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空間魔導書と少年魔法使い  作者: atu78963254
帝国事変編
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第九章 立憲派会議

ウェルズは半次元界の転送門をくぐり抜けると、物質界のひんやりとした空気を深く吸い込んだ。だが、宿泊先の翠緑の宿へ急いで戻ろうとはしなかった。


王立魔法使い学院の高塔の尖端には絢爛たる魔力の輝きが流れ、さながら夜空にかかる極光のようだった。ありとあらゆる魔法の人材が集うこの学問の殿堂には、当然ながら多種多様な魔法の巻物も収められている。ウェルズは真鍮で縁取られた法術サービスの窓口の前に立つと、怪しげな黒い光を放つ苦痛の精華を受付台へ押し出した。


引き換えに手に入れたのは、危険な微光を放つ四階の巻物の一揃いだった。熱成像感知、鎧甲畸変、震顫感知、弾力法球、高等解除魔法(ディスペル・マジック)、高等隠身……ざらついた羊皮紙の表面には、どの巻物にも肉眼で見えるほどの魔力の輝きがかすかに走っている。とりわけ探知系の魔法は、暗流渦巻く今の帝都で局面を打開するうえで、真っ先に押さえておくべきものだった。


翠緑の宿に戻ると、ウェルズは自室に閉じこもって鍵をかけた。薄暗く揺れるオイルランプの下、インクに濡れた羽根ペンが羊皮紙の上でせわしなくさらさらと音を立てる。巻物に刻まれた複雑な魔法の紋様を全神経を傾けて一つ一つ解き明かし、分厚い魔導書へと書き写していく。


頁をめくるたび、奥術の幽藍の光がときおり瞬いて、真剣な横顔を照らし出す。数日という時間が、ペン先の走りとともに飛ぶように過ぎていった。


そうして数日が経ったある午後、思いがけず届いた返信がその静けさを破った。ウェルズが部屋を出て、宿の一階の広間でひと息ついていたときのことだ。半開きの木の扉のところに、銀髪の少女がひっそりと姿を現した。


幾重にも裾の重なった精巧な作りの黒と白のメイド服は、傭兵とエールの匂いが充満するこの荒っぽい宿には、ひどく場違いだった。少女の面差しは氷のように冷たく、その瞳には何の感情も浮かんでいないように見えた。


その足取りは物の怪のように軽やかで、革靴できしみやすいはずの木の床を踏みしめても物音ひとつ立てない。少女はまっすぐ、隅にあるウェルズの卓へと歩み寄ってきた。


「あなた様がウェルズ様でいらっしゃいますか?」その声は泉のように冷たく澄み、感情の揺らぎはかけらもなかった。


椅子に腰かけていた少年は振り向き、鷹のように鋭い目で彼女を値踏みした。「俺がそうだ。失礼だが、どちら様かな?」


少女は手品のような手つきで、ゆったりとした袖口から手紙を一通取り出した——暗紅色の封蝋には傷ひとつなく、封筒の表には皇室の精緻な金の紋様が押されている。少女はそれを粗い木の卓にそっと置くと、両手を下腹の前で重ね、ウェルズへ恭しく、寸分の乱れもない一礼をした。


「私(わたくし)は『冰(ヒョウ)』、質麗皇女の専属メイド長でございます。こちらは皇女殿下からのご返信でございます。また、今後はあなた様のご差配に従い、お申し付けいただく任務はすべて果たすようにと、殿下より仰せつかっております」


ウェルズは一瞬あっけにとられたが、すぐに眼差しをわずかに険しくし、ひそかに身構えた。メイド長を名乗るこの少女の全身からは、三階の持魔者の危険な魔力の波動がかすかに漂っている。先ほどの、あの鋭く音のない足運びひとつ取っても、茶を淹れ水を運ぶような並のメイドであるはずがない。厳しい殺しの訓練を受けた盗賊か刺客であることは明らかだった。


