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転生皇子の魔導録 ー未発見の魔導書を求めてー  作者: ビーグル犬のぽん太
第一章 アルスという名になって
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魔王の側近

 翌朝、エブールが帰ってきた。

 そして、その魔族も村へと入る。

 邪悪な気をまとう魔族は、獅子の頭部に赤い目が不気味だった。首から下は人間と似ているが二メートル近くの体躯は威圧的で、その尾は蛇という異形だった。そして身体は赤褐色で、禍々しい。

 コボルトたちは、片膝をつきその魔族を迎える。

 俺もマリーナも、彼らにならって、片膝をついた。

 ここは、事を荒立ててはいけないと感じる。

「リーゼキュラ様の代理である。ゼグス・オズ・マズだ。出迎え、ご苦労である」

 獅子頭は不気味な声でそう言うと、俺とマリーナを赤い目で捉えた。

「人間くさい……リーゼキュラ様の統べる地に、どうして人間がいるのか? エブール、申してみよ」

「はい……彼女らは人間ではありますが、そちらの女性に過去、我々は助けられたことがあります。その彼女がリーゼキュラ様の保護を求め、この地に参りました。我々は受けた恩を忘れませぬ……そして今では、二人は我々の仲間でございます」

「人間、名は何であるか?」

 マリーナが、口を開く。

「マリーナ・アラギウス・ファウス……この子はわが子で、アルス・マリーナ・ファウスです」

「アラギウス・ファウス?」

 獅子頭が、その言葉を吐き出すと口端を歪めた。

 アラギウスファウス? というのは?

 初めて、聞いた。

 ゼグスが言う。

「嘘であれば許さぬぞ。そのほうはアラギウス・ファウスの娘か?」

「……正確には、弟子であり、養女でございました」

「なるほど……大魔導士アラギウス・ファウスの娘であるなら、それを証明してみせよ」

 ゼグスはそう言うやいなや、予備動作なしで魔法攻撃をおこなう。

 マリーナは一瞬で、防御魔法ディフェンシォを発動し、獅子頭の炎姫歌華ヴァルガデローザを防いだ……というより、消し去ってみせた。

 獅子頭は頷くと、マリーナを見て口を開く。

防御魔法ディフェンシォの中でも最高難易度の次元遮断ベルベットヴェルム……この魔法でなければ、防いだとしても衝撃でコボルトたちが怪我をすると読んだのだな?」

「ゼグス様の魔法が強力でしたので、使わざるを得ませんでした」

「あの魔法を、これだけ滑らかに、正確に、素早くおこなう魔導士は、アラギウス・ファウスの養女で間違いないであろう。わかった。彼の身内であれば歓迎する……ミューレゲイトに貸しを作れると、主もお考えになるだろう」

 ゼグスはエブールに言い、彼の一礼を眺めながら続ける。

「ゴブリンどもが、そなたらの縄張りを犯していた……結果、そなたらの子が襲われ、怪我をした……それを助けたのが、人間であった……とても信じることなどできぬと思うておったが、今、その訴えが事実であったと認めよう。エブール、私の非礼を許してほしい」

「とんでもございません。無理からぬことでございます」

「改めて、ゴブリンどもには、そなたらの縄張りを犯すなと申し伝える。これを破ったならば、ゼグスが自ら、ゴブリンどもを罰すると約束する。人間の子よ」

 ゼグスに声をかけられ、俺は魔族を見た。

 マリーナが、小声で言う。

「目を見ては失礼、その下、首」

 俺は視線を、魔族の胸あたりに定めた。

 ゼグスが、笑う。

 魔族でも、笑うらしい……。

「よい、無礼は子の特権で、それは人も我らと違いはないだろう。アルスとやら、よく仲間を守ったな? 人も、我らも、その価値観は等しいであろう。主に代わり、感謝する」

「……とんでもございません。当然のことをしただけです」

 答えると、ゼグスは頷きエブールへと視線を転じた。

「では、これで。魔族の母リリスの加護をそなたらに」

「ありたがき、幸せ」

 ゼグスが去る。

 ……不気味だし、邪悪な気だけど、信義というものがあると感じた。

 ……耳が痛い人間、いっぱいいるだろうな。

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