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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
絶域城の旅編
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第十七章 進軍

食事の間も、オーロラは美少女としての流儀を崩さず、礼儀と気品を兼ね備えた食べ方をしていた。ただ、その速さは明らかに常人の比ではなく、数箱分の食料が瞬く間に彼女の腹へと消えていった。


食べるのに夢中になると、指が勝手に半透明の粘液と化して次の一切れをすくい取ってしまうので、フリーデは戸口に立って見張りをしてやった。


「うん……これで一週間は持つはず!」


それからの二日間、彼女たちは出発前の貴重な穏やかなひとときを過ごした。


三日目の朝、虫の森を殲滅する部隊が広場に集結した。


隊を率いるグスタフが隊列の先頭に立ち、その後ろに少女二人と三階魔法使い一人が続く。重い荷を背負った召喚獣「壮黒牛」が隊列の中央に位置し、最後尾は数名の三階魔法使いが固めた。この並び方なら、隊列の中で最も脆い兵站と魔法使いを確実に守れる。


目の前の部隊は、一国が短期間で集められる最強の陣容と言ってよかった。百人近くが全員、環位を持つ魔法使いで、第二哨所から徴用した人員を除けば、残りは裂け目が閉じる前に絶域城から急ぎ渡ってきた者たちである。その中には、虹湾王国が出資して絶域城で雇い入れた研究者も少なくなかった。彼らの多系統の魔法が、召喚魔法に頼りすぎるという虹湾王国の魔法使いの弱点を補ってくれるはずだ。


グスタフはあえて朝を選んで行動を開始した。もっとも、無序空間の空は相変わらず暗く、光ひとつなかったが。時計の針が計画どおりの位置に来たのを見て、彼は命じた。


「予定時刻だ。出発せよ」


部隊は荒涼とした大地を進んだ。隊全体の防護水晶を維持するだけでも、少なからぬ出費である。前後に広がるほのかに光る水晶を眺めているうちに、アンジェロが哨所ひとつを手放したがらなかった理由が、フリーデにはふと腑に落ちた。


数時間行軍したのち、密林と虫の群れからなる森が一同の前に現れた。


巨大な「護林人」が密林の中を行き来し、領地を広げるために忙しく粘液を運んでいた。


「全隊、停止。計画どおり行動を開始せよ!第一隊は召喚、第二隊は臨時基地の設営、第三隊と第四隊は周囲を警戒!」グスタフの号令一下、部隊全体が整然と行動を開始した。


まず働いたのは召喚組だった。魔法使いたちは詠唱ののち、火炎を得意とする召喚生物を呼び出した。最も多いのは火元素、烈焔小悪魔、そして低階亜竜である。


召喚隊の中央には、王都学院から来た魔法使いの一団がいた。彼らの詠唱は他と違い、円陣を組んで内側を向き、声を揃えて唱えるものだ。十名の一階、二階魔法使いの魔力が、残らず陣の中央にいる三階魔法使いへと集められていく。


これが「集団詠唱」、すなわち共連詠唱である。単独の術者は自身の位階に縛られるが、共連術式で結ばれれば、皆の魔力がひとつの法術回路へと織り上げられ、陣の中心の術者を出口として一斉に発動する。位階の壁を十一人で分担することで、正当に階を越えられる数少ない手段の一つとなるのだ。巻物を燃やすのと同じ理屈である。代償は長々しい詠唱と、陣形が崩れた途端に法術も崩れ去ることだった。


膨大な魔力が次第に高まり、地面から浮かび上がる赤い光となって、幅五メートルはくだらない円形の魔法陣を形作った。法術が完成すると、魔法陣から烈火が轟音とともに噴き上がり、その中から這い出してきたのは、なんと五階の「大型火元素」だった。


「グスタフ様、召喚を完了いたしました」召喚の指揮を担う魔法使いが、うやうやしく腰を折って言った。


周囲では建設小隊も次々と魔法で土壁を築き、臨時の防御用城壁としていた。


ほどなく戦いの準備が整った。臨時拠点は完成し、増幅魔法もすべて掛け終わっている。


「計画どおり行動を開始せよ……!第二隊は基地を守備、第四隊は待機、第一隊は第三隊と協力して攻撃!」


これはオーロラの提供した情報に基づいて立てられた計画だった。栄養節点を見つけて毒を入れれば虫の森を瓦解させられるとはいえ、節点を見つけ出すのは容易ではない。まず森の奥へ攻め込んで栄養管を見つけ、管の流れの向きから節点の位置を割り出すしかなかった。


