第十三章 望月城潜入
金色の麦畑を抜けた少年一行は、崩壊を目前にした林間仙境に背を向け、さらに奥へと進んでいった。
かつて糧秣を運ぶために敷かれた平坦な大道はほどなく途切れ、代わりに現れたのは、ひび割れだらけの荒れ果てた石煉瓦の道だった。望月城に近づくにつれ、あたりに漂う死の気はいよいよ濃くなっていく。望月城から溢れ出す闇の力は狂暴な触媒のように働き、道中をさまよう死者たちを大幅に強化していた。脆弱な一階のスケルトンなどもはや影も形もなく、錆びた鎧をまとった二階、三階のワイト、腐肉を引きずる巨大な憎悪、そして物陰ですすり泣く幽霊やバンシーが徘徊している。
不死者の等級が上がったことで、身を潜めて進むのは格段に難しくなっていた。
半透明で蒼白い怨念の魂が二体、宙を影のようにつきまとい、隊列に食らいついて離れない。その背後には、よろめき歩く数十もの巨大な不死者の群れが続いていた。怨念の魂が歪んだ下顎をかっと開き、凄まじい死の絶叫を放つ。音波は目に見えるほどの衝撃波となって、四人へ襲いかかった。
「戦闘に持ち込まれた、もう振り切れない!七里靴の加速が弱まってきてる!」ウェルズは歯を食いしばり、全員に迎撃の準備を命じるしかなかった。
「この忌々しい幽霊ども、飛んでるくせにナイトメアより速いってどういうことよ!」サンドラは武器を抜きながら、思わず愚痴をこぼした。
何しろ重力に縛られず、風の抵抗も地形による摩擦も受けないのだ。幽霊の移動速度が生者を遥かに上回るのも当然だった。
「魔力を節約して、さっさと片付けるぞ。ここの不死者は倒してもきりがない!」ウェルズは低い声で注意を促した。
幸い、フリーデが加わったことで隊の戦力は大きく増していた。ここしばらくの連携を経て、遭遇戦での呼吸もすっかり合うようになっており、それぞれが自分に最も合った獲物へと向かっていった。
襲い来る攻勢に対し、魔導書を手にしたウェルズは流れるように次々と法術を放った。微かに光る維生気泡が生臭い毒の雲を遮り、負エネルギー抵抗の護盾が肉体の侵蝕を防ぎ、光耀爆発が幽霊の位置を正確に捉え、防護矢がスケルトン弓兵の不意の矢を弾き、最後に防護感官でバンシーの音波攻撃を完璧に防ぎきる。たった一人で、隊の防御の死角をすべて埋めてみせたのである。
一陣の陰風とともに、バンシーは凄絶な灰色の影と化し、腐肉を縫い合わせた巨大な憎悪の巨躯へ強引に潜り込んだ。続いて歯の浮くような鈍い音が響き、憎悪の胸郭が激しく膨れ上がったかと思うと、「ドン」という音とともに破裂し、内側から腐肉の破片となって辺り一面に飛び散った。
魔導構体フリーデは、重い鎧をまとった黒武士とワイトを迎え撃った。その手に握られた何物をも砕く空間魔法の剣が振るわれるたび、奇妙な波動が生じて周囲の空気さえ歪む。精鋼すら断ち切る刃は泥でも切るように、強靭な死者を鎧ごと音もなく幾つにも切り分けた。
サンドラが鋭い気合いを発すると、手にした刃が燦然と輝いた。放たれた「辟乱斬」が闇を引き裂き、生者を憎む怨念の魂を次々と灰に変えて散らしていく。
十数分の激戦の後、あたりには残骸と砕けた骨が散らばるばかりだった。遭遇戦が終わるや否や、彼らは資源の消耗も顧みず、すぐさま全速で再び進み出した。
時は飛ぶように過ぎ、一行はようやく、未だかつて生きた人間が足を踏み入れたことのない望月城周辺の丘に辿り着いた。
ここは教廷の聖階の強者でさえ禁忌と見なす、究極の死地である。
荒れ果てた丘の頂から見下ろすと、そこは崩れかけた高い城壁に固く閉ざされた、広大な廃都だった。傾いた建物の数々は巨大な屍骸のように、往時の繁栄を黙して語っている。そして瓦礫に埋もれた薄暗い街路の奥では、おびただしい数の不死者が意識もなくうろついていた。
都市の中心では、墨を流したような漆黒の竜巻が天を支える巨柱のごとく蒼穹へと伸び、途方もない負エネルギーを狂ったように天へ注ぎ込んでいた。空全体が、見えない巨大な手でかき回される黒い泥沼と化したかのようだ。その純然たる死の渦は不死者さえ怯えるほどの威圧を放っており、生き物が巻き込まれれば、瞬く間に純粋な負エネルギーへと同化されてしまうだろう。