だが今は、彼女の素性を探るのが先決ではない。ウェルズは上質な手触りの手紙を手に取り、封蝋を剥がして便箋を抜き出すと、丹念に目を通した。


「ウェルズ、まずはあなたの偉業を称えさせてください。禦死長城(ぎょしちょうじょう)を越えて帝国へ帰り着いたことは、誰も成し遂げたことのない偉大な事跡です……父上がなぜ終末救贖者と結託したのかは突き止められませんでしたが、それでも、私のためにここまで尽くしてくれたことに感謝しています。あなたの仲間の死は、本当に残念でなりません。天宮の蔵書庫を調べて、関連する情報を集めてみます。少しでもあなたの助けになれば幸いです。皇位継承にどう干渉するかを決めるにあたって、私の意見を参考にしてくれるというのも嬉しく思います。今、何より重要なのはこのことです。どうか第二皇子を支持してください。私の知る第二皇子は開明で進取の気性に富み、調和と共栄の帝国を築こうと志しています。かつて応策局に勤めていた頃には、権力に屈することなく秘密の調査を幾度も組織し、犯罪を厳しく取り締まりました。だからこそ私は、彼が責任を担える人だと固く信じています。冰にも彼との連絡に向かわせました。お二人の会見が楽しいものになりますように。事態はもう取り返しのつかないところまで来てしまいましたが、それでも私はよく祈るのです。皆が無事に、一緒に暮らせたらいいのに、と。どうかお身体を大切に。質麗皇女より」


ウェルズは便箋を折りたたみ、口の端に満足げな笑みを浮かべた。「ふむ、俺の目に狂いはなかったようだな。やはり彼女は立憲派の支持に傾いたか」


「私に何かお手伝いできることはございますか?」冰は一分の隙もない礼儀正しい姿勢を崩さぬまま、静かに尋ねた。


「第二皇子は、俺たちとの会見をいつに設けている?」ウェルズが訊いた。


「明後日の晩でございます。殿下は財閥所有の豪華なレストランを貸し切り、あなた様をおもてなしになるとのことです」冰は恭しく答えた。


ウェルズは頷き、指先で卓を軽く叩いた。「分かった。もう一つ訊きたい。お前は天宮に自由に出入りできるのか?質麗皇女への手紙を託すこともできるか?」


冰の声は相変わらず冷ややかだった。「はい。私はいつでも、皇女殿下の私物を買い求めるという名目で、堂々と天宮と帝都を行き来できます。お渡しになりたい品や書状がございましたら、責任をもってお届けいたします」


「安全は確保できるのか?行き帰りの道中で待ち伏せや襲撃に遭ったりはしないだろうな?」ウェルズはわずかに眉を上げた。今の帝都は暗流が渦巻き、各勢力の目がそこかしこに光っている。


その言葉が終わるや否や、それまで凪いでいた冰の眼差しが一瞬で冷え込み、霜の降りた湖面のようになった。両手が稲妻のように交差し、メイド服の複雑に見える幾重もの裾とゆったりとした袖口の中へ差し込まれる。


ガキン、ガキン、ガキン——


澄んだ金属音が立て続けに響き、目もくらむような銀光が閃いた。瞬く間に、冷たく鋭い光を放つ十数本の短刀と鋭い短剣が、木の卓一面に整然と並べられる。何よりぞっとさせられたのは、そのうち何本かの短剣の血溝と刃に、拭い切れずに乾いて黒ずんだ暗紅の血の痕がまだ残っていたことだ。


「ウェルズ様、ご安心くださいませ」冰の口調はあくまで平静だったが、身の毛のよだつような冷たさを帯びていた。「私には自分の身を守るだけの手立てが十分にございます。身の程をわきまえぬ小者どもを片付けるなど、赤子の手をひねるようなものでございます」


卓一面にぎらつく凶器を前にしても、ウェルズは瞬き一つせず、落ち着き払って頷いた。「それだけの実力があれば十分だ。ひとまず宿の受付で部屋を取っておけ。ここ数日は待機だ」


