第二十話 届かない距離
集落に一晩、世話になることにした。
焚き火を囲んで、プレイヤーたちとの情報交換。市街地の様子、モンスターの動向、ゲーム内の変化――様々な話が出た。しかし夜中に――問題が起きた。
「猫!起きろ!」
セナが叫ぶ。ネオは即座に跳ね起きた。
「何だ」
「子供が――あのNPCの子供が、森の奥に入っていった!」
集落には、NPCが数体混じっていた。ヴェルナルと同じように――壊れた世界で消えられなかったNPCたちだ。その中に、子供のNPCがいた。
「なぜ森に?」
「分からない!気づいたら消えていた!」
ネオは立ち上がった。「方向は」
「北東。でも――暗くて、どこまで行ったか」
「探してみよう」
「俺も行く」
カイが立ち上がる。
「俺一人で十分だ」
「二人の方が早い。それに――」
カイは真顔で言った。「子供のNPCが心配だ」
ネオはしばらくカイを見た。所詮NPCだ。放っておいても直接の問題はない。だがカイは本気でそのNPCを心配しているように見えた。
「……付いてこい」
二人は森へ入った。《シフト》で木の上に出て、視界を確保する。闇の中――かすかに、小さな光が見えた。
「あそこだ」
「遠い。三キロメートルくらいか?」
「《シフト》の射程を超えてる」
カイが言う。「走るしかないか?」
「……あるいは」
ネオは手を伸ばした。《ドロー》を使う。NPCを引き寄せる――しかし。
遠すぎる。《ドロー》も射程がある。届かない。
距離が、壁になっている。
そのとき。視界にログ。
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「届かないんだね、やっぱり」
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「……ああ。《シフト》も《ドロー》も、射程がある」
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「じゃあ――逆に行けばいいんじゃない?」
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「逆?」
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「自分が行くんじゃなくて。相手の場所に――飛ぶ」
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ネオの思考が、止まった。
「……飛ぶ、か」
《シフト》は座標へ飛ぶ。座標が見えなければ使えない。
では――「人」へ飛ぶとしたら?




