第十一章 強化転送門
足音ががらんとした城主府の長い廊下に響いた。彼女が顔を上げると、ちょうどウェルズが魔法陣の最後の一画を描き終えたところだった。
「もうすぐ終わる。俺が最後の仕込みを済ませたら、お前が権能を開くだけで、教廷の属国へ通じる門扉が開く」
ウェルズは指先で微光をまとった魔法のペンを回した。床の法陣は、かすかに魔力の光暈を放っている。
「都市の治安はどう?市民をうまく組織できそう?」彼女は気遣わしげに尋ねた。
広間の一隅には簡素な事務机が据えられ、サンドラが椅子に腰かけて羽根ペンを走らせ、山と積まれた書類を手早くさばいていた。
「順調よ」サンドラは顔も上げなかった。「私が行政部門を引き継いで、市民の組織と治安の維持をやらせている。不死者たちの本当の姿がさらされて、多くの人が事実を受け入れざるを得なくなった……自分たちが囲われた家畜に過ぎなかったこと、この都市のいわゆる平和が、不死者がわざと自分たちを惑わせるために仕組んだものだったことに、ようやく気づいたのよ」
「私も手伝ったんだよ!」
サンドラの傍らから、快活なダリラがひょいと顔を覗かせ、目元でおどけたようにピースサインを作ってみせた。
「私が証言して、あなたたちの言ったことは全部本当だってみんなに伝えたの!もう少しでバンシーにされるところだったことも打ち明けたし、サンドラが管理しやすいように、町の重要人物も紹介してあげたんだから!」
外向的な性格で、町では知らぬ者のない二階の巓峰の少女魔法使いが表に立ったことで、サンドラの信頼性は大いに裏づけられ、彼女が都市全体を速やかに安定させる大きな助けにもなった。
「ありがとう」
「お礼を言うのは私のほう!」ダリラは感極まって歩み寄り、フリーデの手を固く握った。目に感謝の涙が光っている。「命を救ってもらった恩を、どう返せばいいのか本当に分からない!あなたがいなければ、私はとっくに死んでいた。それどころか不死者に堕ちていた!心からお礼を言わせて。私を救ってくれて、この都市の数えきれない人々を救ってくれて、ありがとう。あなたがいなければ、私たちは永遠にこの狭い檻に閉じ込められたままだった」
そう言い終えると、二人はぎゅっと抱き合った。
「これが終わったら、もう会うこともないんだよね?暇ができたら、絶対にあの辺境の国まで会いに来てね!」
「ええ、必ず」
ダリラは彼女の頬に思いきり口づけると、くるりと背を向け、町の要人たちとともに事態の収拾に追われる慌ただしさの中へ戻っていった。
忙しく立ち働く人々を見やりながら、フリーデはそっと息を吐き、踵を返して城主府の大門へ向かった。広い玄関の階段に立ち、府の外に集まりつつある市民を眺める。いくらか騒がしくも希望に満ちた空気の中、ひどく場違いな人影がひとつ、通りをふらつきながらこちらへ歩いてきた。
シルヴィだった。避難する人の流れに逆らい、乱れきった足取りで階段を上ってくる。髪は汗に濡れた頬に貼りつき、あれほど生き生きとしていた両の目は、今や淀んだ水のように空ろだった。係員として、料理人として働いていた頃の溌溂とした気配は跡形もない。その異様な姿は、見る者の不安をかき立てずにはおかなかった。
「どうして……どうしてこんなことに……?」
両手で果物ナイフをきつく握りしめ、口の中で神経質にぶつぶつと呟き続けている。
かつて助け合った少女の姿に、フリーデはほっと息をつき、急いで歩み寄った。
「シルヴィ?無事だったの?ずっと心配してたのよ!あなたの宿に泊まっていたのはみんなよそから来た不死者だったから、暴動の時に奴らがあなたを傷つけるんじゃないかと怖くて、わざわざ宿まで探しに行ったの。でも、あそこは崩れていて、誰も見つからなかった……無事でよかった!」
フリーデは何の警戒もせず、彼女に近づいていく。
フリーデの姿を認めた瞬間、死んだようだったシルヴィの目に、ぞっとするような凶暴な光が宿った——何かにぶつけずにはいられない、狂った、昏い、盲目的な欲望だった。
「あなたさえ現れなければ……あなたがあたしの人生を壊した!」
喉が裂けんばかりの金切り声とともに、狂乱したシルヴィは果物ナイフを勢いよく突き出した。銀光が閃き、まったく無防備だったフリーデの腹に、刃がずぶりと沈み込む。
