第二十四話 ステータスを変えるということ
奥の部屋に――鏡があった。
大きな、縦長の鏡。枠は金属。表面は光を反射しているが――映っているのは、普通の反射ではなかった。
ネオが近づくと、鏡の中に――ステータスが表示された。
HP、MP、攻撃力、防御力、速度――全ての数値が、整然と並んでいる。
「……自分のステータス?」
「ここは、ステータスを設定する部屋だったんじゃないか」
リリィが言う。「開発段階のテストで――キャラクターのパラメータを直接いじれる場所」
「デバッグ用か」
「そう。本来はプレイヤーがアクセスできる場所じゃない」
ネオは鏡の前に立った。自分のステータスが、目の前に浮かんでいる。
「触れると、変えられるかもしれない」
「試すの?」
「試さないと分からない」
ネオは一つの数値に手を伸ばした。防御力の項目。触れると――数値が動いた。
「……動く」
「どこまで変えられるの?」
「分からない。やってみる」
防御力を、少し上げてみる。感覚が変わる。身体が、少しだけ重くなる気がした。
意図が必要――さっきの設計メモに、そう書いてあった。
何を意図するか。ただ数値を上げるのではなく――何のために変えるか。
今は――移動が重要だ。防御に寄りすぎると、機動性が落ちる。
防御力を戻す。今度は速度を見る。考えながら、少しずつ調整する。
そのとき。鏡が――揺れた。
「……え?」
リリィが声を上げる。鏡の表面が波打ち、ネオの反射が歪む。
「何が起きてる!?」
「鏡が、反応してる――」
ネオは鏡を見つめた。歪んだ反射の中に――別の何かが見えた。影のような形。輪郭が定まらない。
視界にログが走る。
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「気をつけて。その鏡は――外部からアクセスされてる」
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「外部から!?」
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「うん。ここが開発施設だから――外部から、直接干渉できる」
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ネオは即座に鏡から離れた。
「全員、後ろに下がれ!」
鏡が――割れた。光が弾ける。その中から、何かが出てくる。




