第四十五話 最後の朝に似た夜
空が――変わっていた。
灰色ではない。かといって、完全な青でもない。でも――確かに、光が混じっている。かつて塞がれていた色が、じわりと滲み出してきているような空だった。
「……夜明け前、みたいだ」
ネオは空を見上げた。黒い毛並みが、淡い光を受けている。
集落は静かだった。廃都から来たプレイヤーたちも、ようやく眠れた様子だ。焚き火が低く揺れている。
「眠れなかったの?」
リリィが隣に来た。
「眠ってた」
「何時間?」
「……三時間くらい」
「少なすぎる」
「猫だから」
「それは関係ない」
ネオは笑った。
視界の端に、《マスターリスト》を展開する。全員の状態――安全。しかし――
「……外部の動きが、また増えてる」
「例のログが?」
「そうだ。昨日の交渉を断って以来、ずっと何かしようとしている。でも――なぜか、手を打ってこない」
「なぜ?」
「……分からない。待ってる、という感じがする」
「待ってる?何を?」
「……俺が、最後の魔法を取りに行くのを」
リリィが少し、眉をひそめた。「……罠?」
「かもしれない。でも――行かなきゃいけない。残り二つを取らないと、世界は直らない」
カイが後ろから来た。静かな足音。「……聞いてた。どこへ行けばいい?」
ネオは《マスターリスト》の「地図の外の点」を見た。ずっとそこにある、消えない光の点を。
「……世界の底、だな」