冰が両手でさっと卓を撫でると、短刀はまるで魔法にかけられたように、底なしとしか思えないメイド服の隠しポケットへ一瞬で消えた。冰はそのまま身を翻し、音もなく受付へ向かった。


一方、フリーデは先ほどからずっとあのメイド長を見つめていた。ウェルズにあれは誰なのかと訊こうとして、ふと視線を巡らせたとき、卓の隅にいつの間にか手紙が一通置かれているのに気づいた。封筒に記されているのは、紛れもなく自分の名前だ。


怪訝に思いながら封を開けると、整った美しい文字が行を連ねていた。


「こんにちは、フリーデリカ。最近どうしてる?……あたし、ビアンカよ。最近ね、すっごく面白い政治集会に誘われたの。そこの人たちの理念がほんとに特別で……興味があったら返事ちょうだい。あんたも連れてって、一緒に見聞を広めさせてあげるから」


「ビアンカの手紙……?」フリーデは便箋を手に呟いた。愛らしい顔は驚きの色でいっぱいだ。「また新しい政治集会?帝都に今ある六つの主流イデオロギーのほかに、新しい考えを打ち出した人がいるってこと?」


その手紙は羽根のように、彼女の旺盛な好奇心をそっとくすぐった。フリーデはすぐさま羊皮紙を引き寄せ、ペンを執って誘いに応じる返事をしたためた。


その日は、嵐の前の束の間の静けさの中、ひっそりと過ぎていった。


時は瞬く間に過ぎ、約束の会見の日が訪れた。


夜の帳が下り、厚い雲が星と月を覆い隠していた。ウェルズは冰、フリーデ、シャーロットの三人の少女を連れると、呪文を唱え、墨を流したような「陰影隠形」の法術で一同を包み込んだ。四人は闇に溶け込む幽魂のように、音もなく帝都の入り組んだ街路を縫っていく。


今夜の会見の場は、高官や貴顕が集う上城区の、とある最高級のレストランだった。豪奢な黄金の両開きの大門の前には、鉄塔のような巨躯の四階の剣士が二人、立ちはだかっている。薄闇の中、その双眸は溶けた黄金のように眩く輝いていた——「真知術(トゥルー・シーイング)」を加持された魔法の光だ。


ウェルズの一行が近づいた瞬間、門衛の視線が横薙ぎに走った。まばゆい金の光は実体を持つ刃のように陰影の偽装を容赦なく貫き、四人の姿は水面が揺らぐようにして、白玉の階段の前にあらわになった。


二人の門衛が剣の柄に手をかける。だが冰は少しも怯まず進み出ると、掌の上で燦然と輝く皇室の勲章を示してみせた。


「こちらは私の主人ウェルズ様。質麗皇女の名において、仁徳皇子(じんとくおうじ)にお目にかかりに参りました」


皇室の絶対的な権威を示す勲章だと見て取るや、二人の門衛は表情を引き締めた。すぐさま剣の柄から手を放し、恭しく頭を下げて左右に退き、広々と道を空ける。


ウェルズは平静を装っていたが、マントの下に隠れた口元は思わずひくりと引きつった——いつから自分は、この危険なメイド長の主人になったのだ?


彫刻の施された重い大門が鈍い音とともに押し開かれると、贅を尽くした空気が押し寄せてきた。天井の水晶のシャンデリアが無数の光を散らし、広く豪奢な広間を真昼のように照らし出している。数十人の貴族が一度に晩餐会を開けるほどの最上級のレストランだが、今、この広大な空間はひどくがらんとしていた——中央に据えられた、純白のビロードのテーブルクロスを敷いた長卓に、二人の人物が静かに座っているだけだ。


ぱりっとした制服に身を包んだ十数人の給仕と、コック帽をかぶった一流の料理人たちが、生気のない彫像のように壁際で恭しく控えている。今夜、この店のすべては、ただ一卓の客のためだけに動いているのだ。


