグスの部下たち……オークの戦士たちだ。

 彼らは俺たちを見つけ、驚いた顔をする。

「コボルトたち……と、アルスか」

 オークたちの後方から現れた獅子頭の魔人が、俺たちを見て目を見開いた。

 ゼグス……二度目だ。

 今なら、その強さがより正確にわかる。

「お前らが倒したのか? 見事だ」

 ゼグスの称賛に、タボがよろよろと立ち上がりながら応える。

「いえ、アルが一人で」

「アル、見事だ」

「いえ……ビビって歩けません」

 俺は大げさではなく、脚の震えが尋常ではない。

 魔法で撃退していなければ、やられていてもおかしくなかった。

 勉強になった。

 魔導士としての質が高くても、こういうケースであっけなく倒れることがあるかもしれない……。

 単純な強さだけでなく、総合的に強くなければ、この世界ではいつ死んでもおかしくないのだ。

「どうした? 深刻な顔をして」

 ゼグスの問いに、俺は表情を崩すも、この魔族相手に誤魔化しはできないと感じて、正直に話す。

「はい……俺はマ……母さんに魔法を教わり、強くなったつもりでした。ですが、狂獣バーサクの雄叫びを聞いて、脚が動かなくなってしまい……運よく、魔法発動ができましたが、もし失敗していれば、死んでいました。なので、経験を積まないと、どんなに知識や魔法習得も意味を成さないような気がしました」

「なるほど……」

 ゼグスは頷くと、意外なことを言ってきた。

「稽古をつけてやろう。ただし、下手をすれば怪我をするし、もしかしたら、うっかり殺してしまかもしれん。どうだ?」

 ……稽古か。

「お願いします」

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