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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
帝国冒険編
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第十九章 再会

二日後の夜、ウェルズは騁馳都市建設社へ向かった。


この会社はここ三か月で騁馳本社から大量の資金を注ぎ込まれ、従業員も設備もほぼ倍に膨れ上がっていた。あらゆる兆候から見て、ここに秘密が隠されているのは間違いなかった。


昼間の業務が終われば、夜のビルに残る人間はさほど多くない。ウェルズにとっては潜入しやすい状況だった。


最初に立ちはだかったのは、魔力を持たない凡人の警備員だった。


不可視化を行使すると、一階の警備員を難なくかわして地下一階へ下りた。目指すは地下三階の資料保管室だ。


サンドラから得た情報を思い返しながら、ウェルズは考えを巡らせた。


「手前の難所はどれも簡単に片付く……厄介なのは最後の防衛線だけだ」


「地下三階には一階持魔者(じましゃ)の巡回員が二人。階段口を下りればすぐに数十の罠が待ち構えていて、中には四階の探知の罠もいくつもある。幻術で巡回員を騙すのは俺の力でも簡単だが、罠の解除が遅すぎる。手間取れば手間取るほど、見つかる確率が上がる……!」


「くそっ、手はないのか?」


ほかに打つ手もなく、ウェルズは必死に頭を絞った。


「こんな時にラロリアがいてくれたらな……」


悔やまずにはいられなかった。


方法を考えあぐねていたその時、階段口の上からごく軽い足音が聞こえてきた。聞き覚えのある足取りだった。


まるで一筋の流星が闇を切り裂き、かすかな光と希望をもたらしたかのようだった。


同じ夜、ラロリアもまた騁馳都市建設のビルの前に着いていた。


潜入魔法を持たない彼女は、猫のように身軽に塀を乗り越えた。着地すると掩体に素早く身を隠しながら進み、ほどなく建物の中へ入り込んだ。


建物に入るなり、ラロリアはその間取りを把握した。


「この手の建物なら知ってる……資料管理室は地下三階の南西の角のはず」


脳裏に見取り図を思い浮かべ、彼女は足早に地下一階へ潜り込んだ。地下一階と二階の巡回員には多少手こずったものの、機敏な身のこなしでうまくかわし、地下三階へたどり着いた。


階段口からそっと地下三階の様子をうかがうと、隠れ蓑に使えそうな物が見当たらないうえ、罠の密度も大幅に上がっているのが分かった。


「まずいわね……罠がこんなに多いんじゃ、素早く突破するのは無理」


「でも、もう時間はあまり残ってない……ここ数日で入口の守衛が倍に増えた。きっと何かが運び込まれる。一旦退いて突破の手を考えるなんて、できない」


「私の速さに賭けるしかない……!」彼女は腹を決め、自分自身に賭けることにした。


数分かけて巡回員の動きを観察し、できるだけ鉢合わせせずに済む経路を組み立てると、彼女は動き出した。


「探知の罠……火球の罠、雷獄沸騰の罠、緩雲滞霧の罠……ここ、罠が多すぎるでしょ……!」十歩進むたびに罠の仕掛けや作動用の魔力感応線が見つかり、彼女はそれを一つずつ無力化していくしかなかった。


