第二章 エピローグ
その夜――集落に、久しぶりの賑わいが戻った。
食料があって、仲間がいて、焚き火がある。それだけで、人は――プレイヤーもNPCも――少し、息ができる。
ラフが、ネオの隣で眠っていた。
ネオはそれを見て、起こすこともできず――仕方なく、そのままでいた。
「猫だからな」
小さく呟く。「暖かいんだろう」
カイが隣に座る。「……ネオ」
「何だ」
「俺、やっぱり――プレイヤーじゃないかもしれない」
ネオは顔を向けなかった。「そうかもしれないな」
「気にならないの?」
「気になる。でも――今は、一緒に動いてる。それで十分だ」
「……いつか、知りたいと思う?」
「なるようになる」
カイは少しだけ、笑った。「適当だな」
「そうでもない。お前のことは、ちゃんと見てる」
その言葉に、カイは少し驚いたように――黙った。
リリィが反対側から来て、座る。「……不正アクセス、またされているみたい」
「どこで分かった」
「ログに、ノイズが混じり始めてる。外部からの干渉が、また増えてきてる」
「そうか」
「次は――どこへ行くの?」
ネオは空を見上げた。灰色の空。朝の来ない世界。
「もう少し先に――マスター魔法の残りがある。それを取り戻す」
「それが全部揃ったら?」
「世界を、ちゃんと修復する。朝を、来させる」
「……それだけ?」
ネオは少しだけ考えた。
「あと――一つ、会いに行きたい場所がある」
「どこ?」
「ログの声の、場所へ」
リリィは静かに言った。「……分かってるの?」
「なんとなく、だ。《ジャンプ》があれば――存在が分かれば、飛べる」
「存在、分かるの?」
「……だいたい、な」
そのとき。ログが一行、流れた。
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「……楽しみにしてる」
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ネオはそれを見て――小さく、笑った。
「俺もだ」
焚き火が揺れる。灰色の空が続く。ラフが寝息を立てる。
三人と、無数の声と――壊れた世界で、夜は続く。
でも――朝は、もうすぐ来る。
そう、信じることにした。
*―― 第二章・完 ――*