竜巻の頂には、信じがたいほど巨大な満月が掛かっていた。雪のように白く冴えた月ではない。死の静けさをまとった灰色にくすみ、空全体を覆い呑み込もうとしているかのようだった。
さらに竜巻から離れた暗がりには、雲を突くほどの漆黒の次元門がそびえていた。門枠と扉には複雑で不気味な紋様が刻まれている——冥界の門だ。死者たちの尽きぬ怨嗟を帯びて、無数の不死者が門の向こうから絶え間なく溢れ出していた。
「恐ろしい竜巻だ……こんな奇観は初めて見る」ウェルズは天を見上げ、感嘆まじりに呟いた。
「生者お断りのこの都市に、どうやって潜り込むわけ?ここは負エネルギーだらけで、立ってるだけで体力がどんどん抜けていくんだけど」サンドラは眉間に深い皺を寄せた。
「潜入するなら、立ち込めた負エネルギーはむしろ絶好の隠れ蓑になる。この環境じゃ、不死者は俺たちの生命の気配をすぐには見分けられない。そこに俺が陰影隠形をかければ、城内を気づかれずに動き回るには十分だ」ウェルズは冷静に分析した。
「では、どこから調査を始めるの?ここには不死者の領主がいるの?」フリーデが尋ねた。
「この辺りの負エネルギーは濃すぎるのだ。高階の不死者でも心をたやすく洗い流され、本能のままに殺戮する怪物へと退化してしまう。負エネルギーこそ大海のように豊かだが、ここに近づこうとする不死者の領主など、まずいないだろう」バンシーは耳元の囁きに必死に抗い、殺戮の欲望に意識を呑まれまいとしていた。
望月城が今日に至るまで周囲の領主に分割されずにきた理由も、おそらくそこにあるのだろう——制御を失った怪物に成り果てたい死者などいないのだ。
「お前は暴走したりしないだろうな?」
「まだ持ちこたえられる。定期的に苦痛の精華を食べさせてくれれば、自分を抑えていられる」
ウェルズは苦痛の精華を大量に持ち歩いていたから、惜しみなく与え続けることができた。
「残念だな。ジョージはどうして安定心神の神術を俺にくれなかったんだ」ウェルズは溜め息をついた。
安定心神は通常、負の感情の侵入を鎮めるために使われる。狂化の危機に瀕したこのような窮地では神業とも言える術だが、あいにく彼は神術に通じていなかった。
「この城を見て、何か思い出したか?」ウェルズはバンシーに向き直った。
彼女は考え込むような表情を浮かべていたが、光を失った瞳に、ふと異様な輝きがよぎった。
「見覚えのある景色だ……いろいろなことを思い出した」低く、どこか虚ろに響く声だった。「執政庁の門前で、空が突然闇に沈み、首都の無数の民が泣き叫びながら鮮血へと精錬されていく光景を思い出した。それを見た私は、すぐに異変の源である万神殿へ駆けつけた。だが……妹に背後から襲われたのだ。その後、血の海に倒れ伏したまま、中央広場のオベリスクから漆黒の竜巻が湧き上がるのを、そして……悪魔の姿を、ただ見ていることしかできなかった」
「悪魔?ここは不死生物の聖地でしょう、どうして悪魔がいるわけ?それに終末救贖者は悪魔を召喚するのが大好きよね。この二つ、関係があるんじゃない?」サンドラは鋭く盲点を突いた。
十分に筋の通った推測で、一同は黙ってそれを胸に留めた。
「今、重要な場所を三つ挙げたな。それぞれ都市のどの方角にあるか覚えているか?調べに行けば、手がかりが見つかるかもしれない」
「覚えている。ついて来てくれ。まずは執政庁へ行こう」
サンドラはナイトメアを元いた場所へ送り返した。一歩ごとに火花を散らす乗騎など、陰影の中に隠せるものではない。
バンシーはふわりと先頭に浮かび、一行を先導して朽ち果てた死の都へと足を踏み入れた。
陰影隠形に包まれ、四人は濃密な負エネルギーの中に溶け込んだかのように、音もなく廃れた路地を抜けていった。
道中で出くわすのは心を持たない低階の不死者ばかりで、感知はひどく鈍い。負エネルギーに紛れていれば、堂々と目の前に出ていかない限り気づかれることはなかった。不死者があまりうろつかない小道を辿り、一行は無事、壮麗な建物の前に辿り着いた。