腹に食い込んだ刃の冷たさに、フリーデの顔に浮かんでいた安堵の表情が、そのまま凍りついた。
うつむいて、腹に刺さった果物ナイフをぼんやりと見下ろす。傷口から温かい血が湧き出すことはない。それなのに、血よりも大切な何かが、どくどくと流れ出していくような気がした。
その光景に、周囲の誰もが息をのみ、言葉を失った。
「どうして……私を襲うの?」フリーデは呆然と、目の前の少女を見つめた。
かつて明るい笑顔が似合っていたシルヴィの顔には、もはや希望のかけらもなく、すべてを奪われた者の深い絶望だけが残っていた。
今の一撃で、シルヴィは勇気も力も使い果たしてしまったらしい。柄から手を離すと、よろよろと数歩後ずさり、冷たい石畳の上にへたり込んだ。
そして、胸が張り裂けんばかりの声を上げて泣きじゃくり始めた。
「あなたさえ現れなければ……あなたがあたしの人生を壊したのよ!」
「うちの宿は不死者に壊された!あそこは、おじいちゃんが一生かけてやっと所有権を買い取った、いい場所だったのに!今は移住しなきゃならなくなって、うちの土地まで一文の値打ちもない荒れ地になっちゃった!」
「家族もみんな不死者に殺された……!あたしがたまたま買い物に出ていなかったら、あたしもあそこで死んでいた!」
「小さい頃からずっと、役人になるのが夢だったのに、あなたのせいで都市ごとめちゃくちゃよ!あたしの努力、全部水の泡じゃない!」
「あなたはあたしの故郷を壊した、あたしの未来を壊した、あたしの仕事を壊した……あなたはあたしのすべてを壊した!!」
彼女は絶望のままに泣き叫んだ。やがて、崩れ落ちた現実にもう耐えきれなくなったのか、すべてを投げ出すように白目をむき、冷たい石畳の上で気を失った。
地面に倒れたシルヴィを見つめるうちに、澄んでいたフリーデの双眸は次第に焦点を失っていった。
「どうしてこんなことに……私はただ……みんなを助けたかっただけなのに」
善意から動いたことに間違いはない。だが今、自分の選択のせいですべてを失った生身の人間が、目の前に倒れている。
自分が割って入らなければ、シルヴィは嘘の温床の中で、穏やかに安らかに一生を送れたはずなのに。
目の前の光景に、自分の世界観がまたしても砕け散るのを感じた。貫こうとした正義が、他人からすべてを奪う罪悪になってしまったのだ。
広間にいたウェルズは外の騒ぎを聞きつけると、手を止め、無表情のまま大門から出てきた。フリーデのそばまで来ると、まだ腹に刺さったままの果物ナイフをつかんで一気に引き抜き、「ガシャン」と無造作に脇へ放り捨てる。
「あまり考え込むな。自分が正しいと思うことをやれ。お前自身が選んだことだろう?」
「……」
「顔を上げろ。訊くぞ。これは正義の行いだ、そうだな?」ウェルズは鋭い眼差しで、厳しく問い詰めた。
「もちろん……正義よ」
それが今の彼女にとって唯一の頼みの綱であり、唯一固く信じられるものだった。ウェルズはまさにそれを、思い出させようとしていたのだ。
「シルヴィはそれでお前に感謝したりはしないだろうが、それでも正義の行いだ。それで十分じゃないか?」
「でも、私はみんなを助けられなかった」
「この世には、そもそも全員が認める正義や秩序なんて存在しない」ウェルズは鼻で笑った。「全員をお前の認める正義の中に収めようとすること自体が、夢物語だ。悪人にとっては、善そのものが悪行なんだ。自分が正しいと思うことをやればいい」
「あなたの言うことは正しいのかもしれない。でもそれは、大多数の人が認める善行や美徳を捨てていいということにはならない。私は正義を諦めないし、道徳的なニヒリズムや相対主義を認めることもない……」
「お前の正義が間違っているなんて、俺は一度も言っていない。むしろ正しい。お前は自分の正義を守り通して、シルヴィと都市の間で、都市を救うほうを選んだんだろう?だから自分の選択を悔やむ必要なんてまるでない」ウェルズはどうでもよさそうに肩をすくめた。
「……それも同じように間違っていると、私は思う」
「大多数の幸福のために、少数の幸福を犠牲にする。それは本当に理に適っているの?」彼女は呟いた。