目下、低階の魔法使いたちの役目は栄養管の捜索で、位置を確認したのち、第四隊の精鋭が節点へ突進する手筈だった。


フリーデは自ら進んで第三隊と第四隊の任務に加わった。最低限の魔力消費で戦えば、実戦の中で先に敵の特性を把握できる上、後の決定的な戦いの前に魔力を使いすぎることもない。


虫の森を掃討する戦いが、直ちに火蓋を切った。


隊列の最前に立つ火元素が灼熱の炎を噴き出すと、荒れ狂う烈火が森に降り注ぎ、燃え広がっていく。燃え盛る火舌のすぐ後ろに続くのは、火炎抵抗の魔法を掛けられた持魔者たちだ。彼らの役目は、炎に耐える虫を後方で始末することだった。


この光景が、虫の森の内部十数か所で同時に繰り広げられていた。


一キロ近く突入したところで、各小分隊の隊員の何人かが身を屈めて何かを探し始めた。運のよい分隊は、すぐに目標を見つけた。


それは太く厚い肉質の管で、虫の森が作り出した粘液の地面に横たわっていた。管の周囲からは毛細血管のような細い触手が地面へと伸びており、それが栄養を吸い上げる末端の枝である。


目標を見つけると、随行の魔法使いが管の中へ追跡液を注入した。


二時間のうちに、出撃した隊は次々と根拠地へ戻ってきた。幸いにも戦死者はいなかった。


「この負傷者たちはどう処置すればいいですか」グスタフはオーロラに尋ねた。


「今の毒性なら二階魔法でゆっくり消せるわ。大したことない」オーロラは答えた。


このとき、戦いを終えたばかりのフリーデがオーロラのそばへ戻ってきた。


見ると、オーロラは魔法を使って追跡液の方位を確かめているところだった。


魔力が湧き起こり、三階の「標識探知」が成功した。


光点の浮かぶ円形の光の図が、彼女の開いた掌の上に浮かび上がった。標識探知は本来、術者の脳裏にしか浮かばないものだが、今の彼女は二階の「魔法作画」を使って、その画面を具現化し、皆に見せていた。


光点の大部分は遠方の小さな一点に集まり、残りは各地に散らばっていた。


「方向はもうはっきり出てるみたいね」オーロラは手の上の光の図を前に差し出し、皆に見せた。


「ここから栄養節点までの距離は……二十五キロ」


この数字を見て、グスタフは驚かずにいられなかった。虫の森が短期間のうちにこれほど広大な範囲を覆っていたとは、まったく不可思議というほかない。


「だから、あれを広がらせたら世界中がおしまいなんだから!」オーロラは改めて強調した。


「一刻の猶予もない。態勢を整え次第、直ちに出発する」グスタフは指令を下した。「第二隊は一キロから五キロまでの戦闘を担当、第一隊と第三隊はその後の十五キロを担当、最後の五キロは第四隊が突破する!」


「了解!」


命令は実行に移された。ほどなく、再整備を終えた部隊は森の奥へと進発した。


今度は小隊に分かれて進むのではなく、兵力を集中させた密集陣形を取った。召喚生物が先鋒を務め、持魔者が左右を守り、部隊全体が鋭い刃のように虫の森の内部へ突き込んでいった。


それを迎え撃ったのは、言うまでもなく森の内部で育まれたさまざまな虫たちだった。最も数が多いのは護林人で、そのほかにも名も知れぬ飛ぶ虫や軟体の虫が、部隊に攻撃を仕掛けてきた。


敵は一体一体は強くないが、虫たちの毒性は実に厄介だった。たとえ蚊一匹に刺されただけでも、短時間のうちに大量の魔力と精力を失いかねない。幸い、魔法使いたちは護盾を張って、この防ぎにくい脅威を遮ることができた。


「グオオ……!」「ガアッ!」


先頭を行く召喚生物が咆哮し、唸りを上げて噴き出した炎が、優に四、五メートルの高さはある森に一本の道をきれいに切り開いていった。


「灼熱光線、陣形の隙間から前方へ撃て!」「左右両側を守れ!」各隊の指令の声があちこちで上がった。


隊列の中央にいる第四隊は、まだ手を出していなかった。フリーデはオーロラの傍らを歩きながら、前方の火明かりの中で倒れていく虫の影を数えていた。


ほどなく、部隊は第一段階の目標である五キロまで押し進んだ。


「陣を変えろ!第二隊は根拠地への帰還を準備……!」グスタフの命令とともに、およそ三分の一の隊員が隊列を離れ、後方で再編して撤退していった。


内側で守られていた隊員たちが新たな陣形を組み直したが、中央のグスタフたちは依然として動かなかった。


しかし五キロより奥へ踏み込むと、二隊の人員が左右を守っていても、状況は彼らの予想したほど楽ではなかった。


虫の森の奥へ入るほど、守りの力は強くなっていく。護林人の体はより巨大に、動きはより速く、口器はより鋭くなるばかりか、森の中に潜む毒虫もいっそう致命的になっていった。


