第三十五話 北の廃都
集落が落ち着いたところで、ネオは北へ向かった。
「一人で行くの?」
リリィが問う。
「三人で行く。ただ――集落のことはセナに頼む」
「分かった」
セナは頷いた。「……気をつけてくれ」
「当然だ」
北の地形は記憶にあった。かつてこのゲームの開発中、高レベルプレイヤー向けに作られた「廃都エリア」――今は荒廃し、アクセスが困難になっているはずだ。
歩くこと三時間。空が薄暮のような色になってきた。オレンジがかった灰色。完全な夜ではない。
「……見えてきたな」
地平線の先に、廃都の影。かつては石造りの壮大な都市だったはずが、今は半分が崩れ、半分が歪んでいる。形の残っている建物も、傾いたり、表面にヒビが入ったりしている。
「ゲームのイベントエリアとしては、最大規模のやつだ」
「なんかいる?」
「……いるな。強いやつが」
ネオはログを確認した。ボスの存在を示す反応が、都市の中心から出ている。
「次のマスター魔法が――あそこにあるな」
「分かるの?」
「なんとなく。引っ張られてる感じがする」
カイが言う。「俺も感じる。なんか、引力みたいなの」
「《ドロー》が反応してる。向こうの魔法に、こちらの魔法が引き寄せられてる――そういうことだな」
三人は廃都の門をくぐった。崩れかけた門柱の下を、静かに通り抜ける。




