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マスターネオはネコまない ―黒猫GMのマスター魔法奪還ログ―  作者: Master NEO
第二章 マスターネオの奮闘

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第十六話 ヴェルナルの記憶

 市場を抜けると、街の中心部に出た。


 かつての広場。時計塔が、傾いたまま立っている。その下に、ベンチが残っていた。割れているが、かろうじて座れる。


「少し休もう」


 リリィが提案する。


「異議なし」


 カイがすぐに賛同する。ネオも黙って座る。


 ヴェルナルが、少し離れた場所に立っている。この老人のNPCは、どこへ行くときも少し距離を置いていた。遠慮しているのか、それとも別の理由があるのか。


「ヴェルナル」


 ネオが呼ぶ。


「はい」


「お前は、どのくらいここにいる?」


 NPCは少しだけ間を置いた。「……ゲームのサービスが始まった当初からです」


「初期NPCか」


「そう聞いております」


「記憶は」


「あります。この街がまだ機能していたころの記憶が。プレイヤーが毎日来ていた。騒がしかった。それが――」


 言葉が途切れる。


「消えた」


「はい」


 ネオはその顔を見た。NPCが感情を持つはずはない。しかし――この老人の顔には、何かが宿っていた。設定にはなかったはずの何かが。


「壊れたことで、変わった、か」


「先ほど、そうおっしゃっていましたね」


「ああ。世界が壊れたことで、NPCも変わり始めている。それはバグかもしれないし、設計師の想定通りかもしれない」


「設計師の方は――どんな方でしたか」


 ネオは少しだけ考えた。「ああ、とても楽しい人だったよ」


「……会ってみたかった」


 その言葉に、ネオは少し驚いた。


「NPCが、設計師に会いたいと思うか」


「はい」


 ヴェルナルは静かに言った。「この街を、作ってくださった方ですから」


 沈黙。


 そのとき。ログが一行、浮かんだ。


```

「……そうだね」

```


 いつもより、短い。そして、どこか柔らかかった。


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