第三十八話 全部、見える
《マスターリスト》を発動した瞬間――ネオは止まった。
視界が、変わった。
世界の上に、別の「層」が重なった感覚。フィールドの至るところに、光の点が浮かんでいる。それぞれの点が、それぞれの誰かを示している。
「……これ、全員の位置か」
点の数が――多い。集落の仲間たち。廃都のプレイヤーたち。さらに遠く――地図の端まで。世界のすべてが、一枚の画面のように広がっていた。
「何が見えてるの?」
リリィが聞く。
「全員が見える。プレイヤーも、NPCも――位置も、HPも、状態も」
「全部?」
「全部だ」
カイが少しだけ、固まった。「……俺の情報も?」
「……ある」
ネオはカイのリストを見た。位置、HP、ステータス――そして「識別子」。
その識別子に、見慣れない記号が混じっていた。
「……カイ」
「……なんだ」
「お前の識別子、プレイヤーじゃない」
静寂。
カイは笑わなかった。「……そうか」
「驚かないのか」
「……薄々、気づいてた」
リリィが二人を見る。「……どういうこと?」
「カイの識別子は――NPCコードでも、プレイヤーコードでも、外部干渉でもない。もっと別の――」
ネオは一瞬、言葉を止めた。
「設計師の設定に近いコードだ」
沈黙。
「……設計師って、倉城光のこと?」
リリィが静かに言う。
「そうだ。このゲームを作った人間のコードに近い――ということは」
「……俺は」
カイが、空を見上げた。「……この世界のシステムなのかもしれないな」
ネオはしばらくカイを見てから――言った。「そうかもな」
「嫌じゃないの?」
「なんで嫌なんだ。お前は今ここにいて、動いてて、助けてくれた。それで十分だ」
カイは少しだけ――笑った。「……お前、やっぱり変なとこで優しいな」
「そうでもない」
ログが、静かに一行。
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「……いいね、それ」
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その声は――どこか、ほっとしているような響きだった。