ウェルズは肩をすくめて応じた。「事実、お前はもう選んだんだ。なのに今になって、犠牲になったものを無意味に悔やんでいる。悔やむなら、自分の無能を悔やめ!お前に聖階の実力があれば、何もかも全部救えたんじゃないか?」
「……あなたの言うとおり。結局、私が無能すぎたのね」
「なら、お前の正義は間違っていない。それで十分だ。自分の選択をこれ以上疑う必要はない」
辛辣な物言いだったが、彼女は気づいていた。ウェルズは実は、彼なりのやり方で自分を慰めてくれているのだと。
「……あなたなら、大多数の幸福と少数の幸福の間で、どう選ぶ?」
「俺の答えはこうだ。まず、その問いを出した奴を一発殴る」
「問いを出した人を片付けられなかったら?」
「なら選ぶさ。自分が最善だと思う決断をして、一番嬉しくなる選択肢を選ぶ。言い換えれば……どうしても選ばなきゃならないなら、とことん貫け。世界の終末が来るまで選び続けろ。自分の心に恥じなければそれでいい」少し間を置いて、彼は付け加えた。「ぶっちゃけ、この世に絶対の正義なんてない。お前の正義は、たまたま多数の利益に沿っていて、お前に自己満足の道徳的優越感を抱かせているだけだ。お前の正義と俺の冷酷は、根っこのところで同じものだ。どっちも、夜にぐっすり眠るためのものさ。違いはただ、お前に喝采する観客のほうが多いってことだけだ」
これが彼の正義だった。
いつだって自分が嬉しくなるほうを選ぶ。何らかの原則を頑なに守り続ける彼女とは、まるで違う存在だった。
ウェルズは淡く笑い、賢者めいた口調に切り替えた。「一番愚かな人間は、選択は間違いだと言う。だが実のところ、人類が物を生み出す速さは、選択が必然的にもたらす損耗より大きい。この利益を分配する陣痛は社会が回るための前提で、だから選択は永遠だ。社会学では、この選択は分配的正義とも呼ばれる。哲学では、階級の力の闘争が社会の富の分配を決めると言う。歴史は片時も休まず選択を続けているんだ」
「あなたと私は、やっぱりまったく違う人間ね」
腹の傷はすでに塞がっていた。この体のどんな損傷もすぐに元に戻る。だが心の傷は、永遠にかさぶたにならないかのようだった。
「我が主はどうして私に心を授けたの?これほど強い免疫の力をいくつも与えておきながら、どうしてこの痛む心だけは残したの」
「きっと、お前が自分の心で正義を探すことを望んだんだろう」
「どうして我が主は、私に正義を求めてほしかったの?どうして私を、心を持たず、命令に従って戦うことしか知らない殺戮の機械に作り変えなかったの?」
「お前の力が強すぎるからだ。極悪非道な奴の手に落ちれば、この世界に取り返しのつかない災いをもたらす」
フリーデは深く息を吐いた。小さな拳を握りしめ、燦然たる金の瞳でウェルズをじっと見据える。「ずっと考えて、今になってようやく分かった……あの時あなたを止められなかったことを、私は本当に悔やんでいる。少なくともそれが、今の私に確かだと言える唯一の正義よ」
ウェルズは肩をすくめ、薄い笑みを浮かべて応じた。「なら俺も、あの時お前に止めさせなかったことを、つくづくよかったと思ってるよ」
「俺に復讐する気か?もう一度言っておくが、法律は俺の側にあるぞ」
「私はただ、自分が未熟すぎて、あなたのでたらめに騙されたことを悔やむだけ。もう一度あの法律の紙切れを私の前に持ってきたら、必ず粉々に破いてやる」真剣な顔できっぱりと言い切る。取り返しのつかないすべてが悔やまれてならなかった。この教訓は必ず胸に刻み、次こそは決して間違えない——そう心に誓う。
ウェルズはかすかに口の端を上げた。
「自分なりの考えはもうあるらしいな。なら、迷うことはない。楽しいことでも考えろ!俺の知る料理人で、肉をつまみ食いしない奴は一人もいない。シルヴィだってきっと人肉を食ったことがある。そう考えると、あいつも実はかなり恐ろしいと思わないか?」
「諺にもあるだろう。『料理人が盗まねば五穀は実らず、三年の日照りでも料理人は飢え死にしない』」
ウェルズは幼い頃、宮殿で暮らしていた日々を思い出した。家に仕えていた宮廷料理人も、よく肉をつまみ食いしていたものだ。食材を扱う料理人であるシルヴィも、本来は不死者への供物となるはずだった人肉を、少なからずつまみ食いしていたに違いない。