手先の器用な彼女は、ほどなく最後の曲がり角の手前にたどり着いた。ここを曲がれば、廊下の突き当たりの部屋が資料管理室だ。


「この先は掩体がほとんどない……なのに罠はたくさんある」彼女はそっと掩体の陰に身を縮め、巡回員の足音に耳を澄ませた。


「あいつが通り過ぎるのを待ってから突破しよう……時間が足りなければ、ここまで巡回してきた時に後ろの掩体へ戻ればいい」ほどなく、巡回員が前方の十字路を通り過ぎた。


ラロリアはその隙に、資料管理室へ通じる通路へ入った。


「四階の探知の罠……時間がかかりそう……」


苦労して最初の罠を無力化した。だが喜ぶ間もなく、背後から足音が聞こえてきた。


その足音に、ラロリアは雷に打たれたように凍りついた。


「まずい……どうして引き返してきたの……!」


焦りで居ても立ってもいられず、慌てて辺りを見回して身を隠せる物を探したが、何一つなかった。


「おしまいだわ……!」


足音はどんどん近づいてくる。ラロリアは息を殺し、身じろぎ一つせずに壁の隅へぴったりと身を寄せると、そのまま低く伏せた。いっそ床に溶け込んでしまいたかった。


なすすべもなく見つめる先で、巡回員が十字路に姿を現し、足を止めた。


「おい、ちょっと上行ってトイレ済ませてくる」彼は遠くへ向かって声を張り上げた。


「おう、分かった」遠くのもう一人の巡回員が答えた。


「何だって!?」彼はさらに一歩踏み出した。


その一歩に、ラロリアの心臓がぎゅっと縮み上がった。


「おしまいよ……あいつが振り向いたら、見つかっちゃう……早く何か考えなきゃ……!」


「聞こえたって言ってんだよ……!」遠くの巡回員がもう一度応えた。


巡回員は向きを変え、立ち去ろうとした。


その振り向いた先は、ちょうどラロリアのいる方向だった。


だが彼は、何事もなかったかのように去っていった。


一秒が過ぎ、二秒が過ぎ、三秒が過ぎた。


床に伏せていたラロリアは身を起こした。


自分が小柄で、伏せるだけで相手の視線をやり過ごせたことを、これほどありがたく思ったことはなかった。


起き上がったラロリアは埃を払うと、向き直ってふたたび罠の解除に取りかかった。


数分後、ようやく最後の障害を無力化し、彼女は資料管理室にたどり着いた。


その時、背後でかすかな足音がした。誰かが後に続いて資料管理室へ入ってこようとしているらしい。


「残りの巡回員……?私、見つかったの?」ラロリアは緊張に駆られ、腰の刃を握った。


息を殺して扉の脇に身を潜め、相手が入ってこないよう心の中で祈った。


だがその願いも空しく、扉が押し開けられた。


相手を確かめる余裕もなく、彼女は長剣を逆手に握り、入ってきた者めがけて柄を叩きつけた。


だが標的は一階の水準を超える反応速度で大きく跳び退き、その一撃をかわした。


「おいおいおい、助けてやった恩人にその仕打ちか?」


「あんた……?」ラロリアは目を丸くした。目の前にいたのは、これ以上ないほど見慣れた人物——ウェルズだった。


ウェルズはポケットに手を突っ込み、のんびりと言った。「俺がいなきゃ、お前がこんなにあっさりここへ潜り込めるわけがないだろ」


ラロリアは青い瞳を見開いた。「私がいなきゃ、あんただって罠を越えてここまで来られなかったでしょ」


二人は気まずく黙り込んだまま、しばらく見つめ合った。あの言い争いの後とあっては、なおさらどう切り出せばいいか分からない。互いに睨み合うさまは、まるでどちらが先に目を閉じるか競っているかのようだった。


だが、その睨み合いもやがて終わりを迎えた。


互いに耐えきれなくなったように、二人は同時に噴き出した。


「お前の言うとおりだ。お前が罠を解除してくれなきゃ、ここへ入るのは難しかった。罠解除の巻物をごっそり買い込む羽目になって、行ったり来たりで時間も金もどれだけかかったか分からない」


「あんたの幻術もなかなかだったわ。あれがなかったら、私はとっくに見つかってたでしょうね」


「やっぱりお前のほうが大事だった」


「ううん、あんたのほうがすごいって……」


……


二人はおかしな言い合いを続け、しまいには笑いを堪えきれず、また声を立てて笑った。


かつての言い争いのわだかまりはすっかり消え去り、見交わす目には言葉のいらない信頼があった。


そしてこの時、ラロリアはあることを悟った。実は巡回員の視線をやり過ごせてなどいなかったのだ。相手は幻術にかかって、彼女が見えていなかっただけだった。


「この間、元気にしてたか?」ウェルズが尋ねた。


「まあまあね」


「運命はまだ、私たちを引き離すつもりはないみたいね」ラロリアは剣を鞘に収めた。


「また組むか?」ウェルズが尋ねた。


「もちろん」彼女は頷いた。


「お前には謝らないとな。お前の言ったことは、間違ってなかった」彼は言葉を切った。「俺の家族も、俺が復讐のためにあれだけ多くの人間を犠牲にするのは、見たくないだろうからな」


「それに、前にお前を囮に使ったことも」


「いいのよ、もう済んだことだし」彼女は気にしていないとばかりに両手を広げた。「この私が気のいい人間なんだから、仕方ないわね。どうせ死ななかったんだし、許してあげる」


「やっぱりそういうのはやめて。あんたらしくない!」ラロリアはどうにも落ち着かなかった。


「……一昨日が満月だった。学院では何も起きなかったし、サンドラに頼んで警察署の伝手で匿名の手紙も回してもらった」彼は少し間を置いた。「今思えば、あの情報は俺をじっと待たせておくためのものだったんだろう。危うくそのとおりにするところだった」


