第三十一話 賢者の塔
集落から東へ一時間ほど歩いたところに、塔があった。
「……あれ、マップにないな」
ネオは足を止めた。地形は覚えている。開発当初から、この座標に建造物の設定はなかった。
「後から追加されたの?」
リリィが首を傾げる。
「違う。作られた、じゃなくて――出てきた、感じがする。世界が変わる中で、浮かび上がってきた」
カイが少し先へ進む。「……何かいるな、上の方に」
「見えるか?」
「なんとなく。雰囲気で」
「雰囲気で分かるのか」
「分かる」
カイはそれ以上説明しなかった。ネオはそれを聞いて――まあいいか、と思った。カイがそう言うなら、そういうことだ。
塔の入口は鉄の扉だった。鍵はかかっていない。開けると――螺旋階段が上に続いていた。石の段が、上へ上へと続いている。
「登るか」
「当然」
三人は階段を上がった。一段ごとに空気が変わる。上へ行くほど――ノイズが増える。電波が乱れるような、空間そのものが歪むような、微かな感覚。
「……なんだここ」
頂上に出た。
そこは――広い円形の空間だった。石の床。弧を描く壁。そして中央に、人影。
人型のNPC。だが――動かない。まるで石のように、立ったまま固まっている。
「……彫像か?」
リリィが近づこうとして――止まった。「これ、NPCだ。でも動かない」
「応答もない。通常のモードじゃないな」
ネオはNPCに近づいた。触れようとすると――空気が変わった。
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【Warning】
このエリアには、特殊な封印が施されています
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「……来たか」
ネオが呟いた瞬間――塔の壁が光を帯び、それは現れた。




