第十八話 森の外縁
ルーメン市街を出て、森へ向かった。
情報源は――ヴェルナルだった。「市街の外、森の中に――人が集まっているという話を聞きました。壁が閉じる前、ここを逃げ出したプレイヤーたちが、向こうで生き延びていると」
「プレイヤーが生き残っていた、か」
「ここより安全だったのかもしれません。外部のアクセスが届きにくい――」
「だから狙われなかった、ということか」
ネオは考える。市街地は拠点として目立つ。森の奥は、おそらく優先順位が低い。
「行ってみる価値はある」
三人で森へ入る。ヴェルナルは来なかった――「街を、見ていなければならないので」と言った。その言葉は、以前のNPCには存在しなかった種類の言葉だった。
森の中は、市街地とは別の意味でおかしかった。
「……木が、多い」
カイが言う。
「それは普通だろ」
「そうじゃなくて――多すぎる。マップのデータが圧縮されてる感じ。本来こんなに密じゃないはず」
「よく分かるな」
「直感だけど」
ネオは周囲を観察する。確かに――木と木の間が狭い。光が届かない。方向が分かりにくい。迷わせるように設計されたかのような密度だ。
「《シフト》で上に出られるか?」
「木の枝ならいける」
ネオは一気に跳ぶ。《シフト》で木の頂上へ。視界が一気に開ける。
「……見えた」
森の奥。かすかに煙が上がっている。焚き火か、それに近い何か。
「煙がある。南南東、五キロメートルくらいか」
「遠いな」
カイが言う。「《シフト》で一気に行けない?」
「届かない。《シフト》の射程は目視範囲内だ」
「じゃあ歩くしかないか」
「そうなる」
ネオは木から降りる。三人は南南東へ向かった。
視界の端に、ログ。
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「そっか。届かないんだ」
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ネオは歩きながら答える。「お前には、届くのか?」
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「私はどこにでもいるから。距離、関係ない」
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「羨ましいな」
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「そう?でも――どこにでもいるって、どこにもいないのと同じかもしれない」
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ネオは少しだけ足を止めた。その言葉が、妙に引っかかった。どこにでもいるのに、どこにもいない。
だが――深く考える前に、前を向いた。
「行くぞ」




