第五十三話 終わりの番人
扉から出てきたのは――GMの姿をした、何かだった。
ネオに似ていた。黒い猫の形。大きさも同じ。毛並みも同じ。ただ――目が光っていない。空洞だった。そこに誰もいない目だった。
「……俺の複製か」
「設計師が――GMという存在の、もう一つの可能性として作ったもの」
光が静かに言う。「全力で壊すGM。権限を暴走させた先にある姿。これを越えた人間だけに――最後の力が顕現する」
空洞の目がネオを見た。そして――動いた。
《シフト》――同じ速度で動く。
《ドロー》――互いにキャンセルされる。
《ピグマリオン》――相手も同じ魔法で打ち消す。
「全部同じ魔法を使ってくる……!」
「当然だ。これは俺自身だからな」
ネオは笑った。苦さのない笑い方で。
「でも――一つだけ、違うものがある」
空洞の目には――誰もいない。誰も戻ってくるはずの人がいない目だ。
「カイ!」
「任せろ!」
「リリィ――補助頼む!」
「やってる!」
光が――静かに、ネオの隣に立った。
「私も、いる」
「……下がれ」
「嫌だ。音央が戦ってるのに、私だけ見てるのは――」
「危ない」
「知ってる。でも――いる」
カイが相手を引きつける。リリィが速度を上げる。光が――コア領域そのものを安定させる。世界がぶれないように、手のひらで支えるように。
そしてネオが――一瞬の隙に、相手の核に触れた。
「……お前は、俺じゃない」
ネオは静かに言った。「壊すだけのGMは――GMじゃない」
「開け」
カチリ。
空洞が――満たされた。光が入る。目が光る。存在が意味を持つ。そして――崩れた。光の粒子になって、散っていく。
静寂。




