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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
絶域城の旅編
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第二章 弔い

頭上で枝葉が織りなす影が、歩みにつれて後ろへ退いていく。靴底が土に落ちた枯れ枝を踏み折り、パキリと乾いた音が短く響いた。


二組の靴は柔らかく湿った土を離れ、街外れの灰白色の石畳へと踏み出した。


石畳は長い歳月に削られて窪みだらけで、目地には暗緑色の苔がびっしりと生えている。木陰が途切れると日差しがまともに降り注ぎ、あたりの空気はゆっくりと温まって、土と干し草の匂いの混じった温もりを運んできた。


「どうして一人でこんな山の中に来たの?」歩きながら、フリーデは少し気になって尋ねた。


レシナの魔力は哀れなほど弱い。この程度では、せいぜい殺傷力のない戯法(キャントリップ)をいくつか使えるくらいで、獣に立ち向かうなどとても無理だ。だからこそフリーデは、彼女が獣の出る山にたった一人で入ったことが腑に落ちなかったのだ。


「両親のお墓参りです。二人とも私が十三歳の時に亡くなって、それからは三か月ごとに、お供え物を買って山までお参りに来ているんです」


「でも今日は本当に運が悪かったですね、まさかあんな凶暴な獣に出くわすなんて。フリーデさんが助けてくれなかったら、きっと無事では済みませんでした」彼女は両手の指を組み合わせ、まだ怯えの残る顔をしていた。


「それにしても、ついてないです……逃げる途中で籠はなくしちゃうし、ドレスも草むらで裂けちゃって……」そこまで言うと、彼女の整った顔に隠しきれない落胆の色が浮かび、しゅんと沈んだ。家計の苦しい彼女にとって、決して小さくない損失なのだろう。


だが彼女はすぐに首を振り、素朴で明るい笑顔に戻った。「でも、そのおかげであなたに会えたんですから、十分『元は取れた』って言えますよね!」


損失が痛くないわけではない。ただ、すぐに明るさを取り戻しただけだ。心の底から湧き出る活力と、光を目指すしなやかな強さに、フリーデはひどく意外な思いがした。


「そういえば、フリーデさんが絶域城に来たのは観光ですか?王国最北のこの街で自慢できるものといったら、狩猟くらいしかないんですけど!」


「いいえ、資料を探しに来たの。『無序空間(むじょくうかん)』と『古代共和国』についての資料」


「無序空間……北の荒野にあるあの一帯のことですか?古代共和国っていうのは何でしょう?聞いたことのない言葉ですね」レシナは考え込むように答えた。知識の程度は、どうやら一般市民とさほど変わらないらしい。


「でも、資料を探すなら街の図書館が役に立つと思います!それとそれと、代々絶域城に滞在して研究してきた魔法使いたちが作った公式の集会所があって、もう百年も続いてるんです。フリーデみたいにすごい人が入りたいって言えば、断られるはずありません!」


彼女は口を尖らせて懸命に頭をひねり、どうにかフリーデの力になろうとしていた。


その一生懸命な様子に、フリーデは頷いて礼を言った。「あなたって本当に善い人ね。見ず知らずの私のために、ここまでしてくれるなんて」


「正しくて善い人になるのが、私の願いなんです!」レシナは真顔で言った。


「集会所ね……機会があれば行ってみる。本当にありがとう」


「そうだ、フリーデはどこから来たのか、聞いてもいいですか?」


「ライカベサ」


「聖アトランテですね!あそこの名物のマカロン、大好きなんです。小さい頃に一度食べたことがあって、あの甘さが口いっぱいに広がる感じは、一生忘れられません!」


山を下りながら、二人はそんなふうにとりとめのない話をした。人懐こいレシナのおかげで場はすぐに和んだ。彼女はまるで色鮮やかな蝶だ。どの花むらに舞い込んでも、たちまち誰からも好かれてしまう。


歩いて十分もしないうちに、低い城壁が見えてきた。城門に衛兵の姿はない。街の広さも建物の密集ぶりもライカベサよりずっと小さく、門をくぐれば見渡す限り一、二階建ての低い家ばかりで、街一番の高い建物でさえ五、六階建ての鐘楼に過ぎなかった。


絶域城の人通りはライカベサとは比べものにならず、通りに出ている物売りもまばらだ。レシナについていくと、ほどなく街の隅にある二階建ての家の前に着いた。大通りから角を二つ曲がるだけで来られる距離で、この街の狭さがよくわかる。


