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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
ライカベサ編
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第十八章 ヴァージニアの招待

銀髪の少女はヴァージニアの招待に応じ、その馬車でヴァージニアの住まいへ向かった。道すがら、フリーデは窓の外へ視線を向けた。ここはライカベサの高級区の中でも、とりわけ格の高い一角だ。青銅製の街灯は華麗を極め、通り沿いに並ぶのは高い塀に囲まれた屋敷ばかりだった。時折さまざまな品を扱う商店も目に入ったが、店員はどこか手持ち無沙汰な様子だった。


「この区域の店員たちは、ずいぶん楽そうですね?」フリーデは窓の外の景色を見ながら、向かいに座るヴァージニアに尋ねた。


「当然ですよ。ここのお店は、商店というより物流センターみたいなものですもの!召使いたちが毎週お店に注文に行って、あとはお店のほうで門の前まで品物を届けてくれるんです。だから店頭で買っていくお客さんなんて基本的にいなくて、暇なのも当たり前なんです!」


ときおり言葉を交わすうちに、馬車はほどなく、そうした屋敷の一つへと入っていった。開け放たれた門から温かみのある黄色の主屋の前までは、まだかなりの距離があった。


馬車が止まると、フリーデはゆっくりと降り立った。屋敷の前に立ってみて、ようやくその大きさが実感できた。正門の扉だけでも馬車一台がそのまま乗り入れられるほどで、建物は三階建て、四隅には尖塔を戴いた鐘楼がそびえ、敷地も広大だった。


「お嬢様、お帰りなさいませ」花壇で枝葉の手入れをしていた召使いが数人、馬車から降りてきたヴァージニアに気づいて、恭しく頭を下げた。


「さあ、一緒に入りましょう」ヴァージニアは親しげにフリーデの手を取ると、五段の階段を上って屋敷の中へと導いた。


案内されたのは、精緻で贅を尽くした大広間だった。時折、忙しげな召使いが階段を上り下りしていく。この屋敷には片付けても片付けても仕事が尽きないらしく、大勢の召使いがひっきりなしに行き来していた。


二人は優雅な弧を描く階段を上り、二階の応接室へ入った。柔らかく広々としたソファに腰を下ろすと、ヴァージニアに呼ばれたメイドが、慎重な手つきで茶を淹れた。


「さあ、どうぞお飲みになって。これは帝国南部と連邦の境にあるブルディア産の特等茶葉で、一杯で二金券もするんですよ」


ヴァージニアはティーカップを手に取って一口すすると、熱っぽく語った。


「ブルディアは帝国と連邦の間にある山地で、そこに住む山の民は一年中、茶の木の世話をしているんです。茶摘みをするのは狐の亜人たちだそうですよ!山じゅう探しても、この紅茶が育つのはその数か村だけで、毎年共和国に運ばれてくるのはほんの数箱なんです。兄はこれを手に入れるのに、何重ものつてを頼ったんですから」


「ブルディア……」聞き慣れないその地名を、フリーデは黙って記憶に留めた。


「私は飲み食いを必要としないし、味も分からない……けれど、無下に断るのも気が引ける」


フリーデはしばし演算したのち、結局はほんのり熱い磁器のティーカップを手に取り、一息に飲み干した。


もっとも、口元でひそかに空間魔法を開き、茶はそのまま魔導書に備わった収納空間へと流し込んでいたのだが。


「ずいぶん豪快な飲み方ですね……熱くないんですか?」


茶髪の少女は目を瞬かせ、いささか面食らった様子だったが、すぐに表情を取り繕った。


メイドが白紙と万年筆をソファの間のテーブルに用意すると、彼女は優雅に身をかがめて何行かしたため、書き上げた紙をフリーデに差し出した。


「これが私からのお礼です。どうかこの小切手をお受け取りください」


受け取った紙には、百金券と記されていた。だがその言葉の意味が分からず、フリーデは問い返した。


「小切手?」


「銀行で金券に換えられる紙のことです。あなた、商人の娘さんじゃありませんでした?それなのに、これを知らないんですか?」


「実を言うと、こういうことはあまりよく分からないんです」


「まあ、あなたって世間知らずの、本物の『お嬢様』なんですね」彼女は胸に手を当て、嬉しそうに自己紹介した。「こう見えても私、高等学校で金融の授業を受けているんですよ?メニューコストと靴底コストが何か、ご存じですか?……」


彼女はひとしきり得意げに語ってから、ようやく本題に戻った。


「実は、あなたをうちにお招きしたのは、ほかにもお力を借りたいことがあったからなんです。もうずいぶん長いこと、そのことで悩んでいて……」笑みを収めると、ヴァージニアはついに、胸の奥深くに潜めていた不安と恐怖をのぞかせた。


「お手伝いできることなら、力を尽くします」銀髪の少女はそう言って頷いた。


「本当によかった!」わずかに顔をほころばせてから、彼女は誰かに聞かれるのを恐れるように声をひそめた。「実は、この一か月ほど、ずっとおかしな悪夢ばかり見るんです。灰色にくすんだ幽鬼の影が群れをなして、夢の中に現れて……普段の生活の中でも、理由もなく恐怖が込み上げてくることがあって、まるで冷たい風が吹きつけるみたいに、いきなり襲ってくるんです……ドリスさん、いったい何が原因なのか、魔法で調べていただけませんか?」


フリーデはしばし演算し、ただの驚きすぎによるものだと結論づけた。だが、それだけのことなら、相応の権勢を持つヴァージニアがとうに治していないはずがない。知り合って間もない相手にすがるほど、なりふり構わなくなることもないだろう。


