第二十三話 記録の部屋
施設の内部は――図書館のようだった。
棚が並び、棚には光の板が収まっている。ログの記録か、設計のデータか。その量は膨大で、棚が天井まで続いていた。
「……すごい量だ」
カイが圧倒されたように呟く。
「開発ログだろうな。テストデータ、バランス調整の記録――」
ネオは一枚を取り出す。薄い光の板。触れると、文字が浮かぶ。
*【フィールドモンスター強度テスト:第三次】*
*【ドロップ率調整:プレイヤーフィードバックを反映】*
「普通の開発記録だな」
別の棚へ。別の板。
*【GM権限設計について:メモ】*
「……これは」
ネオは読み込む。
*【GMは「管理者」であると同時に「世界の一部」であるべきだ。権限を持つが、プレイヤーと同じ目線に立てる存在。完全な神ではなく、完全な参加者でもない――その中間に位置する存在として設計する】*
「……俺が猫になったのも、設計の一部か」
呟く。
リリィが覗き込む。「何が書いてある?」
「GMというものの、設計思想だ」
「どんな?」
「管理者でありながら、プレイヤーと同じ目線に立つ存在――だそうだ」
「……なんか、ネオっぽい」
「そうか?」
「うん。実際そうなってるじゃない。猫だし」
ネオはその言葉を、しばらく考えた。「……まあ、そうかもな」
カイが別の棚から板を引き出す。「こっちは違う種類みたいだ。――ステータス設計について、とある」
「見せろ」
ネオは受け取る。
*【ステータスは「現在の状態」であり、「固定された本質」ではない。プレイヤーは成長し、変化する。GMもまた――状況に応じて変化できるべきだ。ただし変化には「意図」が必要である】*
「意図が必要――」
ネオは繰り返す。
そのとき。奥の部屋から、光が漏れた。
「……何かある」
カイが前に出る。
「待て。俺が行く」
ネオは先に進んだ。




