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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
絶域城の旅編
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第四章 雲雀事務所

掲示板の案内に従い、フリーデは事務所のある街区にやって来た。


「ランド街二十番地の二階……」


二階建てのアパートの前に着くと、階段を上って二階へ向かった。日傘を畳み、そっと扉を叩く。


「どうぞ」中から柔らかな女の声がした。


許しを得て扉を押し開けると、典型的な事務所の内装が目に入った。窓の前には事務机、中央には来客用の四角いテーブルと椅子が数脚。その事務机のそばに、三つ編みにした金髪の少女が立っていた。


整った目鼻立ちに、生き生きとした瞳。少女は白い指で乾いた茶葉をつまみ、もう一方の手には湯沸かしを提げて、熱い茶を淹れようとしている。朝日のように眩しいラロリアの金髪と比べると、その髪色はずっと柔らかだった。


「事務所の助手なの?」フリーデはそう思った。


「何のご用?」茶葉をきちんとポットに収めると、少女は陶器のティーポットに湯を注いで蓋をした。


「ここが雲雀事務所で間違いない?募集広告を見て来たの。私はフリーデリカ」


「ん?確かにそうだけど」茶の香りをポットに閉じ込めると、少女はフリーデをしげしげと眺めた。


「あたしが雲雀事務所の管理人。姓はカペリオ、オーロラって呼んでくれればいいから」


「ふうん……あなたが応募に来たの?どう見ても貴族みたいだけど、あたしをからかいに来たんじゃないでしょうね?」ロココ風のドレスをまとったフリーデを見やり、オーロラは疑わしげに言った。


「本気よ。この事務所は……あなたが開いたの?」シャツにセーターを重ねた目の前の少女に、フリーデは意外そうに尋ねた。「でもあなた……まだ成人していないように見えるけれど」


「あなただってそうでしょ?あたしを見くびらないでよね?無駄話は嫌いなの。どう、それでも応募する?」


事務机の縁に腰を預け、オーロラは鋭い眼差しでフリーデを見返した。ミニスカートの下で、曲線の美しい脚を組んでいる。


「もちろん」フリーデは頷き、真剣に答えた。


「第一関門、顔面偏差値と性別。あなたはもう合格」


「あたしみたいな絶世の美少女と組むんだから、見た目も当然それなりの水準じゃないとね。それに、悪い男は嫌いなの」


胸の前で腕を組み、均整のとれた体つきを持ち上げるようにして、彼女は来訪者を認めてみせた。


「じゃあ次は第二関門、戦闘能力。捜査中に危ない目に遭って、そのうえ足まで引っ張られるなんてごめんだもの」


「戦闘能力……どうやって試すの?」


「簡単よ」オーロラは立ち上がって来客用テーブルの前の空いた場所へ行き、格闘の構えを取った。「あたしと一戦交えればいいの」


「あなたと戦うの?」フリーデは少しためらった。手を出していいものか、決めかねていた。


その様子を見て、オーロラはふんと鼻を鳴らした。「あなたがどれだけ強いのかは知らないけど、手加減なんてしないでよね!かかってきなさい、あたしはリエンリス王立学院の首席、才色兼備の美少女なんだから!」


言い終えるや、オーロラは一足飛びに踏み込み、フリーデめがけてジャブを放った。


これにはフリーデも少し驚いた。ここの魔法使いは召喚と空間魔法しか得意でないと思っていたのだ。すぐさま手を上げて払いのけたが、オーロラの攻勢はそれで終わらない。続けざまにもう一方の手のフックが飛び、最後には鋭い回し蹴りが襲いかかってきた。


フリーデは両腕を上げ、この連続攻撃をことごとく受け止めた。三連撃を終えたオーロラが一気に力を溜め、フリーデの胸元めがけて最後の拳を突き出す。ところが、正面からは拳風が感じられない。代わりに、横合いから鋭く冷たい風の気配を察知した。


反射的に腕を上げ、脇腹をかばう。正面のストレートはそのままフリーデに「命中」し、次の瞬間には虚像となってかき消えた。代わりに横手から本物のオーロラが姿を現し、その重い拳がちょうどフリーデの構えた腕に叩き込まれた。


「幻覚……?」


「そのとおり」仕留め損ねたオーロラは数歩下がり、両手を下ろした。「これがあたしの幻術魔法。それを見抜いて、あたしの奇襲をちゃんと防げたんだから、もう合格でいいわ」


フリーデが喜ぶ間もなく、オーロラは振り返って事務机の引き出しを開け、試験用紙を一枚取り出した。


「最後は筆記試験。これに通れば、正式に採用よ」


紙とペンを差し出されたフリーデは、それを受け取ると来客用テーブルの前に座って解答を始めた。


試験の問題は数学、文法、歴史、基礎的な魔法の常識、そして空間学に関わる魔法理論にまで及んでいた。最後の推論問題だけは少し時間をかけて計算したが、それ以外はどれもすらすらと解き終えた。