「じゃあ、あんたは私に一度助けられたってわけね」彼女はさも当然のように言った。


結局、話を戻したのはラロリアだった。


「あんたもこの会社の異常に気づいたの?」


「俺は苦痛の精華を追ってここへ来た」ウェルズはこれまでに集めた情報を話した。騁馳都市建設の幹部が苦痛の精華を集めているのを突き止め、その家に忍び込んだところ、すでに数十個の苦痛の精華と様々な禁制の宝石を溜め込んでいたと分かったことまで。


「私もこの会社がおかしいって突き止めたの。ここは計画の核心で、近所の人が深夜に黒衣の者が出入りするのを見てるわ」一人で動いている間も、ラロリアの情報収集の手は緩んでいなかった。


「どうやらここが、秘密結社の主な拠点らしいな」ウェルズは言った。


浸透にも段階がある。ここが計画の中心だからこそ、これほど多くの秘密結社の構成員が動いているのだ。


「見てみましょう」「奴らの秘密を暴く時だ」


二人は声を揃えた。


二人は資料管理室の資料を調べ始めた。力を合わせたおかげで、重要な情報はすぐに見つかった。


「下水道工事の際……一部の場所には特製の基礎を打ち込む必要がある」ラロリアは工事記録簿と材料記録簿を見て、驚きの声を上げた。「なんてこと……隠語を使っているけど、特製の基礎に『術者の脳』と、死霊魔法の核心『枯石』が必要だなんて。こんなことをして何のつもり?」


「汚水処理場へ通じる下水道の配管には特製の塗料を塗る必要がある……」ほどなく、ウェルズも異常な部分を見つけた。「指示に従い、特製の塗料は高い魔力親和を持つ『秘銀(ミスリル)』を主な配合とする……これも隠語だ……」


「なんてこと、こんな巨費を投じて、いったい何のつもりなの?」その材料の配合を聞いて、裕福な家に生まれたラロリアでさえ眉をひそめて考え込んだ。


考え込んでいたウェルズが、ある異常に気づいた。


「ここに嘉徳市全体の施工図がある……おい、特製の基礎の位置を読み上げろ」


「ええと、見てみるわね。A―八、A―三十六、A―七十五、B―六……」


ラロリアの読み上げる声に合わせて、彼は特製の基礎の位置を一つずつ図に丸で囲み、それから汚水処理場の配管を黒ペンで濃くなぞった。描き進めるほど、ウェルズはこの陰謀の途方もなさを思い知らされた。


そしてついに最後の一筆を引いた時、真相は白日の下にさらされた。


図の上に浮かび上がったのは、巨大魔法陣だった。嘉徳川の水路に沿って嘉徳市の三分の一を包み込むその紋様は、死霊系の都市級儀式魔法陣のものだった。秘密結社が騁馳都市建設を操っていた目的も、これで明るみに出た。都市建設に乗じて、ひそかに儀式魔法陣の材料を仕込もうとしていたのだ。


長らく解けなかった数々の疑問も、これで腑に落ちた。たとえばハンクの保護リストだ。彼が手出しを禁じられていたのは、まさにこれらの機関の関係者だった。


そして今、魔法陣の設置は完成に近づいていた。


「これは……都市級の不死系儀式魔法陣……こんなものを作って何をするつもりなの!?」ラロリアが愕然と声を上げた。


「特製の塗料は引魔流紋、基礎は魔導節点、それに回録聚魔点と嵌套発効点。標準的なプロコピオス式巨大魔法陣だ。これほどの規模、これほどの投入となれば、この都市に甚大な災厄をもたらすのは間違いない……」


「魔法陣の核心はどこ?すぐに破壊しに行かないと!」ラロリアは表情を引き締めた。


ウェルズは魔法陣の紋様、節点、そして魔力の流れを観察し、ついに法陣の核心の位置を見抜いた。


「儀式魔法陣は嘉徳川に沿って配置されている。源はただ一つ……嘉徳川上流の……『血ダイヤ鉱山』だ」


「血ダイヤ鉱山はテプフェルの手中にある。すべての企画者は秩序編織者で、終末救贖者は奴らと手を組んでいるだけだ」法陣の核心が血ダイヤ鉱山だと気づいて、ウェルズはすべてを理解した。


