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第四十八話 光の中の人
光が――人の形を取った。
輪郭が定まり、色がつく。小柄な女性の形。髪が長い。目が――光を持っている。生きている目の光を。
その存在が、ゆっくりとネオを向いた。
笑っていた。
「……来たね、音央」
その瞬間――
ネオは、動けなくなった。
「……」
「……え?」
リリィが、二人を見た。
「音央、って……」
ネオは、黙っていた。
カイが小さく言う。「……知ってるのか、その人のこと」
「……ああ」
ネオは、静かに答えた。
「……知ってる。ずっと、知ってた。でも――信じたくなかった」
信じたら、本当のことになってしまうから。
光の中の女性が――ゆっくりと近づいてくる。白い空間の中を、当たり前のように歩いて。
「ごめんね。驚かせるつもりじゃなかったんだけど」
「……驚いてない」
「嘘だ」
ネオが――初めて、笑った。苦しそうな、でも確かな笑顔で。
「……嘘だな」
リリィが、静かに聞く。「……ネオ。この人は、誰?」
ネオは少しだけ間を置いた。
「……設計師だ」
「倉城光?」
「そう……俺の、妻だ」
空気が、止まった。




