第二十二話 研究施設の入口
集落から東へ三時間。
地図にない場所に、それはあった。
情報をくれたのは、集落のプレイヤーの一人――生産職のキタという男だった。「開発初期のエリアらしき場所がある。昔一度だけ迷い込んだことがあって――その後は入れなかったんだが、あの黒猫なら入れるかもしれない」
「なぜ俺が入れると?」
「なんとなく」
根拠のない直感だったが――ネオはそれを信じることにした。
施設は――かなり古かった。石造りではなく、金属とコンクリートに近い素材で作られている。ゲームの世界観からは浮いている。間違いなく――開発段階のテストエリアだ。
「《パスウォール》で入れるか?」
リリィが聞く。
「試す」
ネオは扉に向かった。金属製の重い扉。鍵穴がない。ノブもない。
《パスウォール》で通り抜けようとした。
「……入れない」
「え?」
「この扉は、壁じゃなくて――何か別のものだ。物理的に存在しているんじゃなくて、設定として存在してる」
「設定として?」
「ここがテストエリアなら――この扉は、開発者が意図して閉じたものかもしれない。それは俺の権限でも、今の段階では――」
ログが、割り込んだ。
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「その扉、識別コードがある」
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「識別コード?」
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「うん。特定のIDで開く。試したことある?」
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「俺のIDは、GM権限が剥奪されてる。使っても――」
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「全部が剥奪されてるわけじゃないでしょ。欠片は戻ってきてる」
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ネオは少しだけ考えた。確かに――マスター魔法を取り戻すたびに、権限の一部は戻っている。
「試してみる価値はあるか」
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「私には分からない。でも――面白そうだよ」
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ネオは苦笑した。「面白いかどうかで判断するなよ」
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「じゃあ何で判断するの?」
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「やれるかどうかだ」
ネオは扉の前に立った。GM権限――現在の認証レベルで、何が通るか。
「開け」
カチリ。
扉が、重い音を立てて開いた。
「……やれたな」
リリィが小さく笑う。「不思議と信頼できる、その言い方」