法陣の核心の位置から、秩序編織者が主導していることが見て取れる。騁馳都市建設の内部にも、彼らの構成員は少なからず紛れ込んでいるのだろう。


「ラロリア、お前はあそこを調べたことがあったな?」


「ええ……でも自分で行ったことはないわ。あそこの情報を調べただけ。それに、あそこが怪しいっていう情報は応策局に送ったはずなのに……」


「相手の隠蔽の手口が、応策局すら欺くほどだったのかもしれない」


十分な資金を注ぎ込み、周到に準備すれば、応策局員や調査者の目を欺くのも不可能ではない。


「奴らを止めなければならない。いや、奴らの陰謀を止められるのは、もう俺たちだけだ」


ウェルズは決意とともに拳を握りしめた。ここへ来たのは復讐や宿願のためだけではない。嘉徳市に暮らす百万の民のためでもあるのだ。


「ええ、あんたの言うとおりよ」ラロリアが相槌を打った。


「戦力が足りない分は俺が何とかする。集合場所と時間だけ決めて、ひとまず手分けして準備しよう」


「この一晩で、奴らの陰謀を打ち砕く……!」ラロリアは拳を握りしめた。


アパートへ戻ったウェルズが扉を押し開けて中へ入ると、ベッドで眠りにつこうとしていた黒蓮が、その音に気づいて身を起こした。


「お帰りなさい……!」彼女はウェルズを出迎えながら、表情を引き締めた。「過去のことを、少し思い出したんです」


「何をだ?」


「記憶を失う前のことです……昔、使用人から『騁馳都市建設』が敵対的に買収されたという報告を聞いた気がします。その裏には公爵府も絡んでいたようで……その時、とても不愉快に思ったんです。あの買収は、非合法な政治的利益のやり取りだったので」


「なるほどな」


ウェルズは納得したように頷いた。それから懐から紙幣を数枚取り出して黒蓮に渡し、別れを告げた。


「聖女とはもう約束してある。三日後に時間を割いて、お前の記憶と身分を取り戻してくれる。俺が彼女の仕事を手伝った報酬だ」


「それと、ここに金貨十五枚ある。この数日の生活費のほかに、記憶が戻った後は旅費も要るだろう。これだけあれば自分の家へ帰るには足りるはずだ」


「待ってください……どうして急にそんなことを?」異変を察した黒蓮は、慌ててウェルズの袖口を掴んだ。


「何でもない」ウェルズは多くを語らず、そっと彼女の手を払って立ち去ろうとした。


去っていこうとするウェルズの背中を見て、黒蓮の胸に何かが込み上げてきた。


「行かないで……」


彼女はそっとウェルズの背中の服を掴んだ。泣き叫びこそしなかったが、目には涙が溜まって揺れている。溺れる者が最後の綱にすがるかのようだった。


「ここで待っている間、ずっと心ががらんとしているように感じていました……」その言葉には一抹の迷いと、言葉にしがたい未練が滲んでいた。潤んだ両目は春雨のように霞んでいる。「あなたはいつも危険な場所へ向かっていく。そして私は……自分が誰かさえ分からない。あなたまで帰ってこなくなったら、私はどこへ行けばいいんですか?」


「過去の記憶も、あの恐ろしい組織も、今の私にはあまりに遠くて、見知らぬものです」彼女はわずかにうつむき、その声は夜風に吹き散らされてしまいそうなほどかすかだった。「私に分かるのは、この間、あなたがそばにいてくれたということだけ……私たち……このまま、離れることはできませんか?誰も私たちを知らない場所へ行って、静かに暮らして、永遠にこのすべてから遠ざかって……」


胸の中で渦巻くその感情が、すべてを預けきった依存なのか、孤独への恐れなのか、それとももっと深く掴みどころのない特別な何かなのか、彼女自身にも分からなかった。


ウェルズは足を止めた。振り返らないまま、服を掴む彼女の手にそっと自分の手を重ねる。その手を払う仕草はそよ風のように軽やかでいて、千鈞の重みを持つ、抗いようのない決意に満ちていた。


「お前の今の気持ちは、記憶を失ったことで生まれた錯覚か、あるいは魔法の影響を受けたものかもしれない」


その言葉に、黒蓮の心は凍てつく湖に沈められたように、切ない波紋を広げた。


「この数日で影響を取り除いて、自分を取り戻せば、お前にも分かる。その時、お前は自分自身の華やかな人生を歩み始めるんだ」


ウェルズはそれ以上留まることなく、歩き出して部屋を出ていった。


黒蓮はもう追わなかった。ただ静かにその場に立ち尽くし、名づけようのない物寂しさが心の底にゆっくりと広がっていくのを感じていた。自分が何を惜しんでいるのかも分からないまま、黙って、扉の外へ消えていくウェルズの背中を見つめていた。そっと閉められたその扉は、二人をこれから先、二つの世界に隔ててしまったかのようだった。

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