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AIが運営するVRMMO  作者: ケイ
10/19

始まりの街ヴァルハラ

AIオンライン バージョン1.0

・始まりの街ヴァルハラにて、接続プレイヤー数が多く、満足に移動できない現象が発生しております。対策を検討していますので今しばらくお待ちください。


――――――――――――――――――――――――――――――


さて、英雄の魂眠る街ヴァルハラだが、カッコよく説明してはいるがとどのつまり冒険中に倒れたらここに転送されてくるというだけの話だ。

つまり初心者の街ということだ。


サービス開始から数日の今、サーバーが負荷に耐えられないほどのプレイヤー接続数だったわけで…とどのつまりヴァルハラは…


「初心者用ダンジョン行きパーティー枠余ってるとこないかい?騎士を二人入れてくれー!」


「ポーションが無くなっちゃいました!誰かくださいませんか!?」


「おいだれだよ冒険者ギルドの依頼を片っ端から受けるだけ受けて放置するボケは!?」


「タイムアタックダンジョンの記録更新されたよー!今の最速タイムは弓、騎士ペアじゃなくて騎士騎士ペアだ!」


「はいはい騎士ゲー。強すぎんだろ修正しろよ!対人戦でも勝てねぇぞ!」


「新職業になれた方いらっしゃいますかー?条件教えてくださーい!」


人が多すぎてどこに何があるのか分からねぇ…。


「お、あんたのそれ新職業じゃないか?」


目の前で歩いていたリュートを持った男性に、近くのプレイヤーの目が一斉に集中した。


「あぁ、これは吟遊詩人って職業で…」


「何それ楽しそう!」


「条件は!?必要アイテムとかありました!?」


「その楽器が武器なの!?どんなスキル使えるの!?強い!?」


「すみません非公式のAIオンライン攻略サイト運営チームですが吟遊詩人についてお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


「あなたがギルドマスターなんですか!?」


「待ってください!画面が見えない!個人チャットも送ってこないで!フレンド申請もやめて!アラームがすごいから!ヘルプで前が見え…見え…」


俺は速攻で短刀を片手だけに装備し外套も外した。

そしてゲームの詳細設定で周囲への公開設定欄を開き名前と職業欄を非公開にした。


これで他人から見られても暗殺者であることは自分の口から言わないかぎりバレることはない。


目の前でゾンビに群がられ、人ごみの渦のなかに落ちていく彼の姿を見て誰かが暗殺者になって人ごみの中に埋もれるまで俺は水戸黄門プレイをしていこうと思う。

シークさんこらしめてあげなさい。なんつって。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


ぐるりと街を一周して教会や冒険者ギルドとやらに行ってみた。

シークが広めた後なのだろう(あの杖持った神父服の見た目で神官じゃないなんて言えないだろうし)

教会は職業なしの冒険者が神官になりたくて座って放置しているプレイヤーで地面が埋まっていて歩けるスペースはなかった。


教会で祈っているというより職を失い家を失って路頭に迷った大人達にしか見えない。

まぁ職業 なし だろうし間違ってないか。


冒険者ギルドは1日に何件かモンスターの討伐依頼やおつかいクエストが外に置いてある掲示板に貼られるらしい。

クリア報酬にそこそこのお金と経験値が貰えるらしいのだがクエストを受けるのはパーティー単位で早い者勝ちらしく掲示板の前には人が多すぎてどこに掲示板があるのか分からなかった。


たまにイタズラでクエストが貼られたぞ!って叫ぶやつがいて何人もビクビクっと飛び上がったのちそいつが袋叩きにあってるのは面白かった。


さて、当初の目的であったポーションの補充だが、店で買うよりも職業 薬師 のスキルで作られた物を買う方が安く手にはいるとの情報を得たので(非公式攻略掲示板万歳)薬師ギルドに出向くと何人もの薬師プレイヤーが部屋の一室で目を血走らせながらゴリゴリと薬草をすりつぶしていた。


「すみませんヤクザの事務所と間違えました」


「待って待ってお客さんッスよね!いらっしゃい!ポーションッスよね!?あるよあるよいっぱいあるッスからね!!」


薬師プレイヤー達の中から1人の女性キャラが這い出てきて掴みかからんとする勢いで肩を掴んできた。


「申し訳ないッス。薬師ってスキルの熟練度を上げるほど薬の効果が上がるのと薬の調合スキルはギルドの中でしか使えない制限があるせいで皆ここで固まって何時間も手を動かしてるからおかしくなっちゃって」


これ普通にクレームものではないだろうか?

あ、視界の端にいた男が手元のすり鉢に顔から突っ込んだ。


「幸い熟練度上げに使ったポーションは腐るほどあるんスよ!実際腐ってるのもありますし!どっちがいいッスか?」


「いや腐ってるのを売るなよ!!」


てかポーションって腐るのか。無駄に現実的なゲームだ。


「冗談ッスよ冗談!騎士なら50本くらい買っていくんスけど君は…職業非公開かー。職業に就いてない無職なら10本くらいですけどお金はあるスか?」


「どゆこと?」


「あぁ、職業によって街の外まで持っていけるポーションの量が違うスよー。どの町にもある倉庫って場所にならいくらでもアイテムを入れられるんスけどねー」


話によれば騎士はポーションの持てる限界は50本。弓使い等の遠距離攻撃職業の持てるポーションの限界は10本と量に差があるらしい。


それにしても騎士は毎回HPポーションとMPポーションを50本ずつ持っていけるが弓使いはHPポーションはまだしもMPポーションでさえ10本しか持てないのは後で修正がありそうだ。騎士が強すぎる。


ちなみに暗殺者である俺の持てるポーションの限界はアイテム欄を見て確認したところ20本のようだ。多いのか少ないのか…回復はシークに任せていたのでポーションの量に不満はなかったが今後1人で冒険する際にはポーションの量も頭にいれておかねばなるまい。




「んじゃ予備含めてHPポーション20本MPポーション10本買うよ。いくら?」


HPポーションは持てる量ギリギリで、MPポーションは正直あまり使うことはないのでこんなもんでいいだろう。影走りと影縫いのMP消費が少ないお陰でMPポーションはシークに投げつけて使うぐらいしか使い道もなかった。


たまに毒瓶を投げる素振りを見せると脱兎のごとく逃げるのでちょっと面白かった。そしてその後しばらくヒールしてくれなかった。


「HPもMPも一本100ゴールドで30本で3000ゴールドッスよー」


確かにNPCから買うよりも安い。ちなみにそちらで買うと1本120ゴールドほどかかる。


「まいどー冒険の途中で薬草取れたら売りに来てくれると助かるッス。NPCより高く買い取るんでぜひ」


そんなわけで無事に第一目的であるポーションをやっと手にいれたのであった。


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