第十九話 集落と、そこにいる人たち
煙の出所は――小さな集落だった。
崩れた木材と石で作った、急ごしらえの建物が数棟。土と枯れ葉が積み上げられ、かろうじて雨を防げる程度の屋根がある。その周囲に、プレイヤーたちが集まっていた。
「……十二、三人か」
ネオが数える。装備はバラバラだ。前衛職、後衛職、生産職――様々なジョブのプレイヤーが、入り混じっている。顔には疲労と、それでも消えない警戒の色がある。
「猫!?」
最初に声を上げたのは、若い男のプレイヤーだった。「でかい猫がいる!?」
「猫じゃない。元GMだ」
「嘘つけ!」
「まあ無理だな」
ざわめきが広がる。ネオたちを囲む人の輪ができる。全員が、戸惑いと警戒と――微かな安堵の混ざった顔をしている。助けを求めたいのに、信じていいか分からない。そういう顔だ。
「……本当にGMなのか?」
一人が前に出た。女性のプレイヤー。前衛装備を着ているが、かなりくたびれている。
「元GMだ。今は権限の一部しかない」
「それでも――来てくれたのか?」
「通りかかった、が正確だ」
少しだけ、空気が揺れた。それでもいい、という気配が広がる。
「状況を教えてくれ」
ネオが言うと、女性――自分をセナと名乗った――が話し始めた。
「……ログアウトできない。ここへ来てから、ずっと。市街地が壊れてからこっちに逃げてきたけど――もう丸一日、外に出られていない」
「食料は?」
このゲームでは、食料の補給が不可欠だ。空腹も感じるし、身体の動きも鈍くなる。長引けば精神にも影響が出る。
「ゲーム内のアイテムがまだある。でも――減っていく一方で、補充できない」
「モンスターに襲われたことは?」
「ある。二回。でも、ここは比較的安全だ。何かが守ってくれてる気もする」
「守ってる?」
「うまく説明できないけど――こっちにモンスターが近づくと、何かに弾かれるみたいに去っていく」
ネオはリリィと目を合わせた。リリィが首を横に振る――知らない、ということだ。
「分かった。お前たちの状況は把握した」
「……何かできることがあるか?」
「ある」
ネオは即答した。「時間はかかる。でも――やれることはやる」
セナは、少しだけ目を細めた。「……信じていいのか、猫」
「元GMだ。信じるかどうかはお前が決めろ」
「……分かった」
短い答えだった。しかし、それで十分だった。




