第五十二話 設計師の試練
嵐が消えた後――コア領域の奥に、扉が現れた。
小さな、木の扉。錆びた金具。特別なものは何もない。どこにでもある、普通の扉。しかし、その前に立つと、何かが違うことが分かった。
「……これが最後だ」
ネオが近づく。光が、隣に立った。
「……この扉、私が作ったの」
「お前が?」
「うん。最後のマスター魔法を置いておくための、試練の扉」
「どんな試練だ」
「一つだけ、答えてもらう」
ネオは扉に手をかけた。《マスターキー》を当てる――カチリ、とは鳴らなかった。
代わりに、文字が浮かんだ。光る文字が、古い木の扉に刻まれるように現れた。
「*GMよ。一つだけ、答えてみせろ。お前は――この世界を、壊せるか?*」
沈黙。
カイが息をのむ。リリィが、じっとネオを見る。
ネオは――扉を見た。
「……お前が書いたのか、これ」
光が、少しだけ頷いた。「私が書いた」
「なんで――そんな問いを置いた」
「……壊せる、と言える人間に渡したくなかったから。でも――壊せない、と言う人間にも渡したくなかった」
「……どういう意味だ」
光が、静かに言う。「壊す覚悟がなければ――守れない。でも、壊したくて持つ人間には、渡せない。どちらでもない答えを――ちゃんと言える人に、渡したかった」
ネオはしばらく、その言葉を転がした。白い空間の中で、その言葉の重さを測った。
それから――扉に向かって、言った。
「……壊せる」
沈黙。
「でも――壊したくない。だから取り戻してきた。壊す力を持っているから――壊さずに済む方法を選べる。それが、俺の仕事だ」
光が――笑った。
「……正解」
扉が、開いた。




