表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスターネオはネコまない ―黒猫GMのマスター魔法奪還ログ―  作者: Master NEO
第三章 マスターネオの決意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/75

第四十一話 《パンドラボックス》

 それは――箱だった。


 巨大な、黒い箱。人の背丈の三倍はある。表面に、無数の文字が刻まれている。ゲームのコードにも似た、数式にも似た、何か。その文字が、かすかに脈打っている。


「……なんだこれ」


 カイが呟く。


 箱は動かない。しかし――存在が重い。近づくほど、空気が圧縮される感覚。呼吸が少しだけ重くなる。


「《マスターリスト》で確認したが――識別子が空白だ。これは、存在してはいけないものだ」


「存在してはいけない?」


「設計の外にある。設定にない。でも、在る。それは――」


「バグの化身みたいなもの、か」


 リリィが静かに言った。


「……近い。いや、もっと正確には――全ての誤りを集めたもの、だな」


 そのとき――箱が、鳴った。


 低い、共鳴するような音。部屋全体が振動する。


 表面の文字が――赤く光り始めた。


「動くか!」


 カイが後退する。リリィが魔法陣を構える。


 箱が――開いた。


 中から出てきたのは、見えない何かだった。形がない。だが――部屋の温度が下がった。全員のHPが、わずかに削れ始めた。


「……何もいないのにダメージが入ってる!」


「「誤り」は、形を持たない。だから――通常の攻撃は通らない」


「じゃあどうするの!」


 ネオは素早く考えた。


 形がないものを――どう倒すか。


 《マスターキー》は、閉じているものを開ける。《ピグマリオン》は、動くものを止める。《マスターリスト》は、存在を確認する。


 確認する……識別する……定義する。


 ネオの思考が、止まった。


 名前がなければ――名前をつければいい。


「《クリエイト》!」


 ネオは《クリエイト》を、目の前の「空白」に向けた。


「名前を――やる。「誤り」でいい」


 光が散った。


 空白が――形を持ち始めた。輪郭が定まる。色がつく。


 黒い霧のような、人型のような、何か。


「……いた」


 形を持った瞬間――《ピグマリオン》が使えた。


「止まれ」


 「誤り」が――固まった。


「カイ!リリィ!今だ!」


 三人が同時に動いた。カイが核の部分を貫く。リリィが解除魔法を叩き込む。ネオが《マスターキー》でその内側を開く。


「開け」


 カチリ。


 「誤り」が――溶けた。黒い霧が散り、光になり、消えた。


 箱も――崩れた。文字が消え、表面が砕け、ただの石の塊になって落ちた。


 静寂。


「……終わった?」


「終わった」


 ネオはゆっくりと息を吐いた。


 視界にログが走る。


```

【Master Authority Fragment Detected】

【マスター魔法:《パンドラボックス》取得】

対象をゲームから除外する(BAN)

```


「……これか」


 ネオは、その魔法の重さを感じた。


 BANする。存在を、この世界から消す。


「……使うときは、慎重にしないとな」


 リリィが珍しく、厳しい顔をした。「当然だよ。それ、使い方間違えたら――」


「分かってる」


 ネオは静かに言った。「GMの権限の中で――一番、重い力だ」


 カイが、ぽつりと言う。「……俺にも、使えるのか?」


 沈黙。


「……お前を使う気はない」


「でも――できる?」


「……多分マスターリストに載ってる存在なら、全員に使える」


 カイは少しだけ笑った。「そっか。まあ――使わないでくれよ」


「当然だ」


 ログが一行。


```

「……ネオ、それを持ったら、使いたくなることがあるかもしれない」

```


「ああ」


```

「そのとき――考えてくれると、嬉しい」

```


 ネオは、その言葉の重さを、しばらく感じていた。


「……分かった」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