ある持魔者が剣を振るってムカデを一刀両断したが、半身になったムカデはなおも口器を開いて彼の足首に噛みついてきた。ここの虫の甲殻は外縁よりはるかに堅く、その一太刀だけでかなりの精力を削られていた。


そのとき、潜んでいた護林人が一体、突然正面から襲いかかってきた。あの鋭い長針に刺されれば、まず助かるまい。


毒を帯びた長針が矢のように迫り、その持魔者の胸を貫こうとした——その寸前、魔力で具現化された飛刀が一振り、横合いから飛んできて、目と鼻の先にいた護林人を正確に貫いた。


冷や汗をびっしょりかいた持魔者は、数秒呆然としてから我に返り、慌てて戦闘を続けた。


飛刀を放ったのは、ずっと周囲の状況を観察していたフリーデだった。


部隊はまだ八キロ進んだばかりだというのに、にわかに増した圧力に耐えきれない隊員がすでに出始めていた。フリーデも飛刀で二人を救っている。


だが、それでも戦死者は出てしまった——巨大毒蜘蛛の消化液を浴びた魔法使いだった。


彼が倒れたのを皮切りに、部隊に死傷者が出始めた。


この時点で、部隊はまだ十キロも進んでいなかった。


「まだこれだけの距離で……負担が想像より重い」隊列の中央に立つグスタフは、厳しい表情を浮かべた。


先頭の召喚生物は戦闘が続くうちに大半が倒れ、今や虫たちの反撃の主力を受け止めているのは、持魔者たちになっていた。


グスタフの声が虫の鳴き声を圧した。「負傷者は中央に集めろ、治療魔法を掛けよ!」


第四隊は依然として手を出していなかった。


これ以上損害を出せば、士気に響く。グスタフは負傷者の呻きを聞きながら、算段を巡らせていた。


巨大な墨虫が一匹、火元素に飛びかかった。飛んで火に入る夏の虫である。だが、同時に押し寄せた無数の虫たちが、幾重にも積み重なる落ち葉のように火元素にのしかかった。わずか数分のうちに、この五階の大型火元素は重い物に押し潰された火種のように、突如として崩れ散った。


部隊の最前線で戦闘の要を担っていた火元素は、損害の大部分を引き受け、ついに持ちこたえられなくなったのだ。


「手を出さぬわけにはいかないようだ……」グスタフは低く言った。


戦況を見渡すと、交戦を担う持魔者たちは激しい戦いですでに疲れの色を見せ、動きが乱れ始めている。中央で術を担う魔法使いたちの魔力も、次第に枯渇しつつあった。


「第四隊、戦闘開始……!部隊の前進を援護せよ!」


予定していた時機よりも、はるかに早い命令だった。


第四隊はわずか六人にすぎないが、部隊随一の精鋭だった。


オーロラとフリーデも、当然それに続いて戦闘に加わった。


とりわけ四階のグスタフが加わったことで、最前線の圧力は一気に軽くなった。彼が剣を振るうたびに大量の虫が一掃され、その手際は巨大な鎌で稲穂を刈り取るかのようだった。


それに比べ、オーロラは同じく四階でありながら、まだ四階魔法を一つも学んでいなかった。とはいえ、四階の魔力の蓄えがあれば三階魔法を余裕をもって使える。いくつもの「増速致勝」の魔法が数名の持魔者に掛けられ、その中にはもちろんフリーデも含まれていた。


「ありがとう」体が軽くなったのを感じて、フリーデは礼を言った。


「そんなにかしこまらないで!」オーロラは笑い、熱っぽく鼓舞した。「戦場の棘ある薔薇となって、純白の剣で虫の群れに占領されたこの大地を浄化しちゃいなさい!美少女!」


フリーデは、その言葉に描かれたとおりに敵へ向かっていった。奥の脅威に備えて魔力を温存するため、あの魔力で織られた戦闘ドレスはまだ披露していなかったが、俊敏に躍動する美しい姿は、すでに人々の目を引いていた。


彼女が駆け抜けるたびに、襲いかかるさまざまな虫が剣にあっさりと斬り落とされていく。その精巧で手慣れた剣さばきは、熟練の茶摘み娘が茶葉を摘むように軽やかでのびやかだった。

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