第三十六話 静止する廃都の中で
廃都の中は――奇妙だった。
建物が崩れているのは予想通り。しかし――あちこちに、動かないものたちがいた。
「……これ」
リリィが声を上げる。「みんな、固まってる」
確かに――街の至るところに、プレイヤーが立ったまま、座ったまま、それぞれの姿勢のまま動かない状態でいる。十人以上。ある者は剣を振り上げたまま。ある者は地図を見ていたまま。そのままの姿で、固まっている。
「《ピグマリオン》かよ」
ネオが呟いた。
「……誰かが使ったの?」
「使われた、というより――この都市全体が、固定されてる。都市規模の《ピグマリオン》だ」
「そんな使い方ができるの?」
「俺にはできない。でも――マスター魔法の本来の権限なら、エリア単位での適用も可能なはずだ。それだけの力が必要だが」
カイが固まっているプレイヤーの一人に近づく。「……生きてるよ。HP減ってない。ただ――動けない」
ネオがプレイヤーに《ドロー》を試みる――引っ張られない。固定されている。
「予想通り。都市全体がロックされてる。エリアごと開放しないと、動かせない」
リリィが真剣な顔をする。「……早く助けないと」
「分かってる。だから急ぐ」
ネオは都市の中心へ向かった。源を断てば、固定は解ける。
中心にある――広場。そこに、ボスがいる。




