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AIが運営するVRMMO  作者: ケイ
11/19

弓使いのギルドマスター

AIオンライン バージョン1.0

・薬師の職業スキル《ポーション作成》使用時の熟練度の上昇値を増加させました。


―――――――――――――――――――――――――――――



『タイムアタックダンジョンクリアおめでとうございます!ただ今のタイムは9分40秒です』


タイムアタックダンジョン。それは二人一組で行われるダンジョン攻略までをいかに最速で行うことができるかを競い合う場である。


そして今、二人の歴戦のプレイヤーがダンジョンから光と共に現れた。

周囲のプレイヤーはダンジョンから聞こえてくる次の声に耳を傾けた。


『―――ただいまの記録は2位にランクインしました。おめでとうございます。1位の記録はAI01様 騎士とAI02様 騎士による8分58秒です』


周囲のプレイヤーからは落胆の声が、それもそのはず。1位のペアはこのゲームが始まった瞬間から設定されているAIによる順位なのである。


つまり今だプレイヤーはAIに勝てていないのだ。


「ちょっといい加減にしなさいよ!私がスキルで撃てば一撃なのになんで同じ敵を狙うのよ!」


「言いがかりだ!それに俺があんたと同じ敵を狙ってるんじゃなくてあんたの足が遅いから先に行ってるだけだろうが!あんたが追いつくのが遅いんだよ!」


目の前にいる相方が馬の上から威圧的に怒鳴りたててきた。

職業は騎士。レベルも32と現在このAIオンラインでもトップクラスの強さを誇るプレイヤーの1人だ。


私はひょんなことからスタート直後、エルフの森に落ち。弓使いになった…それもギルドマスターだ。


この世界でたった1人。弓使いのギルドマスターになったのだ。


最強を目指したい。誰よりも強くなってやりたいという夢を抱くには充分な理由ではないだろうか。


それこそ必死になってレベルを上げ、今ではレベル38になった。壁の反対側から矢を当てるスキルで自分よりもレベルの高いモンスターを一方的に攻撃し、倒すことでガンガンレベルを上げたのだ。まぁこのバグはすぐ修正されたのだが。


それでも現在このAIオンラインで最もレベルの高いプレイヤーは自分だという自信があった。

それでも、1位にはなれなかった。


タイムアタックダンジョンでランクインするとAIオンラインの全てのプレイヤーに向けてヘルプが表示されるのだ。


誰よりも早く私の名前を世界に轟かせたかった。


「もういい、あんたとはコンビ解散だ!実は今から騎士ギルドのギルドマスターを誘ってんだ。今度は簡単に1位を取れるだろうよ!どっかのクソ弓使いと違ってな!」


「あ…」


パーティーから騎士が抜けたと視界の端に表示されると同時に目の前の男はもう私に興味はないとばかりにもう一度ダンジョンに向かってしまう。


そして…


『タイムアタックダンジョンクリアおめでとうございます!ただ今のタイムは8分40秒です!ランキング1位にランクインしました!1位の記録はフブキ様 騎士と…』


豪華なファンファーレと共に世界に向けてAIにプレイヤーが勝利したことを告げる鐘が鳴り響いた。



――――――――――――――――――――――――――――


私はただぼーっとしながらヴァルハラの街を南に出た。とくに意味なんてない。街にいると…あいつではないが騎士が目にはいるのだ。

気晴らしにサソリ型モンスター。ポイズンスコーピオンを狩りながら進む。


10匹ほど狩ったところで弓につがえる矢がないことに気づく。間抜けなことに街で矢を補充することを忘れていたようだ。

抵抗のできなくなった私をサソリ達が取り囲んだ。

ポカポカと身体を叩かれる。


「もういいや…やられても」


私は悔しかった。AIとのタイムの差は決して縮めることのできない差ではなかった。


騎士とは馬に乗り、剣を振りかざし戦う職業だ。攻防隙がなく、攻撃スキルも充実し、馬に乗っている分機動力も高い。


タイムアタックダンジョンとは蛇のように続く長い道を道中にいるモンスターを全て倒しながら最終地点であるゴールにたどり着くまでの速さを競う。


つまり騎士はこの条件下に対しての最適解なのだ。


私の弓スキルは騎士が2、3回の攻撃で倒すモンスターを一撃で倒すことができる。

私の矢は馬がモンスターにたどり着くまでの速さよりも遥かに速くモンスターにたどり着く。


だが肝心の私の移動速度だけが致命的に足りなかった。


相方が欲しい。


私以上の速さ。それも騎士よりも速く私のゴールまでの道を開いてくれる。そんな相方が…


でもそんな…馬よりも速く動ける職業なんて…


「おいコバト!向こうで誰かサソリに殴られてないか?」


「マジか!おーい今助けてやっかんな!《影走り》」


視界の端からもの凄い速度で何かが近づいてくるのを見た。

私の目に光が宿った。目の前の光景が…彼が希望の光に見えた。

殴られていることを忘れ、目の前の彼をじっと見つめる。


一瞬に近い速度で地平線の端から私の元まで駆けるそれは―――


「今回復してやるからな!」


「あ、ちょ!コバト!それ!!」


――――――赤黒い液体の入った、髑髏マークの小瓶に見えた。



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