第七章 欺瞞
ロココ風のドレスに着替え、フリーデは街の大通りを一人で進んでいた。
「写魔者を売っている店は、どこにあるのだろう」
フリーデは気の向くままに街をぶらつきながら、高貴で華麗な店構えを探した。値の張る魔法用品を扱うのはそういう店だけ、というのが彼女の印象だったからだ。その歩く姿は少なからぬ人目を引き、当然のように、よからぬ下心を抱く者も声を掛けに寄ってきた。
「お嬢さん……そこの美しいお嬢さん、どうかお慈悲を……」
ぼろをまとい、髭も剃らずに老け顔を放ったらかしにした中年男が歩み寄ってきて、両手を合わせながら卑屈に言った。
「どうかしましたか?」辺りを見回していた彼女は足を止めた。
「家に帰るのに馬車に乗らなければならないのです。どうかお金を貸してください!後で必ずお返ししますから」
彼女はしばし演算すると、懐から紙幣を一枚取り出した。
「これで足りますか?」
高級宿に丸一日泊まれるほどの紙幣を見るや、男は慌ててひったくるようにそれを受け取り、手の中でぎゅっと握り締めた。
「足ります、足ります!」
金を手にするなり、フリーデの気が変わるのを恐れたのか、男はそそくさと背を向けて逃げていった。礼の一言すらなかった。
彼女は特に気にも留めず、ただ、ずいぶん変わった人だと思っただけだった。
そこで彼女は賑やかな通りで足を止め、男が家に帰ってから金を返しに来るのを待つことにした。だがいくら待とうと、当然ながら、男が金を返しに戻ってくるはずもなかった。
一時間が過ぎた。
そうしてそこに立ち止まっていると、今度は小綺麗な身なりの青年が、仲間を二人連れて声を掛けてきた。
「そこの、絶世の美貌のお嬢さん!」青年は一人でいるフリーデに目をつけ、すぐさま仲間とともに彼女を取り囲み、立て板に水の勢いでまくし立てた。「私たちは孤児院の募金を行っています。少しばかりご協力いただけませんか?いくらでも結構です、お気持ちだけでも!」
「少し寄付するだけなら……構わないはず」数人に囲まれたフリーデはやや躊躇したが、それでも真新しい金券を一枚取り出した。
「これで足りるでしょう?私は一人でいるのが好きなの」
フリーデがいともたやすく金券を一枚差し出したのを見て、青年の目がたちまち輝いた。
「これっぽっちで足りるものですか?考えてもみてください、ライカベサにどれほどの孤児が飢えに泣いているか!特に数か月前の伯爵様の鉱山の落盤事故で、亡くなった労働者の子供たちは皆、今すぐ金が要るのです。どうかもう少しご慈悲を!」
胸を打つその言葉に決意がわずかに揺らぎ、彼女は懐から二枚目の紙幣を取り出した。だがその拍子に、うっかり三枚目まで掴んでしまった。
「本当にこれが最後」彼女はきっぱりと、そのうちの一枚を差し出した。残りの金で写魔者が買えるかどうかは、もはや怪しいところだろう。
「もちろんです、もちろん……私たち一同、あなたの大いなる善意に心より感謝いたします!」青年はにこやかに紙幣を受け取ったが、腹の中ではまた別の悪だくみを巡らせていた。
「そうだ、そちらの紙幣、少しおかしいようですね!よく見せていただけますか?」ふと思いついたように青年が言った。
「どうかしたの?」
案の定引っかかった彼女は、三枚目の紙幣を取り出してしげしげと眺めた。
「私が確かめて差し上げます……!」
何が起きたのか分からぬうちに、金は青年の手の中に収まっていた。
「もうつきまとわないでください!」
しつこくつきまとわれ、さすがの彼女もうんざりしてきたのだ。
フリーデの態度が次第に硬くなるのを見て、引き際を心得た青年は退散するしかなかった。
「うちの孤児院の記念カードを出せ!」
取り巻きにそう声を掛けると、もう一人の少年が簡素な風景の描かれた絵葉書を取り出し、フリーデに手渡した。
「これは私たちの孤児院の絵葉書です。記念にお受け取りください!」
カードを受け取ると、三人はまた慌ただしく次の標的を探しに去っていった。
