第五十八話 残る者と、帰る者
集落のプレイヤーが全員ログアウトした。フィールドの者たちも、廃都の者たちも。
残ったのは――ネオ、リリィ、カイ、そしてヒカリ。
「……リリィ、お前も帰れ」
「あなたは?」
「俺は最後に確認してから出る」
リリィはしばらくネオを見てから――ヒカリに向いた。
「……一つだけ聞いていいですか」
「どうぞ」
「……ヒカリさんは――ずっと、ここに閉じ込められてたんですか」
ヒカリが、少しだけ考えた。
「閉じ込められてた、とは少し違う。私が好きでここにいた。でも――音央と話せるようになるまで、ずっと一人だったのは、本当かな」
リリィが、少しだけ目を細めた。
「……それは」
「寂しかったよ。でも――音央が頑張ってる姿、ずっと見てたから。それで十分だった」
リリィは何も言わなかった。
ただ――ヒカリに、深く頭を下げた。
「……ありがとうございました。この世界を作ってくれて」
ヒカリが、静かに笑った。「こちらこそ。来てくれて、ありがとう」
リリィが――ログアウトした。光になって、消えた。
カイが残っていた。
「俺は……どうなる?」
ネオは《マスターリスト》でカイを確認した。設計師のコード。この世界のシステムの一部。
「……《エビルウィンド》を使えば、お前も外に出られるかもしれない。でも確証はない」
「そっか」
カイは、ヒカリを見た。「……俺、ここに残っていい?」
「もちろん」
ヒカリが答えた。「ここに残ってくれると、私も嬉しい。一人より、誰かいた方がいい」
「じゃあ――そうする」
ネオが言う。「頼む。ヒカリの傍にいてくれ」
「任せろ」
カイが――この世界に溶けるように、静かに存在の形を変えた。ログアウトではなく、世界の一部に。フィールドのどこかに、気配として。
ヒカリと、ネオだけが残った。




