第十章 犯罪者の掃討
三人が古城の門口に駆け込むや否や、正面から押し寄せてきたのは黒衣に身を包んだ十数名の邪教徒だった。両者がぶつかり合うさまは烈火が寒氷を呑み込むがごとく、たちまち慈悲のかけらもない殺し合いが始まった。
「くれぐれも気をつけろ……!この年寄りは、お前たちの祝祷長老になどなりたくないぞ」
それだけ叫ぶのが精一杯だった。木の棒を手にした中年の男は数名の黒衣の者の只中へ斬り込むと、棒を振るって先端で敵の胸と肋を打ち、喉を突き、さらに長棒を旋回させて相手を弾き飛ばした。
背後からさらに一人の敵が襲いかかると、彼は両端の利を巧みに活かし、すかさず逆手で棒を背後へ突き出した。続けざまに棒を振りかぶって後ろへ叩きつけ、相手の肩甲骨を砕く。
「何にせよ、この極悪非道の連中が相手なら、私も思い切って戦える」
ジョージは迷いなく腰の長剣を抜いて敵に向けた。その心にあるのは好奇心と期待だけで、恐れの色は少しも見えなかった。
教廷と終末救贖者は百年にわたって因縁を重ねてきた間柄で、双方とも問答無用で殺すことを旨としていた。
「来い……」短い詠唱とともに、淡い聖光が長剣に宿った。聖化された刃は鋭さを増して何ものにも阻まれぬばかりか、邪悪な生き物に突き立てれば激しい浄化の灼傷を負わせる。
彼の疾走は不規則な一筋の閃光と化した。閃光が折れ曲がる先には必ず邪教徒が一人いて、その足が最後に止まった時には、閃光の線に触れた敵がことごとく音もなく倒れ伏していた。
杖を手にした少女は武器を軽やかに振るい、周囲の邪教徒と渡り合っていた。彼女が足を止めるのは杖の宝石に力が満ちた時だ。杖を掲げると、先端の宝石から灼熱の炎の毯が放たれ、一帯を浄化していく。
「終末救贖者……彼らが咫尺の書を盗んだのですか?」
戦闘の音が激戦ぶりを物語り、爆発音があちこちで響いていたが、優勢なのは明らかにこの教会の殺し屋たちだった。
「教会の執行官……?なぜ連中がここに現れるのだ」
仲間が次々と倒れてこの地に屍を晒すのを見て、後方の古びた大広間に潜んでいた指揮者は、ついに堪らず手を出した。
「今ここで戦力を失いすぎては、計画に差し支える……」
「術式を使用する……転送門。我が主アレクセイの名において、最終の救贖を実施せよ!」
彼は魔法を詠唱し、血ダイヤ二箱を供物に捧げて、傍らに召喚次元門を出現させた。だが制御の法陣はろくに施されていない。溶岩の紋様が走る赤い魔法の門扉が開くや、背の高いもの低いもの、太ったもの痩せたもの、姿かたちも様々な初級悪魔が、さながら潮のように溢れ出してきた。
召喚魔法の制御を受けない悪魔は、尽きることのない破壊欲を思うさまぶちまけられる。その矛先には当然、周囲の召喚者も含まれていた。全身が赤く、蝙蝠の翼と痩せた小さな身体を持つ小悪魔が一匹、宙に浮かびながら、法術の門を開いた召喚者に早速不意打ちを仕掛けようとした。
だが、その短い小槍を掲げた瞬間、凶悪な鳥の爪がそれをわしづかみにした。爪は悲鳴を上げる小悪魔を肉塊に握り潰し、口へ放り込んだ。
「弱小なクズども、この黒衣の人間どもを攻撃することは許さん」しわがれた醜い声には恐ろしい威圧がこもり、召喚された悪魔たちはたちまち勝手に動けなくなった。
「お前らへの命令は、あの三人の神術使いを始末することだ。俺に逆らいたい奴は、今すぐ声を上げてみろ」
一階から二階程度の悪魔どもに、この凶残な悪魔へ逆らう度胸などあるはずもない。怯えきった奴らは追い立てられるまま、すぐさま命令どおりに動き出した。奈落の悪魔領主が残虐さで軍勢を率いるさまそのものだった。
隠し階の地下道の出口を押し開けると、密かに進んでいた二人は石造りの塔の中に姿を現した。螺旋階段を上って城壁に出ると、下の戦闘がはっきりと見渡せる。教会の三人組が黒衣の者たちの注意を大半引きつけていた。教会の精鋭だけあって、その戦闘力は疑いようもない。邪教徒の方は多くが一階の戦士か魔法使いにすぎず、悪魔が戦局に加わってもなお、戦況は互角にとどまっていた。
「予想通りだ。肉の盾としてはなかなか優秀だな。敵わなくても逃げるくらいはできる。今のうちに悪魔と首領を一気に斬り捨てるぞ」
ウェルズは下をひと渡り見回して局勢を見極めた。一方フリーデは、ジョージに目が留まると、思わず少しばかり注意を向けた。
「あの人……少し違うみたい」
視線を戻すと、彼は二人に三階魔法「増速致勝」「力量増幅」と四階魔法「危険予感」をかけた。銀髪の少女もすかさず魔力を集め、自らの魔導長剣を召喚する。幾重にも付与魔法を重ねたその武器は、もはや以前とは比べものにならない。
「下にはまだ敵が大勢いるし、あの五階の悪魔も虎視眈々と狙ってる。私たち二人の力で、勝算はあるの?」
フリーデは傍らのウェルズに率直に尋ねた。
「怖いのか?」ウェルズは意外そうな顔をした。
「あなたも人間でしょう。私が気にしているのは、あなたの身の安全」彼女は真剣に言った。
「この前俺の喉を絞めた時にも、そう思ってくれていればよかったんだがな」
ウェルズは思わず失笑した。
からかわれても、生真面目な彼女は動じなかった。
「あなたは私にとって大切な人。あなたを死なせはしない」
「俺がそんなに重要人物だったとはな」
ウェルズはふざけた態度を引っ込め、自信に満ちた薄い笑みを浮かべた。
「もちろん、自殺しに行くほど馬鹿じゃないさ」
黒い手袋をはめた右手を上げ、フリーデの目の前でしっかりと握り締める。まるで運命の喉首を絞め上げるかのように。
「絶対の勝算がある。安心して俺を信じろ。俺は無意味なことは決してしない」
「俺たちが手を組めば、こいつ……あいつらなんて物の数じゃない」




