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そうだ、オリュンポス行こう  作者: くらうでぃーれん
4.歌と妹と予言の神
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4-4

 なんてことだ。アポロン様ってば中身までめちゃくちゃイケメソ神じゃないか。


 僕はハッとしてソフィを見ると、僕の心情に即座に気付いてくれたらしく、僕を見つめてグッと親指を立てていた。うん、やっぱりソフィは世界一可愛い。


「で、そんなことをしているくらい暇なんでしょう。ちょっと私たちに手を貸しなさい」

「いやー、いつもながらアテナは強引だな」

「あなたに遠慮は不要だと思っているだけよ」

「はっはっは、信用してもらえて嬉しいね。ま、とりあえず話を聞かせてもらおうか」


 快活に笑って話を聞き始めてくれたアポロン様だったが、話が進むにつれその表情に陰りが生まれてゆく。


「‥‥うーん、アテナの頼みなら聞いてあげたいところだけど、俺もそう簡単に人の子に手を貸すわけにはいかなくてね。悪いけど、この子だけを贔屓するわけにはいかないんだ」


 そして話を聞き終えたアポロン様は、肩をすくめて申し訳なさそうに首を振った。

 断られてしまえば、僕らにはどうすることもできない。わずかな期待を込めてアテナ様に視線を送ると、アテナ様は瞳を閉じて小さく息を吐きだした。


「そう、それなら仕方がないわ。2人とも、残念だったわね」


 しかしアテナ様は思いの外あっさりと引き下がってしまった。残念ではあるけれど、きっとアテナ様にも事情があるのだろう。

 僕はソフィと顔を見合せ、アテナ様に追随するように諦観の息を吐いた。


「いえ、こうしてお会いしていただけただけでも十分にありがたいことです。気を遣わせてしまって申し訳ありません」


 2人でぺこりと頭を下げて、僕はソフィの頭をそっと撫でる。


「安心して、ソフィ。いざとなったら、ソフィのことは僕がなんとしてでも守ってみせるから」


 ソフィはにっこりと世界一可愛い笑みを浮かべて、僕の手を取った。


「うん、ありがとうお兄ちゃん。わたしもお兄ちゃんのためなら「ちょっと待って」


 がっし、とアポロン様がソフィの肩を掴んだ。その瞳は先程までとうってかわって、異常なまでの真剣味を帯びていた。


「キミは拾い子なんだよね。なぜ、彼のことを兄と呼ぶんだい」


 その真剣な態度に似つかわしくなく、質問の主旨は不明瞭だ。ソフィは戸惑いながらも、どうにかその質問に回答する。


「え、えっと‥‥赤ちゃんの頃からずっと一緒だったので、まるでお兄ちゃんみたいだから、です。あと、わたしがお兄ちゃんって呼んでるのが可愛いって、お兄ちゃんが言ってくれたから‥‥」


 それを聞いて、アポロン様の眼光がギラリと光って僕を捉えた。


「人の子よ、汝に問う。汝にとって、此の少女――妹とは如何なる存在か」


 真正面に立つアポロン様は、突如神の威厳全開で僕を見下ろした。あまりの超展開に混乱するが、どうにか気持ちを落ち着かせてその問いに答えた。


「僕は、ソフィが側にいてくれるだけで幸せです。ソフィの声を聴くだけで嬉しくなります。ソフィの見るだけで心が穏やかになります。ソフィの肌に触れるだけで、嫌なことは全て忘れることが出来ます。だから、僕にとってソフィは、僕の人生の幸福そのものです。妹が、ソフィが居てくれるからこそ、僕の人生は幸せだと断言することが出来ています」


 どんな状況であれ、それがソフィに関する問いであるならば迷うことはない。

 僕ははっきりと自信を持って、僕にとって妹ソフィがどれほど大切であるかを説いた。それが偽らざる真実。僕にとってソフィは、本当にそれだけ大切なものなのだから。


 アポロン様はぎゅっと唇を引き結んで、僕の瞳の奥を覗き込み――


「――合格!合格だ! 人の子、キミは最ッ高だな! 気に入ったッ!」


 突如表情を崩壊させて、バッシバッシと両手で僕の肩を叩きまくった。なんだなんだと思う間もなく、ガクガクと肩を掴んで揺さぶられる。


「キミはよく分かってるな。そう、妹とは人生だ、世界だ! 妹がいるから、兄がいられる。アルテミスがいてくれるから、俺は兄ちゃんでいることができるんだ。なにより、ウチのアルテミスは世界一可愛いからな!」


 ソフィの方が可愛いと思います、という言葉が反射的に出かかったが、どうにかそれを飲み込んだ。それが疑いようのない事実とはいえ、今アポロン様と争うのは得策ではない。


 それにアポロン様からすれば、妹補正という強大なフィルターによって実際よりもアルテミス様が輝いて見えている可能性も非常に高い。妹というのはそれほどまでに絶対的な愛おしさを擁しているものなのだ。僕には分かる。

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