広大な敷地を持つ建物で、正門前には干上がった巨大な噴水まである。大門の両脇には高さ三メートルにもなる重鎧の衛兵の大理石像が一体ずつ立ち、風雪にさらされてなお威風堂々として、国家の執政庁の名に恥じない佇まいだった。
「この建物全体……大理石と玉で築かれているなんて。荘厳で美しいうえに、魔力を集められるのね」目利きのサンドラは思わず感嘆した。
一行はすぐに重い大門を押し開け、内部へ潜り込んだ。
執政庁の内部は外観ほど保存状態がよくなく、見渡す限り崩れた壁と瓦礫ばかりだった。正庁の入口にはもともと数十体の彫像が並び、粛然と客を迎えていたはずだが、長い歳月を耐え抜いたのはわずか三、四体で、残りはすべて砕けた石となって床に散らばっていた。
「私の記憶では、執政庁の文書庫はあちらだ。残された史書や物資が見つかるかもしれない」バンシーは薄暗い長廊下を指して提案した。
一行は文書庫へ向けて手探りで進んだ。
ここには低階のワイトが数体徘徊しているだけだった。サンドラとフリーデは幽霊のようにその背後へ回り込み、刃と魔法の剣を音もなく突き出して、手際よくこの一帯を片付けた。
安全を確かめると、一行は手分けして情報を漁り始めた。
ウェルズは崩れた書架の下から、ぼろぼろの古書を一冊掘り出した。
「監察官、執政官、護民官、事務官、騎士と市民……これがかつての『月の潮汐』という国の主な階級だ。この国は決闘と騎士精神を尊び、執政官は共和政体の腐敗を避けるため、通常は二人が共同で務めた……面白いな。最後の執政官の呼称には女性形の接尾辞が使われている。バンシーの話と完全に一致する」
「ここ、死体がたくさんある!」ふいに、すぐ近くからフリーデの驚いた声が上がった。
声を聞いてウェルズが駆けつけると、フリーデは板で厳重に塞がれていた小部屋の前に立っていた。扉はすでに押し開けられ、中には白骨がうずたかく積み上がっていた。
皆、気になって近寄り、中を覗き込んだ。
フリーデは一面の骸骨をまたぎ越え、部屋の奥の木の机の上に、乾いた血痕にまみれた手帳を見つけた。ざっと目を通しただけで、この悲劇の顛末が分かった。
「ここには大災厄の後、すぐには死ななかった生存者たちが隠れていたの。老人も子どももいた。死の間際に、彼らは最後に見聞きしたことを書き残して、この都市がどうやって不死者の楽園に成り果てたのかを記録した。最後には食糧が尽きて、食べ物を探しに出た人は二度と戻らなかった。たぶん……外へ出た途端、不死者に生きたまま喰われたのね」
バンシーの顔が憐れみに苦しげに歪んだ。「なんと哀れな……こんな狭い場所に閉じ込められ、絶望の中で死を待つしかなかったとは。国全体が死地と化して、逃げ場などどこにもなかったのだ」
ウェルズは彼らの身になって、どうあがいても死を待つしかない密室を想像してみた。確かに息が詰まるような、やりきれない思いがした。
「これを全部引き起こしたのが君じゃないといいけど。でなきゃ、その同情はずいぶん白々しいわよ」サンドラは思わず突っ込んだ。
「手記には終末が起きた時の異状も記されている」フリーデは重要な情報を続けた。「生き残った魔法使いの一人によれば、国を裏切ったのは執政官。彼女たちは三つの巨大な献祭法陣を起動した。一つは『ドラコリッチの命匣』を使って月の象徴を歪め、一つは冥界の門を召喚し、最後の一つは、悪魔転化の儀式……終末が訪れる数日前には、悪魔と不死者が街頭で殺し合う光景を目撃した人までいたそうよ」
「悪魔転化の儀式?」ウェルズは目を瞬いた。「不死者への転化じゃないのか?なぜ悪魔になる?ここは死者の楽園のはずだろう」
「手記に誤りはない。確かに悪魔転化の儀式よ」フリーデは改めて確認した。
黒幕が悪魔転化を用いたのなら、バンシーになったはずがない。バンシーの言うとおり、背後から刃を突き立てた妹が首謀者である可能性が高い。だとすれば、今悪魔と化しているのは、彼女の妹に違いない。
