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幕間 謎の男、再び
雑居ビルの奥の部屋には、巨大な装置が設置されていた。
アクセスユニット。意識をネットワーク空間に送り込む、専用の機材。その装置に男は横たわっている。
「……コア領域に、侵入している」
男は静かに呟いた。「音央が、既にいる」
「光の残滓が――顕現している。やはりデータとして残っていたのか……」
「しかし、まだ残り二つのマスター魔法が現れていない」
「……音央がそれを手に入れてからでも遅くない」
長い沈黙。装置の低いアクセス音だけが続いている。
「……全てのマスター魔法がなければ、《パーフェクト・コード》は解き放たれない」
モニターには、コア領域の映像が映っていた。白い光の中に――黒猫と、女性の影。
男は静かに目を瞑った。
「あと少し――あと少しだ」
装置が大きな音を立てて動き出し、男はネットワークの世界に溶け込んでいく。




