第十四話 旧市場の混乱
壁の向こうは――予想以上に荒れていた。
建物の崩壊が激しく、道が塞がれている場所が多い。まるで誰かが意図的に、入れないようにしたかのような散らかり方だ。自然な崩壊ではない。何かが通った跡がある。
「……これ、自然に崩れたわけじゃないな」
ネオが立ち止まる。
「どういうこと?」
「崩れ方のパターンが一定だ。ランダムな崩壊じゃない――何かが繰り返し同じ経路を通った跡がある」
カイが周囲を見回す。「何かって?」
「でかいやつ」
その言葉と同時に――遠くから、地響きが来た。
「……来た」
ネオが低くなる。四肢に力が入る。
崩れた市場の奥から現れたのは――巨大な、石造りのゴーレムだった。しかし以前に倒したものとは違う。このゴーレムは二体。しかも――
「連携してる」
リリィが即座に分析する。「一方が攻撃して、もう一方が退路を塞ぐ動きだ。ただのモンスターじゃない」
「プログラムか、それとも――」
「誰かが操ってる」
カイが言い切る。
ネオは素早く状況を読んだ。逃げ場がない。正面に二体。背後は瓦礫で塞がれている。
「リリィ、後ろに下がれ。回復に徹してくれ」
「分かった」
「カイ、右のゴーレムを引きつけろ。攻撃しなくていい、ヘイトを集めるだけでいい」
「了解。何で引きつければいい?」
「何でもいい。声でも、石でも」
「……シンプルだな」
「シンプルな方が確実だ」
ネオは左のゴーレムへ向かった。《シフト》で距離を詰める。《マスターキー》を構える。だが――
鍵穴がない。
以前に倒したゴーレムとは作りが根本的に違う。関節に鍵穴がない。全身が、均質な石で作られている。どこにも「閉じているロック」が見当たらない。
「(厄介だな)」
ゴーレムが腕を振る。ネオは《シフト》で回避する。だが――回避した先に、もう一方のゴーレムが来ていた。
「っ!」
挟み撃ち。連携で動いている。
「カイ!」
「引きつけてる!でもこっちも来てる!」
ネオは歯を食いしばった。このままでは――じり貧だ。
そのとき。ログが一行。
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「ねえ。引っ張れないの?」
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「……は?」
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「ゴーレムを。こっちに引っ張ってきたら、ぶつかるじゃん」
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ネオの思考が、一瞬止まった。
「……なるほど」
ぶつける。二体を、互いにぶつける。
引っ張る――どうやって。