「それはただの、あなたの精神勝利法よ」
「はは、ほどほどに自分を慰めるのも大事なことさ」
「さっきあのナイフを抜いた時、あなたは一度もシルヴィを見なかった」彼女は彼の視線を受け止めた。「気にしていないんじゃない。見るのが怖かったのよ」
ウェルズは答えなかった。
その時、数人の官僚が足早にやって来て、二人の話を遮った。第一陣の難民の集結が完了し、いつでも教廷の属国へ移動できるとの報告だった。
「聞いただろう?無駄な憂鬱に浸るのはもうやめろ。さあ、俺たちで転送門を開く時だ」ウェルズは彼女へ手を差し出した。
数万の命に関わるこの大事に、しくじりは許されない。フリーデはすぐさま心を引き締めた。
魔力の渦が周囲で荒れ狂い、少年の漆黒のマントを巻き上げた。ウェルズは浮かぶ魔導書の上に手をかざし、口の中で難解な呪文を低く唱えた。
詠唱とともに、金色の魔力が水銀のように流れ出す。古雅で精緻な魔導書の、羊皮紙の書頁の縁に幻の炎が灯り、次第に灰と化していく。足下では、少年が自らの手で描いた魔法陣が燦然たる金の光柱を迸らせた。二人の前で、虚空が見えない手に引き裂かれたかのように、まばゆい次元門が一点から浮かび上がり、急速に広がっていく。
「実現せよ、権能——空間安定」
フリーデは軽く嘆息し、純白のドレスグローブをはめた手をゆっくりと伸ばして、虚空をぐっと握りしめた。
幽光を放つ鎖が数条、天から垂れ落ち、巨獣の鋭い爪のように次元門へ掴みかかって、その四隅をがっちりと噛み止めた。
虚空に澄んだ「ガキン」という音が響き、張り詰めた鎖が狂暴な空間乱流を完全に安定させ、本来なら開くはずのないこの超遠距離の空間門を、現実の中にしっかりと釘付けにした。
時を同じくして、『咫尺の書』の燃えていた数頁も燃え尽き、灰が背表紙の間からはらはらと落ちた。
「転送門が完成した。すぐに市民を組織して移動を始めろ!」
ウェルズの号令一下、役人たちは速やかに動き出した。
二人の役人が気を失ったシルヴィを階段から運び下ろし、第一陣の隊列に加えた。
ほどなく、大小の荷物を背負い、家族を連れた市民たちが、持ち運びやすい家財を手に長蛇の列をなし、すでに死地と化したこの都市から逃げ出し始めた。幸い、教廷側はあらかじめ備えており、空間魔法に長けた魔法使いを招いて転送門の補強と持続時間の延長に当たらせていたため、移住は計画よりはるかに早く進んだ。
財産に未練を残す者はもちろんいた。だが半リッチの庇護を失った後、ここはじきにあらゆる生命を拒む死地になる。正気の生きた人間なら誰も、ここに残って死を待とうとは思わなかった。
二日二晩が過ぎた。
都市の難民たちは役人の誘導で列をなし、転送陣を通って、一人残らず月の潮汐の深部をあとにした。
最後の難民の背中が通路の向こうへ消えると、輝く空間門は内へ縮み、完全に閉じて消えた。
その後の難民の受け入れについては、当然、教廷とその属国が引き継ぐことになるだろう。
「これで、燭聖の依頼を果たしたことになるだろう」とウェルズは思った。
傍らのフリーデへと顔を向ける。
「これでこの都市の人々は救われた。俺たちが手を組んだ目的は達した。契約を終わらせるか?」
少年は何気なく尋ねた。何しろ目的は果たされたのだ。ここで袂を分かつのは、ごく自然な流れだった。
「いや」彼女はきっぱりと拒んだ。
ウェルズは肩をすくめた。「お前が図々しく俺のそばに居座るのは構わないが、興味があるな。なぜだ?」
「あなたが本当に嫌な人だから」
「これがいわゆる『悪い男ほど女に愛される』ってやつか?」彼は軽く笑った。
「さて、次の計画は半リッチの蔵書を調べることだ。いろいろな真相を明らかにする助けになる資料が、その中に見つかればいいが」
ウェルズは身を翻し、振り返りもせずに城主府の薄暗い奥へ歩いていった。
フリーデはその場に佇み、遠ざかっていく少年の背中を見つめた。その瞳には、幾重にも入り組んだ感情が渦巻いていた。
「あなたについていけば、はっきり見えてくるのかもしれない……何が本当の正義なのかが」
ウェルズは自分とは正反対の人間だ。だからこそ、彼から何かを悟り、それを手がかりに、自分のものである本当の正義を見つけられるかもしれない——彼女はそう深く信じていた。




