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マスターネオはネコまない ―黒猫GMのマスター魔法奪還ログ―  作者: Master NEO
第一章 奪われたマスター魔法

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第六話 信じない女と、嘘みたいな猫

 遺跡を抜けた先に、開けた草原が広がっていた。


「……やっと普通のエリアか」


 ネオは小さく呟く。だが油断はしない。この世界はもう「普通」という言葉を持たない。


 その草原に、金属音が響いた。


「くっ……!」


 視線を向ける。そこにいたのは一人のプレイヤー。白いローブ。長い杖を両手で構えている。三体のモンスターに囲まれ、後退しながら詠唱を試みていた。


「ヒーラーか」


 後衛職が前衛なしで囲まれている。最悪の状況だ。


「……まあ」


 ネオは肩をすくめる。「見捨てる理由もないか」


 地面を蹴る。黒い巨体が一気に距離を詰める。


「伏せろ!」


 白ローブの少女が反応した。本能的にしゃがむ。その頭上を、ネオが飛び越える。


「なっ――!?」


 モンスターに突っ込む。「シフト」――ネオの姿が消える。次の瞬間、背後へ。


「遅い」


 一体を叩き飛ばす。残り二体が反応する。だが――「開け」。カチリ。一体の動きが止まる。関節のロックが外れ、崩れるように倒れる。


 最後の一体が正面から襲いかかる。ネオはそれを見て――動かない。


「危な――」


 直撃、のはずだった。しかし攻撃はすり抜けた。


「……え?」


 ネオはそのまま前に出る。「じゃ、終わり」――一撃。モンスターが消える。


 静寂。草原に風が通る。


 白ローブの少女がゆっくり立ち上がる。そしてネオを見た。


「……何それ」


 第一声がそれだった。感謝でも驚きでもなく、純粋な不審の色が声に滲んでいた。


 ネオは笑う。「猫だな」


「違うでしょ」


「じゃあ何に見える?」


「バグ」


 ネオは一瞬だけ動きを止めて――笑った。「正解」


 少女は眉をひそめる。「信用できない」


 即答だった。ためらいもない。


「まあそうだろうな」


 ネオはあっさり頷く。「でもさ。さっき助けたの、俺だぞ?」


「それとこれとは別」


「厳しいな」


 少女は杖を構え直す。「あなた、普通じゃない」


「褒め言葉だな」


「違う。危険って意味」


 ネオは少しだけ笑みを消す。「……まあ、間違ってない」


 一瞬の沈黙。乾いた風が草を鳴らした。


 そのとき。ログが浮かぶ。


```

「その子、どうするの?」

```


 ネオの目が細くなる。「……見てるな」


「何?」


 少女が反応する。


「いや、独り言」


 ネオは軽くごまかす。そして言った。「一緒に来るか?」


 少女は即答する。「行かない」


「だよな」


「でも」


 少しだけ間を置く。その目に、何かが揺れる。「情報は欲しい」


 ネオは笑った。「交渉成立だな」


「まだしてない」


「じゃあこれからするか」


 二人は向かい合う。壊れた世界の、草原の真ん中で。


「条件は?」


「裏切らないこと」


 ネオは少しだけ考えてから言った。「それは無理だな」


「は?」


「俺、嘘つくから」


 少女の目が鋭くなる。しかしネオは続ける。「でも、助けはする。それだけは本当だ」


「……何それ」


「分かりやすいだろ?嘘をつくかもしれないけど、命は守る。それで判断してくれ」


 沈黙。やがて少女はため息をついた。「……最低」


「よく言われる」


 そして――「……暫定で組む」。


 ネオは笑った。「よろしくな」


「よろしくしない」


 二人は並んで歩き出す。信頼はない。しかし利害は一致している。


 名前も、まだ聞いていなかった。


 その様子を眺めながら。ログが一行、静かに流れた。


```

「……ふーん」

```


 ほんの少しだけ。面白くなさそうな気配が、文字の端に滲んでいた。


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