幕間 サーバールームにて2
静寂の中で、端末が吐き出したログが、全員の目に焼き付いていた。
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「期待してるよ」
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「……なんだそれは」
誰かが、腹の底から絞り出すように言った。
「分からない」
別の声が答える。しかし答えた声自身も、その「分からない」を咀嚼しきれていないのが分かった。
「ただ、明らかにおかしい。システムのログにしては、人間的すぎる」
「誰かが『操作している』」
「内部からか?」
「外部からは不可能だ」
「じゃあ中か」
「……あるいは」
言葉が途切れる。誰も続かない。
「なんだ」
「『中と外の区別がない存在』かもしれない」
空気が凍る。モニターの青白い光だけが、変わらず揺れていた。
そのとき。別のモニターが切り替わる。新しい映像――ネオ。そしてリリィ。草原の中で向かい合う二人。
「この黒い個体……」
「ログにないプレイヤーだ。どこからもアクセスの記録がない」
「NPCでもない」
「識別不能」
映像がズームされる。ネオが戦っている。空間を移動し、モンスターを崩壊させる。その動きは、通常のプレイヤーとも、プログラムされたNPCとも、どちらとも違う。
「……なんだあれは」
誰かが呟く。「バグ、か?」
「違う」
即座に否定される。短く、しかし確信を持って。「バグにしては――出来すぎている」
沈黙。全員が同じ結論の手前で止まっている。
そのとき。また、ログが流れた。
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「順調だね」
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誰も、何も言えない。その言葉は――明らかに「誰か」のものだった。しかし誰のものかは、まだ分からない。
そして。この部屋の中にも。「怪しい人間」は、一人ではなかった。




