第三十話 朝と、それから
灰色の空が、わずかに白み始めた。
ネオは気づかなかった。眠っていたからだ。
「……ネオ」
リリィの声。
「……なんだ」
「空」
ネオは目を開けた。寝起きの、焦点の定まらない視界。灰色だった空が――薄く、かすかに、オレンジ色に滲んでいた。空の端から、色が漏れ出してくるような、そういう変化だった。
「……朝か」
完全ではない。まだ薄暗い。でも――止まっていた時間が、動き始めていた。
「《クリエイト》の影響か?」
ネオは呟いた。昨夜、集落に食料を作り続けた。《クリエイト》で世界に「定義」を与え続けた。それが――サイクルを少しだけ刺激したのかもしれない。
「違うと思う」
リリィが答える。「権限が、増えたんじゃない?マスター魔法が集まるほど、世界が戻ってきてる」
ネオは自分の手のひらを見た。確かに――何かが少しだけ増えている感覚がある。満ちてきた、という感覚。
「……そうかもな」
カイが起き上がった。眠そうな顔で、それでも目が空に向いている。「赤く輝く宝石みたいだな」
「珍しく詩的なこと言うな」
「たまには言う」
ラフがのそりと起き上がった。眠そうな目で空を仰ぐ。小さな手で目をこすっている。「……あかい」
「朝だよ」
ネオは答えた。「まだ完全じゃないが――戻りつつある」
視界の端に、ログが浮かぶ。
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「おはよう」
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「……おはよう」
今日は、素直に返した。
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「珍しい」
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「朝だからな」
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「……ふふ」
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その声は――いつもより少しだけ、柔らかかった。