「どうやら、この災厄は本当に君の仕業じゃなかったのかもね」サンドラはバンシーを見て、口調をいくらか和らげた。
「その悪魔転化の魔法陣はどこにある?」ウェルズは重ねて尋ねた。
「記録によれば、魔法陣は万神殿の内部にある。今すぐ万神殿へ向かう?」フリーデは皆を見た。
だが彼女はすぐに、ウェルズとサンドラの顔色がひどく青白いことに気づいた。魔導構体である彼女は負エネルギーの侵蝕を受けつけないが、生身の仲間二人は、魔法で守られていても、渦巻く負エネルギーの中で体力も魔力も急速にすり減っていた。バンシーもまた、殺戮の本能に呑まれないよう、揺れ動く感情を鎮める時間を必要としていた。
「まずは休もう」ウェルズは即座に決めた。
「ここで?ここは負エネルギーの領域なのに」フリーデは腑に落ちない様子で首を傾げた。
「俺たちには特別な道具がある」
まずまず人目につかない空き部屋を見つけると、ウェルズは清潔術をかけて埃を払い、それから腰に提げた燭聖のランタンを外して床に置いた。
ランタンに火を入れると、柔らかくも揺るぎない橙色の火光が芯に灯った。十分ほどすると、その光は剣のように濃密な闇を切り開き、暖かく安らかな浄土を作り出して、命を蝕む負エネルギーを完全に締め出していた。
「すごい道具ね」フリーデは惜しみなく感嘆の声を上げ、その穏やかな灯りに見入った。
「お前のような古代の構体までがすごいと言うなら、間違いなく値の付けようもない宝だな」ウェルズは小さく笑った。
「この奇跡の灯りを、どこで手に入れたの?」
「燭聖だ」
「枢機卿に属さない、あの教廷の聖階の強者?彼女を知っているの?」
「知らん。だが彼女は確かに、この灯りを俺に贈った。中で燃えているのは『不朽の明燭』だ。これのおかげで、俺たちは死地の中でも息がつける」
負エネルギーを払ったあと、サンドラは簡易携行食のセットを取り出して灯火のそばで夕食の支度にかかり、ついでに気になっていたことを口にした。
「ずっと分からないことがあるの。どうして『ドラコリッチの命匣』なんてものがあるわけ?普通に考えれば、命匣さえ残っていればドラコリッチは不死不滅でしょう?それがどうして儀式の消耗品にされたの?」
「おそらく戮魂殺のような法術で死んだドラコリッチだろう」ウェルズは熱いスープをかき混ぜながら、冷静に分析した。「魂を直接消滅させられれば、命匣があっても不朽の性質を借りて蘇ることはできない。命匣は自然と、主のない強大な魔力源になる」
「それはどれほど恐ろしい聖階の強者なのかしら。実力はもう伝説に肩を並べているんじゃない?」サンドラは舌を巻いた。竜はもとより頂点に立つ生物であり、自ら望んでリッチと化した竜ともなれば、完全に殺すことの難しい怪物の術者だ。命匣を飛び越えて魂を直接消し去れるほどの実力者など聖階の中でも一握りで、しかも霊魂道系に通じた聖階でなければならない。
食事ができあがると、四人は急ごしらえの焚き火を囲んで座った。
温かい食事を味わえるのはウェルズとサンドラだけで、食事を必要としない残る二人は、黙って火を眺め、それぞれの物思いに沈んでいた。
「私の妹は……いったいなぜ、あんなことを」バンシーの声には深い哀しみと戸惑いが滲んでいた。
「永遠の生を求め、至上の力を渇望する……どちらの欲望も、それ一つで権力者に臣民を祭壇へ押し上げさせるには十分だ」ウェルズは淡々と応じた。
「だがあの子は幼い頃から、美しさにひどく執着していた。そのために自ら醜悪な悪魔になるなど、私にはどうしても想像できないのだ」
「悪魔にもサキュバスという分派がある。同じように、極みの若さと美貌を保てる」
「それでも信じがたい……いつも私の後ろについてきて飴をねだっていたあの女の子が、今やこれほど残酷な暴君になっているなど」
「時間は人を変えるものだ」ウェルズは椀の熱いスープを軽く吹いた。
一方、フリーデはずっと黙っていた。両手を膝の上に重ね、手袋の指先はきちんと揃えられ、燦然たる金色の瞳に踊る火が映っている。
バンシーが飴をねだる女の子の話を終えてからずいぶん経って、彼女はようやく顔を上げた。
