表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスターネオはネコまない ―黒猫GMのマスター魔法奪還ログ―  作者: Master NEO
第二章 マスターネオの奮闘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/75

第十三話 《パスウォール》

 三十分、考えた。


 ネオとしては珍しく長い時間だった。その間、リリィは壁の周囲をぐるりと探索し、カイは石段に腰掛けてネオを眺め、ヴェルナルは静かに立ったまま待っていた。


「分かったか?」


 リリィが戻ってくる。


「だいたい」


「だいたい、か」


「試してみないと確信は持てない」


 ネオは壁の前に立つ。今度は鍵を取り出さない。代わりに――ゆっくりと、自分の手のひらを見た。


「この壁は、プレイヤーとしての俺を遮ってる」


「そうじゃないの?」


「GM権限の一部は、まだ戻ってる。《マスターキー》で取り戻した分だけ。俺は今、プレイヤーでもあってGMでもある。中途半端に、両方だ」


「……どういう意味?」


「壁はプレイヤーを遮る。でもGMは――この壁の管理者側だ。管理者として通れば、壁は俺を壁として認識しないかもしれない」


「なるほど……でも、どうやって?」


「自分が何者かを、決める」


 カイが首を傾げる。「決める?」


「そう。権限の問題じゃなくて――認識の問題だ。俺がGMとして壁に向かえば、壁は俺を通すかもしれない」


 リリィは少しだけ眉をひそめた。「……かもしれない、か」


「試してみる」


 ネオは深く息を吸った。


 プレイヤーとして、ではなく。この世界の管理者として。かつてそうだったように――今もそうであるように。権限ではなく、在り方として。


 一歩、踏み出す。


 抵抗がある。壁の感触が、手のひらに返ってくる。しかし――今度は、前より薄い。


 もう一歩。


 ずぶり、と。水の中に足を踏み入れるような感覚があった。固体の抵抗が、液体の抵抗に変わる。


 そして――抜けた。


「……!」


 リリィが息を呑む。ネオは壁の向こう側に立っていた。


「マジか」


 カイが呟く。


 視界に、ログが走る。


```

【Master Authority Fragment Detected】

【マスター魔法:《パスウォール》取得】

あらゆる壁を通り抜ける

```


「……よし」


 ネオは振り返る。壁の向こうから、リリィたちの顔が見える。ガラス越しのように、少しだけ歪んで見える。


「来れるか?」


「……私たちも通れるの?」


「今は俺だけだろうな。でも――」


 ネオは壁に手をかける。GM側から触れると――感触が違う。管理者として接触できる。


「開け」


 カチリ。今度は鳴った。


 壁が、ゆっくりと薄れていく。やがて――消えた。跡形もなく。


「……なるほどね」


 リリィが、静かに言う。「内側から開けることができた」


「GM側からなら、管理できる。外からじゃ無理でも」


 カイが笑う。「面白い発想だな」


「GMの仕事はそういうもんだ。外からじゃなくて、中から管理する」


 ヴェルナルが、深く頭を下げた。「……街の奥へ、進めます。ありがとうございます」


 ネオはそれを軽く受け流して、壁の跡を越えた。


 街の奥へ。まだ誰も踏み込んでいない場所へ。


 視界の端で、ログが一つ。


```

「上手い。でも――もっと先がある」

```


 ネオはそれを読んで、小さく笑った。「知ってる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