第三十七話 人形遣いの王
広場の中央に、それはいた。
玉座に座った、巨大な人型の存在。装甲を纏い、顔の半分が仮面に覆われている。その周囲には――無数の糸。透明な糸が、広場全体に蜘蛛の巣のように張り巡らされている。光の当たり方でかすかに光る、細い線が網の目を作っていた。
「……人形遣いか」
ネオが静かに言う。
「《ピグマリオン》の糸を――エリア全体に広げた?」
「そういうことだ。これが、都市を固定した術者だ」
人形遣いの王が――ゆっくりと立ち上がった。玉座が軋む音が、広場に響く。視線がネオに向く。
「……来るか」
次の瞬間――糸が動いた。
透明な糸が、空気を切る速さでネオに向かって来た。
「《シフト》!」
回避する。だが――糸は追ってくる。
「誘導してる……!」
「《パスウォール》!」
壁を通り抜けることで、距離を取る。糸が壁に絡まる――が、すぐに引き戻される。
「厄介だ」
カイが横から飛び込む。「俺が引きつける!」
「無茶するな――」
「いいから行け!中心の糸束を断てばいいんだろ!」
確かに――人形遣いの王の背中に、糸が一本だけ太く集まっている場所がある。そこが核だ。
「リリィ!カイのHP、切らすな!」
「分かってる!」
ネオは《ジャンプ》で、カイを起点にして飛んだ。存在を捕捉して、そこへ向かう。
人形遣いの王の死角へ――一瞬で跳躍。
「開け」
核の糸束に《マスターキー》を当てる。
カチリ。
糸束が――解けた。透明な糸が一斉に消える。広場の「網」が、消えた。
人形遣いの王が――崩れる。装甲が外れ、仮面が落ち、内側から光が溢れて散った。
次の瞬間――廃都全体に、変化が起きた。固まっていたプレイヤーたちが、ガクン、と動き始めた。
「……!?」
「……な、何が……?」
混乱の声が広場に届く。
ネオは静かに、ログを見た。
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【Master Authority Fragment Detected】
【マスター魔法:《マスターリスト》取得】
全プレイヤーとNPCの位置・状態・情報を確認する
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「……来た」