彼女はただそこに呆然と立ち尽くし、さらに一時間が過ぎた。
今度フリーデの前に現れたのは、ぼろをまとい、穴の開いたカウボーイハットをかぶった浮浪児だった。
「そこの心優しいお姉さん……!」少年はフリーデの前までやって来ると、彼女を見上げた。彼女の華やかな衣装と子供の身なりはあまりに対照的で、まさに雲泥の差だった。
「あなた、ずっと遠くから私を見ていましたね?どうして?」だが、彼が切り出すより先にフリーデが尋ねた。
「どうしてって?」彼は少し間を置いた。「お姉さん、ぼくのこと忘れちゃったの?」
「会ったことがありましたか?」フリーデは少し戸惑った。
「会ったかって?もちろんあるよ。正確に言えば、これで三回目だ」少年は澄んだ声で言った。
「一回目は道でぼくが靴磨きをしてた時、二回目は何日か前の夜にお姉さんがぼくを放り投げた時、そして今が三回目」
彼女ははっと、自分が教廷に指名手配されている身であることを思い出した。戦う姿を晒した以上、彼らの手先がすぐにも足取りをたどって追ってくるかもしれない。思わず警戒の色を浮かべ、周囲に目を配った。
「安心してよ、ぼくはこのこと誰にも言ってない。警察にもチンピラにもね。知ってる?何日か前のあれ、すごい噂になってるんだ。みんな誰があそこで戦ったのか知りたがってて、情報には銀券何枚分もの懸賞金がかかってるんだよ」
「ぼくが今来たのは、三つの大ニュースを教えるためなんだ!戦えるきれいなお姉さん」
少年はにっと笑うと、秘密を打ち明けるような口調に切り替え、いかにも思わせぶりな顔をしてみせた。
「どんなニュース?」
「最初にお姉さんを呼び止めた男、ぼくたち貧民窟の子供はみんなあいつを『盲目の老犬』って呼んでる。あいつが何を言ったにせよ、お姉さんは騙されたんだ!」彼は自信満々に言った。
「そんな……?あの人は……とても誠実そうだったのに……」彼女はやや面食らった。
「うまくいくまでは、詐欺師ってのはみんな腰が低いもんさ」
「でも、人を騙そうとするくらいなら、あの人にはお金が必要だったのでしょう?」彼女は溜息をつき、思い直した。
「今頃はお姉さんの金で、酒場で帝国から輸入した強い酒を飲んでるんじゃない?へへっ、ついでに風呂に入って、どこかのお姉さんと今夜を過ごす支度をしてるかもね?」
騙されたフリーデはわずかに憤りを覚えたが、それでも溜息をつき、金を取り戻す考えを捨てた。
「二回目にお姉さんに話しかけてきた連中、先頭のやつをぼくたちは長鼻って呼んでる。どうして長鼻って呼ばれてるか分かる?」少年はまた勿体ぶって問いかけた。
「どうして?」
「口から出まかせの嘘ばっかりだから、長い鼻って呼ばれてるのさ!」そう言って少年はひとしきり大笑いした。「救貧院だの、孤児院だの、家宝だの、投資計画だの、資金繰りだの、秘密の鉱脈だの、全部嘘っぱちなんだ!」
「人の善意を利用するなんて……あんまりです。私はあの人の孤児院を信じたのに……!」フリーデは憤りを覚えると同時に、重い失望感にも襲われていた。
「また孤児院?銅貨一枚で一束買えるボロ紙が金券三枚に化けるなんて、そんな商売ならぼくも毎日やりたいよ」彼は両手を広げて微笑み、訳知り顔で評してみせた。この手の小細工にはとうに慣れきっているのだ。
フリーデの返答を聞き終えると、少年は最後に結論を下した。
「これではっきりした。お姉さん、あんたは本当にバカだ!」
「誰が何を言っても、そのまま信じちゃうんだから」
「窮蛆街に足を運ばなかったのが幸いだよ。でなきゃ、金券が何千枚あっても足りなかった」
落胆した彼女は溜息をついた。
「でもね、落ち込まないで、悲しまないで、金はあるけど頭の足りないお姉さん!」
彼は教会の聖歌隊が聖歌を歌うように言った。
「ぼくは、とっておきの三つ目を教えに来たんだ」
「金券を一枚くれれば、それだけの価値がある情報を教えてあげる」
「ぼくを、信じてくれる?」