「できた」


事務机の縁に腰かけて脚を組んだオーロラは、ティーカップを手に、香り高い紅茶をすすっていた。その声に、思わず意外そうな顔をする。「もう?」


机から飛び降りると、フリーデの答案を手に取ってざっと目を通す。問題自体に意地の悪いものはなく、当然ながらフリーデは全問正解だった。本来なら不慣れなはずの歴史の問題まで、このところ一日中図書館に籠もっていたおかげで完璧に答えられている。


「よし、合格」オーロラは一枚目の答案を置いた。だがそこで、手の中にまだもう一枚紙を握っていることに気づいた。フリーデの数式がびっしりと書き込まれた紙だ。


「おかしいな……問題は一枚しか用意してなかったはずなのに」訝しげに二枚目の紙に目をやった途端、その顔が驚愕に染まった。


「これ……あなた、探知方程式を解いちゃったの!?」オーロラは呆気にとられた顔でフリーデを見つめた。その紙に書かれていた問題こそ、彼女が長らく行き詰まっていた研究項目——「標識探知」という魔法を改変することで、無序空間の異常現象が物品をどこへランダム転移させるかを計算するというものだった。


「そんなに驚くこと?」フリーデは少し意外に思った。ちょっと頭を使って、ついでに魔法の術式を書き出しただけなのに。


「と、当然でしょ!この魔法の項目は十数年も止まってたのよ!この術式モデルの解き方、本当に間違いないの?」オーロラは興奮して答案を置き、勢い込んで問いただした。


「ええ、この方法で探知魔法を構築すれば、転移の行き先を特定できる」


「とにかく……あなたは合格どころか、大手柄よ!この報告はあたしが魔法使い集会所に提出してあげる」咳払いをひとつすると、オーロラはその紙を大事にしまい、送るためのクラフト紙の袋を取り出した。


「懸賞金はたくさん出るの?」フリーデが気にかけたのは、むしろ実質的な収入のほうだった。


「もちろん!研究者っていうのは、価値ある成果には懸賞金を惜しまないものなの。少なくとも数万はいくでしょ!」オーロラは豊かな胸を叩いて請け合った。


「それはよかった」答えを渡すだけでお金になるのだから、フリーデも思わず嬉しくなった。


「ここの魔法使いが召喚を得意としてるのは知ってるでしょ?空間と召喚は実はすごく深く結びついてるの。異界の生物はみんな転送門を通ってこの次元界に来るんだから。だから空間学がちょっとでも進歩すれば、たっぷり報奨が出るのよ」オーロラは得意げにすらすらと説明した。


「さて、本題に戻りましょう」そう言って話を本筋に引き戻す。「あなたも最近の失踪事件のことで応募しに来たんでしょ?」


「告示に書いてあったあの事件?」


「そう。最近、絶域城の中で夜間の失踪事件が相次いで、警察が目をつけたの。ところが、警察が調べ始めたら、捜査に加わった警官まで同じように失踪しちゃったのよ」


「首都が四階の『王令代行者(おうれいだいこうしゃ)』を派遣してこの件を処理するのは一か月も先。だから市庁が懸賞の告示を出したってわけ。そこで、正義の味方の美少女、このオーロラ様が、自ら乗り出してこの件を解決するつもりなの!」彼女は小さな拳を握り締め、自信たっぷりに宣言した。


「どうやって解決するの?」フリーデは尋ねた。


「簡単よ。失踪者たちの普段の行動経路は、もう調べてあるの」オーロラは事務机の上の地図を取り上げた。街路を縦横に走る赤い線が何本も引かれていて、その線が密に交わる場所こそ、事故の起こる確率が最も高い失踪の多発地点だった。


「毎晩こういう場所をぶらついて、何か異常に出くわしたらその場で片付ければいいの!そうすれば問題はおのずと解決するわ」彼女は自信ありげに言った。


「ずいぶん大胆なのね」


「それと、まさかその格好で戦うつもりじゃないでしょうね?」彼女はフリーデのドレスを一瞥した。「ついてきて。服屋に連れて行って、ちょうどいい服を何着か買ってあげる」