「彼女の妹は数百万の人を祭壇へ押し上げて、自分の永遠の生と美貌に換えた」フリーデはウェルズを見た。「サンドラは私を道具的理性だと言った。なら、彼女の妹は何になるの?」
バンシーの輪郭が火明かりの外でわずかに薄れたが、何も言わなかった。
ウェルズはスープの椀を置いた。火の光は彼の顔の下半分だけを照らしている。「同じものだ。彼女が計算するのは自分の幸福で、お前が計算するのは総量だ。計算の仕方に違いはない」彼は足元から枯れ枝を一本拾い上げた。「道具的理性というのは、純粋に価値の増加だけを目指す思考だ。あらゆる物事を、人の命や道徳まで含めて、目的を達するための道具と見なす。幸福は数量化できると考え、より多くの幸福の総量を生み出せる側が、絶対の正義だとする」
フリーデの眉がわずかに上がった。「総量が多いほうが、正しくないの?」
「正しくない。この理屈はそれ自体が矛盾している。幸福は人によって違い、普遍的な物差しなど存在しない。人は自ら堕落することを自分の幸福と見なし、その代価を甘んじて受けることだって、まったく可能だ」枯れ枝が灰の中に二つの円を描いた。一つは大きく、一つは小さい。「サンドラを見ろ。干し肉のスープ一杯で心から満足する。これを強欲な王女に置き換えて、空から金貨一千万枚が降ってきたとする。この金を王女に与えるのと彼女に与えるのとでは、『幸福度』は決して同じにならない。貪欲な者は、永遠に欲望の溝を埋められない」
「ちょっと」サンドラは椀を抱えたまま、もごもごと一声抗議したが、スープを飲む手は止めなかった。
「もう一歩譲ろう。道具的理性に従えば、俺たちは全員を極度に自制して満足するよう洗脳し、浮いた物資を少数の貪欲な者に集中して供給すべきなのか?」枯れ枝がまた灰に五つの点を突いた。「あるいはもっと極端に。健康な人間が病院の前を通りかかる。中には瀕死の患者が五人寝ていて、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓がそれぞれ一つずつ足りない。この罪のない通行人を縛り上げて生きたまま臓器を摘出し、残る五人を救う。五つの命を一つと引き換えにすれば、全体の『幸福』は増えるんじゃないか?これがお前の正義か?」
「その五つの病床に寝ているのが私だったとしても、私はその通行人の心臓を欲しがったりしない」フリーデの答えは早かった。灰の中の五つの点は見なかった。「あなたは、存在しない私と言い争っている」
「林間仙境でお前が欲しがったのは、まさにシルヴィの心臓だ。一人の女の子の全部を、何万もの人の命と引き換えにした」ウェルズは火を見つめていた。「お前はただ、あの刃を自分の手で握ったことがないだけだ。お前の代わりに刃を抜いたのは、俺だ」
フリーデはこの言葉を呑み込んだ。膝の上の手をもう一度重ね直し、別の道を選んだ。「誰一人として境遇を悪くさせないという前提で、少なくとも一人をより良くすることを追求できるはず」
「それは経済学上の理想状態に過ぎない」ウェルズは目を上げて彼女を見た。「もし一人の幸福が、必ず他人の利益を食い潰すことの上に成り立つとしたら?止めれば、その者は不幸になる。満たせば、多数が不幸になる。人には自分の自由意志を行使して、他人に害をなすことを選ぶ権利があるのか、ないのか?」
フリーデの眉間が寄り、声はさっきより軽くなった。「そんな異常な人が……本当にいるの?」
ウェルズは答えず、ただ枯れ枝で闇の中を指した。望月城の方向。そこには国全体を供物に捧げた妹が一人、彼らを待っている。
バンシーは顔を背けた。
「それに、異常じゃない」ウェルズは枯れ枝を引っ込めた。「お前はあまりに特殊で、普通の人間の欲望を本当に味わったことがないだけだ。他人より強くなりたい、他人より賢くなりたい、他人より偉大になりたい、他人の頭を踏みつけたい」彼は一つ一つ数え上げた。その口調は携行食を数えるように平坦だった。「張り合い、競争、嫉妬、憎悪は人間の本能で、どれも排他的だ。ただ俺たちは普段、それをもう少し穏やかに呼んでいるだけだ。もっと多くの魔法を覚えたい、試験でもっと高い点を取りたい、栄えある貴族や裕福な企業家になりたい。彼女の妹はただ、その『もっと』を、とことんまで求め続けただけだ」
