イベントの影
AIオンライン バージョン1.1
・メンテナンスは無事終了しました。ご協力いただいた皆様に対してHPポーションを5個贈らせていただきます。アイテムはログイン時のヘルプ画面からお受け取りください。
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メンテナンスが終わり、AIオンラインのサービスが再開すると同時にプレイヤー達は一斉にログインし、こぞって街を回るようになった。
それはイベント開始から10分後、攻略掲示板に書かれた一言が原因だった。
『俺は今30レベルなんだけどイベントで1ヶ所回っただけで3レベルも上がったんだぜ!?神イベントきたぞ!!』
その一言は全プレイヤーを驚かせた。AIオンラインでは10レベルごとに必要経験値が跳ね上がる仕組みとなっていて、30レベルにもなるとまる1日戦い続けてなんとか3レベル上がるかどうかというほど。
このイベントを運営が経験値獲得イベントといっていた意味をよく理解したプレイヤー達は血眼になって各街のイベントになっているポイントを探していたのである。
「エルフの森のイベントポイントは中央のでっかい木で分かりやすかったけどこれから行く魔族の国はどこがポイントだろうなぁ。攻略サイトの更新も遅いしデマ流してるアホもいるし」
「さぁな。魔族のとこは魔王のいる城があるらしいからそこかもな。分かりにくいとこにはないだろ?」
今まさにイベントをこなしている騎士が二人、魔族の国を目指して荒れた森の中を馬に跨がり走っていた時のことであった。
「おいおい、魔族の国ってこの森からしかいけないのか?Pvエリアじゃんか」
「地図を見る限りそうみたいだな。まぁどこかのバカが来てもレベル40の騎士二人だし相手にならんだろうさ」
「それもそうだなぁ!」
二人の騎士は森を半分ほど進んだあたりで、正面に大きな崖が道を塞ぐように壁となっていた。
そしてその崖の手前に…プレイヤーであろう黒い外套を装備した名前と職業欄が非公開になっているプレイヤーがいた。
「ここからは先は行き止まりだよ」
おそらく声から男だろう。その男がこちらに声をかけてきた。
「あぁ、迂回するのか。ありがとよ、この森は初めてでね」
「…そうか、この森は初めてか」
男は外套の内側から片手武器である直剣を両手で2本取り出し構えた。
「マジかよ…!おい、あいつやる気みたいだぜ!!」
「見たことない職業だけど2対1なら騎士に勝てるわけないだろ!」
騎士達は馬から降りて片方は両手剣。もう1人は片手剣に大きな盾を構え、二人同時に男に突っ込んだ。
両手剣の男が剣を上から振り下ろすが外套の男はひらりと横にずれることでそれを紙一重で避けると逆に直剣を叩き込んだ。
そのまま連続で直剣を振り抜こうとするそこへ盾の男が割り込み盾を構えた。
「盾が大きくて邪魔だな」
外套の男の呟きに応えるように盾の騎士が剣を横に凪ぎ払うと外套の男はしゃがみ込むように姿勢を低くしそれを回避。そして先ほどと同様に盾の男の足元を斬りつけた。
騎士達は外套の男の俊敏な動きと正確な攻撃に自分達のHPゲージを思わず確認するがほとんど減っていないことを確認し、安堵の息をついた。
「速いけど攻撃力はないぞ!いける!」
「喧嘩吹っ掛けてきた割りには対して強くねぇな!」
騎士達は自分達の体力をHPポーションで回復しながら目の前の外套男をごり押しで突破できると踏み、回避を捨てて突撃する作戦を実行した。
「《スタンバッシュ》」
スキルを発動させ、大きな盾がスキルの効果で直剣を弾き飛ばしながら男を吹っ飛ばした。
『スタンバッシュの効果で対象を一定時間スタン状態にします』
「いまだ!いけぇ!」
相方である両手剣の騎士に声をかけるとその声を受け、両手剣を振り上げ男に突っ込んだ。
「おっしゃ!《剛断》」
騎士スキルでも高倍率な攻撃力、範囲を持ったスキルが全武器でも最高クラスの攻撃力を持つ両手剣武器によって放たれた。
両手剣がスタンし動けない男に突き刺さると二人は勝利を確信した。
「流石に今のは痛いな…」
「「は?」」
スタン中で間違いなく両手剣は男に当たったはずだ。だが目の前の男はまだ立っていてスタンが解けたのか肩をグルグルと回し、感触を確かめるように直剣を素振りしていた。
「スタンバッシュって盾でも使えるのな、今までのやつは武器でしか使ってこなかったから一瞬反応できなかったぞ」
「おい、なんでお前はまだ倒れてない!?お前のその外套は軽装装備だろ!なんで剛断を耐えられるんだ!?」
「なんでって…ヘルプ出てないのか?俺の攻撃もらった時に」
騎士達は急いでヘルプの画面を見た。そこには攻撃をくらった瞬間HPゲージを見ていて見逃した文章がそこには確かにあった。
『《アンチアタックポイズンⅢ》の効果で攻撃力が30%低下します』
『《毒付与》の効果で毒の効果と持続時間が30%上昇します』
「そういうことだから。あとあんたらさっき2対1って言ったな?」
男はゆっくりと崖の上を指差した。
そこには――――――
「――――2対30だよ」
横一列に並んだプレイヤーが武器を構え、こちらを見ていた。
その手に持った杖や弓等様々な武器はスキルを発動させる瞬間で魔方陣が待機しており、あれだけの量のスキルを受ければいくら防御力の高い騎士でも一瞬でHPバーを削り取られることは容易に想像できた。
「おい、ふざけんな!汚いぞお前!!」
「やってられっか!逃げ…おい、なんで足が動かねぇんだ!!」
『《影縫い》の効果で一定時間移動することができません』
馬を呼んでそこから立ち去ろうとする騎士達の視界に無慈悲な警告が鳴り響いた。
足元を見るといつのまにそこにあったのか黒い影でできた短剣が自分達の影に突き刺さっている。
「プレイヤーキルにもランキングがあってね?俺らはできるだけキルを稼いで上を目指したいんだ。倒した後もこっちの復活アイテムが尽きるまで何度も何度も復活させて殺すから、しばらくよろしくな?」
その言葉を合図にするように騎士二人に次々とスキルの嵐が降り注いだのだった。