「ここが私の家です、ようこそ!」茶色の髪の少女はドレスのポケットから鍵を取り出し、扉に掛けた鎖を外した。扉を押し開けると、フリーデに向かって「どうぞ」と手で促し、にこやかに招き入れた。


銀髪の少女も後に続いて中へ入った。まず目に入ったのは居間だ。ソファとローテーブル、本棚が置かれただけの簡素なしつらえで、奥は一続きのオープンキッチンになっている。居間の壁には人物の肖像画が一枚と、長く埃をかぶったままの長剣が一振り掛けられていた。


「あれは……本物の剣?」


部屋を見回していたフリーデの目は、長剣に気づいた途端、そこに釘付けになった。ただの剣ではない。鞘の内に潜む深い魔力と、あるかなきかの殺気が感じ取れる。


間違いない。あれはかつて血を吸った凶刃だ。しかも、その刃に斃れた者の数は決して少なくない。だからこそ、周囲を威圧するほどの気配をまとっているのだ。


フリーデの視線に気づいたレシナが、その先を目で追った。


「お目が高いですね!この剣、うちで一番値打ちのあるものなんですよ」彼女はからからと明るく笑った。


「これ……普通の剣じゃないみたい」フリーデは感知によって、この武器が少なくとも叙事詩級だと見抜いていた。


「ええ、うちのご先祖様が戦場で使っていた剣なんです!戦場でずいぶん武勇を振るったらしいですよ!両親が遺してくれた、たった一つの形見でもあるんです」レシナは懐かしそうな目でその長剣を見つめた。「私が持っていても飾りにしかなりませんけど、いずれは妹に使ってもらえるはずです!」


妹の話になると、その声は期待に弾んだ。


「居間の奥がお風呂と私の寝室で、あなたの部屋は二階です。先に案内しますね。大丈夫、普段からちゃんと掃除してますから!」


レシナに続いて階段を上がると、二つの部屋と、屋根裏へ続く階段があった。左は物置らしい。レシナが右の扉を開けると、中は簡素な寝室で、衣装棚に鏡台、寝台と机が備え付けられていた。


「武器に詳しい人って、戦いの得意な戦士か鍛冶屋のどっちかだって聞きました。フリーデさんは前者ですよね?」


「ええ……」フリーデはどう答えていいのか、少し迷った。今の自分は武器を呼び出すことさえできない。戦うなど、なおさら無理な話だ。


部屋は清潔に整えられ、寝台や机の上には、趣向を凝らした手縫いの動物のぬいぐるみまでたくさん並んでいて、見ているだけで心が和んだ。


「きれいに掃除してあるのね。飾りもこんなに……普段からわざわざ整えているの?」フリーデは意外に思った。普通、誰も住んでいない空き部屋をわざわざ飾ったりはしないだろう。


「ええと……実はこの客間、よそで留学している妹のために用意したものなんです。ただ、残念なことにずっと帰ってこなくて、たまに手紙をくれるだけなんですけど」レシナの眉間にふと寂しげな色がよぎったが、すぐに笑顔に戻った。「だから、あなたがここの最初のお客様なんですよ!」


「それは光栄ね」


「住みにくいところがあったら、必ず教えてくださいね。いい勉強だと思って、しっかり聞いて直しますから!」


子熊、兎、犬、猫と、いろいろな動物のぬいぐるみを眺めながら、フリーデはふっと微笑んだ。


「こんなにたくさんのぬいぐるみに囲まれて暮らせるなら、きっと幸せに過ごせそう」


「そう言ってもらえると、頑張った甲斐がありました!荷物の整理もありますよね?じゃあ、私は先にお風呂に入ってきますね!」


そう言って階下へ向かいかけたレシナは、去り際にはにかんだ笑みを向けた。「おもてなしに行き届かないところがあったら、必ずメモを残して教えてくださいね。黙っていなくなったりしたら、私、すごく悲しいですから」


レシナが出ていくと、フリーデはふかふかの寝台にうつ伏せになり、枕元にずらりと並んだぬいぐるみたちを眺めた。


実のところ、荷物と呼べるものはほとんどない。貨幣を詰め込んだ小容量の空間の指輪一つが、彼女の全財産だった。


「少なくともここなら、悪くない暮らしができそう」


寝台に横たわったまま頭を空っぽにして、何も考えずにいるうちに、静かに翌朝を迎えた。

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