一方、ヴァージニアのほうも、内心はやるせない思いだった。実のところ、これまで何人もの魔法使いや医師を頼って治療を試みてきたのだが、どれもほとんど効果がなかったのだ。近頃ますます忙しくなっている両親と兄に、これ以上自分のことで気を揉ませまいと、数週間前の治療で治ったふりをするしかなく、それからも鬱々とした異様な感覚に耐え続けていたのである。


「分かりました」フリーデは承諾し、手の中にありふれた探知魔法をいくつか結んだ。「力を尽くします」


暗黒探知、呪詛探知、毒素探知。魔法が次々と手の中で形を成していったが、結果は変わらない。何の問題も探知できなかった。


「どうやら私にもどうしようもないようです……」わずかな期待を込めて見つめてくるヴァージニアに、フリーデはそう告げかけたが、どうにも気が進まない思いが胸の奥から湧き上がってきた。


「まだ方法があるはず……」フリーデはふと、習ってまだ一週間にも満たない、使える魔法がもう一つあることに思い至った。


それは魔導書に書き込まれた陰影探知だった。


「ウェルズ……あなたの力を、貸してもらえる?」


魔導書が構築した意識通路を通じて、フリーデは思いを直接ウェルズへ伝えた。


「何をする気だ?」


「『陰影探知』で人を助けたいの」


「……」ウェルズはしばし沈黙した。「いいだろう。だが、このことは誰にも言うな」


ウェルズが陰影の力を魔導書の中に蓄えると、フリーデはすぐさまその力を引き出して手に集め、ヴァージニアに向けて放った。


放つやいなや、フリーデはヴァージニアの魂の奥に潜む一つの印を感知した。それは陰影の力を帯びた「追猟印記」で、刻まれた者のおおよその方角を探知できる代物だった。陰影の幻惑効果によって彼女の魂の内にまんまと身を潜め、数々の魔法の目を逃れてきたのだ。


フリーデはもう一度ウェルズに「陰影」を帯びた魔力を頼もうとしたが、魔導書にはつい先ほど「陰影抹消」が一つ蓄えられていた。ウェルズが前もって魔法を用意してくれていたと分かり、彼女は手をかざしてそれを放った。


放たれた魔力の流れは的確に印を押し流し、跡形もなく消し去った。


「私……できることは、すべてやりました」フリーデは含みを残した言い方をして、ヴァージニアを見つめた。相手がどう感じているのかは分からない。


ヴァージニアは口がきけなくなったかのようにその場で固まり、一言も発しなかった。


「駄目だったの?」


フリーデがそう思った矢先、ヴァージニアがいきなり飛びついてきた。


目にいっぱいの熱い涙を溜めて、ヴァージニアはフリーデにぎゅっとしがみついた。まるで甘えた女の子が母親に抱きつくようだった。


「どうやったんですか!?」


フリーデはぽかぽかとした温もりを感じた。ヴァージニアの柔らかな頬が自分の頬に押し当てられ、涙の粒が鎖骨に落ちる。ソファに深く沈み込んだ二人の間で、熱を帯びた温もりが両側から包み込むように広がり、フリーデの奥深くにまで染み込んでいった。


「わ……分かるんです。ずっと心の中に居座っていたあの恐怖が、消えたんです!あなた、本当にすごいです!」


ヴァージニアはすぐに身を離すと、ソファに膝をついたままフリーデの肩に手を置き、嬉しそうに褒めちぎった。


ウェルズの忠告を忘れていなかったフリーデは、言葉を選んで答えた。「独特な医療魔法を使ったんです。友人から教わったものなんです」


「本当にありがとうございます……!あなたは本当にすごいです。あのヤブ医者たちなんて、あなたの足元にも及びません!」興奮が少し落ち着くと、ヴァージニアは目元に浮かんだ嬉し涙を拭い、ソファに手をついて自分の席に座り直した。ようやく胸のつかえが下りたのだった。


「いつからそういう感覚があったんですか?」陰影魔法の使い手はごくわずかで、一部の秘伝者に限られる。フリーデはすぐに、ヴァージニアが何者かに目をつけられているのだと考えた。


「ええと……はっきり覚えていないんですけど……でも、最近のことです」


「最近は印象に残ることがけっこう多くて。カンベリ城から列車で国内に戻る途中、あろうことか終末救贖者に襲われたんです……!本当に、いつか自分が突然怪物になるんじゃないかって心配で……!」


「心配いりません。ああいう潜伏性の魔法は、とても探知しやすいものなんです。私の検査でも、あなたの身体に異常は何も見つかりませんでした」銀髪の少女はそう言って彼女をなだめた。


「そうですよね……でなければ、終末救贖者はとっくに世界を滅ぼしているはずですもの」ヴァージニアは安堵の微笑みを浮かべた。「それ以外だと、ハインリヒ伯爵の舞踏会に参加したことでしょうか。一か月前のことです……どうやら、あの頃から始まったみたいです……!」


「舞踏会ですか?確かに、人が入り乱れて何が起きてもおかしくない場所ですね。ああいう場なら、気づかれずにあなたへ魔法をかけることもできたでしょう。これは計画的なものです。まず魔法であなたの居場所をつかんでおいて、あとで機会をうかがって手を下すつもりだったんです」


「位置を特定する魔法なんですか?」ヴァージニアは驚いて口を覆った。


「はい……あなたが不安になったり悪夢を見たりしたのは、その魔法の性質が影響しているからです」フリーデは説明した。陰影には怪異、隠匿、混沌という性質があり、それで仕掛けられた魔法の標記が使用者に影響を及ぼすのも当然なのだ。


「ドリスさんみたいにすごい魔法使いに保証していただけたなら、私も自分の身に問題はないと信じられます。本当にありがとうございます」

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