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第四十六話 最深部へ
世界の底、というのは比喩ではなかった。
ゲームの地形において――最も深い座標。海底よりさらに下。開発ドキュメントには「コア領域」と記されていたエリア。本来プレイヤーはアクセスできない。GMでさえ、通常は入らない場所。そこは設計の根幹が眠る、世界の核心だった。
「《パスウォール》でいけるか?」
カイが問う。
「壁というより――境界の問題だ。コア領域に向かうには、《ジャンプ》で存在を認識してから飛ぶしかない」
「存在は認識できてる?」
「……なんとなく」
ネオは一瞬だけ、間を置いた。
「……ずっと、なんとなく分かってた。でも――確かめたくなかっただけだ」
リリィが、静かに聞く。「……何か、知ってるの?」
「まだ確信がない。会えば分かる」
それだけ言って、ネオは《ジャンプ》を構えた。
地図の外れの、かすかな光の点。ずっと見ていた声の、場所へ。
「飛ぶ」
次の瞬間――世界が切り替わった。