「ましてや、どうしてお前の定義する幸福だけが本当の幸福なんだ?それ自体が一種の暴行じゃないか?お前の言う助けには人手が要り、機関が要る。それは全部、他人から資源を削り取らなければならない。つまりお前は、お前に賛同する者を犠牲にして、賛同しない者を変えようとしている」彼は枯れ枝で火をつついた。「変えたとして、その者たちは本当に幸福になるのか?もしそれが、魔法で目覚めさせられて、自ら望んで食われる豚だったら?かえって、生まれながらに食われる意味をお前に邪魔されたと思うんじゃないか?なぜその資源を節約して、そういう者たちには好きに堕落させ、より多くをお前に賛同する者に残してやらない?そのほうが皆が嬉しいんじゃないか?お前を支持する者が犠牲を厭わないからといって、お前は彼らを犠牲にして自分のいわゆる『正義』を満たすのか?それはあまりに身勝手だ」
火の粉が舞い上がって靴に落ちたが、彼は払おうともしなかった。
フリーデはすぐには答えなかった。視線を火に落とし、指先で膝をとん、とんと叩いている。
彼女はこれらの反問を一つ一つ裏返して眺め、その継ぎ目を探そうとしたが、指を差し込める隙は一つも見つからなかった。少なくとも今夜は。
同時に彼女は気づいていた。自分が手を伸ばして掴もうとするどの答えも、依然として数についての答えなのだと。より多くの幸福、より少ない死。そしてそれこそが、彼がとうに選んでおいた戦場だった。
指が止まった。フリーデの銀色の眉が寄り合った。「でも私はやはり信じている。この世には本当の正義が存在すると」
彼女は顔を上げた。火の光が金色の目の中に、二本の細い針となって立っている。「少なくとも、世界には本当の『悪』が存在する。純粋な邪悪を前にして、それを打ち倒すことは、本当の正義ではないの?たとえば、無意味な死傷をもたらす天災を解決したり、邪悪な本能だけに駆られる悪魔を滅ぼしたりすること」
サンドラは口の中のスープを飲み下してから、口を挟んだ。「それを滅ぼしても、本当の幸福は来ないわ。せいぜい、この無意味な人生の中の、あまりに馬鹿げた苦痛を減らすだけ。苦痛を和らげることと幸福をもたらすことの間には、越えがたい溝が横たわっているのよ」
ウェルズは彼女のほうへ首を傾け、同意を示した。「確かに、苦痛と幸福の間に換算の公式はない。苦痛が抜き取られたあとに残るのは、退屈と空虚だけということもある。だがそれでも俺は、空虚のほうが苦痛に責め苛まれるよりずっとましだと思う。毎日働くのは苦しいが、ある日突然働かなくてよくなれば、人は大抵、何もすることのない虚空へ落ち込んでしまう。それと同じことだ」
「それに終末救贖者。私は全力を尽くして彼らを滅ぼす」望月城へ来た本来の目的を思い出し、フリーデの背筋はいくらか伸び、口調は再び固くなった。
ウェルズは枯れ枝を火の中へ放った。「奴らは純粋な邪悪なのか?俺には分からん。少なくとも今の情報では、まだ疑問符をつける余地がある」
「民を大量に虐殺し、国の内乱を煽り、生きた人間を残酷に生贄に捧げる……それでも本当の邪悪と言えないなら、何が邪悪なの?」フリーデは彼を見据えた。
ウェルズは火を見つめ、口の端をわずかに動かしたが、反論はしなかった。
「存在するものにはすべて、理性に適った理由がある」
彼は立ち上がり、ローブの埃を払った。
「寝るぞ。今夜は十分に話した」
ウェルズは首を巡らせ、墨汁が滴り落ちそうな窓の外の闇夜を見た。明日の万神殿では、必ずや激戦が待ち受けている——そんな強い予感がした。
フリーデは火のそばに残った。眠りを必要としない彼女は、ただその小さな火の輪を見つめ、それが低くなっていくのを見ていた。手袋の指先が、もう一度揃えられた。
火の光の向こう側で、バンシーもまた動かなかった。