オーロラに連れられて、フリーデは通り沿いの服屋に来た。市民にも手の届く実用的な服が中心の店だ。


「よっ、オーロラ、今日もまた見に来たの?」入ってきたオーロラに、女店員が親しげに声をかけた。


「こんにちは」金髪の少女は気さくに笑って応じた。


「よく来るの?」フリーデは尋ねた。


「流行への鋭い感覚も、美少女に欠かせない要素なんだから!」オーロラは堂々と言った。


「来るのはよく来るけどね、見るだけじゃなくて、もう何着か買ってくれればいいんだけど」女店員が横から口を挟んで茶々を入れた。


「余計なお世話!」オーロラはむっとして店員にあっかんべえをしてみせると、改めてフリーデを品定めし始めた。


「どんな系統の服があなたに似合うかな……あった、これにしましょう!」


彼女は軽装の行動服の売り場へ歩み寄り、女性用の行動用一式を手に取った。トレンチコート風のワンピースに赤い手袋、ストッキング、それに革のベルトがセットになっていて、かわいらしく明るい雰囲気が目を引く。


「これに決まり。きっとあなたに似合うから、早く着替えてきて!」


背中を押されたフリーデは仕方なく更衣室に入り、オーロラが念入りに選んだこの装いに着替えた。


着替えて出てきた彼女からは、ロココ風の豪奢な華やかさがいくらか薄れた代わりに、清々しく引き締まった明るさが漂っていた。交差した襟元からは白く滑らかな肌がわずかにのぞき、体に沿うダブルボタンの上着が華奢な体の線を見事に描き出している。ところどころに淡い黄色があしらわれ、腰には革のベルトをきゅっと締め、下は動きやすい短いスカートと、すらりと長い脚を包む黒いストッキングだった。


「うん、やっぱりいい!最近は帝国の少女持魔者たちの間で、こういう格好が流行ってるのよね!お役所風の制服をそのまま着るのはちょっと堅苦しすぎるし、やっぱりこれが一番!戦えるってことが一目で分かるから、声をかけてくる人もずっと減るわ」オーロラは満足げに評した。


「あら、そのまま着て帰ります?全部で五万新貨ですよ」店員は笑って言った。


オーロラはシャツの胸ポケットから一万元紙幣を数枚抜き出して支払った。


「今なら、お買い上げの方にリボンをおつけしてるんですよ」会計を終えると、店員は鮮やかな赤いリボンを差し出した。


フリーデはリボンを受け取り、左耳の脇の髪に留めた。肌身離さず持っている「咫尺の書(しせきのしょ)」のほうは、書物についた鎖でしっかりと腰に固定する。


リボンを後頭部に付けたら、どうもレシナのスタイルとかぶってしまいそうな気がしたのだ。


「ただであげたわけじゃないからね。この服代はあなたの週給から差し引くんだから!」店を出ると、オーロラは忘れずに一言釘を刺した。


「分かってる」


そこでフリーデは、今夜オーロラの巡回に付き合うことを思い出した。その前に、レシナに書き置きを残して知らせておかないと。


「レシナは繊細だから、私が黙って出て行ったと誤解させて悲しませたら、よくないわ」フリーデはそう思った。


「何か言いたいことがあるの?あたしは察しのいい美少女なんだから、遠慮なく言っていいのよ」何か言いたげな様子を見て取り、美少女を自称してやまない相棒はぱちぱちと瞬きした。


「その前に、一度住まいに戻りたいの」


「いいわよ。夜の六時に、事務所の下の階段で待ってるから」


フリーデはレシナの家に戻り、今夜は帰りが遅くなると書き置きをしたためようとしたところで、ちょうど作業着姿で帰宅したレシナと鉢合わせた。


「今日はこんなに早く?」二人は異口同音に尋ねた。


「ふふふ、こんな偶然があるなんて。私たち、本当に縁があるみたいですね」レシナはこの思いがけない息の合いように、体を揺らして笑った。


「今日は工場の残業がなかったので、三時に上がったんです。あなたは?図書館はもういいんですか?」


「図書館にはもう欲しい資料がなかった。でも、まだしばらく絶域城にいたいから、仕事を見つけたの。今夜はかなり遅くなると思う。それに、もうしばらくあなたのところでお世話になるかもしれない」彼女はいっそ、ありのままをレシナに告げた。


「そうだったんですね!何日でも泊まってくれて構いませんよ。私も一人では寂しいですから!でも最近、街では夜間の失踪事件がたくさん起きているので、くれぐれも気をつけてくださいね」


「ええ、私たちが調べるのがまさにその事件なの」


「その事件なんですか?」レシナは驚いて口を覆い、それから目を閉じて考え込んだ。


「それなら、気をつけてという言葉はもう繰り返しません。工場区の警備員から聞いたことがあるんですけど、その人は夜中に、遠くから『引きずる音』と『水滴の音』が聞こえたことがあるそうです。この情報、お役に立つでしょうか?」


「引きずる音と水滴の音……分かった」フリーデは頷き、手がかりを胸に刻むと、踵を返してオーロラと合流しに向かった。

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