だが、卓に着いている人影を目にしたとたん、ウェルズは思わず足を止めた。


「黒蓮(こくれん)?」


「ウェルズ?どうしてあなたがここに!」華やかな礼装をまとった黒蓮はぱっと顔を輝かせて立ち上がり、裾をつまんで一歩前へ出た。「嘉徳市であなたと別れてから、ずっと探していたんです。でも、消息がまったく掴めなくて!」


ウェルズは応策局に抹消された自分の記録を思い出し、苦笑した。「西大陸まで冒険に行っていたからな。見つからなかったのはそのせいだ。今夜は、質麗皇女の代理として、第二皇子殿下の招きに応じに来た」


黒蓮はようやく合点がいったように笑い、席に座り直した。


続いてウェルズは、黒蓮の隣に座る少年へ目を向けた。少女と見紛うほど端正で涼やかな顔立ちに、さっぱりと短く整えた髪。豪華絢爛な宴会場にあって、彼はきっちりと応策局の制服を着込み、今にも武器を抜いて戦いに臨みそうなほど張り詰めた様子だった。


さらにウェルズを驚かせたのは、この人物にも見覚えがあることだった。


「あなたは……霄(ショウ)ではないですか?」


「応策局二課に勤めていた頃、たしかにこの偽名を使っていました」少年は立ち上がり、しっかりした足取りでウェルズの前へ歩み寄ると、戦術用の手袋をはめた手を差し出した。「覚えていていただいて嬉しく思います、ウェルズさん」


一同は挨拶を交わし、順に席に着いた。目の前の顔ぶれを見て、ウェルズはとうとう胸の疑問を抑えきれなくなり、率直に尋ねた。「不躾を承知でお尋ねしますが、冰の態度を見る限り、皇室における質麗皇女の地位は、正統な第二皇子であるあなたよりもずっと上のようですが?」


霄はそれを聞いて、少し困ったように苦笑した。卓上の赤ワインが注がれた脚付きのグラスを手に取って軽く揺らし、深紅の液体がグラスの内側に幾筋もの痕を残すのを眺める。


「皇室では、血筋の重みが何よりも勝ります。我々のような異母の皇子皇女は、実のところ、ごく幼い頃にしか顔を合わせる機会がありません。当時は厳しく制限されていて、広大な天宮の中を勝手に歩き回ることなど到底できませんでした。記憶にある限り、最後に質麗皇妹に会ったのは私が十二歳の時で、彼女はまだ八歳の少女でした。その後、私は王立持魔者学院に送られ、卒業後は剣戟の飛び交う応策局へ身を投じました。ですから、先日の任務であなた方と会った時には、もう十年近く皇妹に会っていなかったのです。どこか見覚えがあるとは思いましたが、まさか父上が密かに血眼になって探していた質麗皇女その人だとは、思いもよりませんでした」


彼は一度言葉を切った。深い眼差しに濃い感慨と、ウェルズでさえほとんど気づかないほどの寂しさがよぎる。「質麗皇妹は帝国全体にとって名実ともに掌中の珠であり、しかも父上が生涯で最も寵愛した女性の産んだ娘です。対して私は、取るに足らぬ側室の子に過ぎません。彼女が生まれながらに持っているすべては、応策局で命を張って年功を積むしかない私のような傍流の皇子とは、比べものにもなりません。『皇子』という肩書きが私にもたらした実質的な利益など、たかが知れています。強いて言えば、この残酷な政治闘争の中で、継位の駆け引きに加わるための入場券を一枚くれた、それだけのことです」


ウェルズは黙ったまま杯を掲げ、霄の杯と軽く触れ合わせた。澄んだガラスの音が響く中、二人は酒を一息に飲み干し、互いに通じ合う眼差しを交わした。


傍らのフリーデは、錯綜した皇室の秘話を聞いてもさっぱり話が見えずにいた。ウェルズの袖口を引っ張り、小声でぼやく。「私がそばにいない間に、あなた、本当にとんでもない面倒ごとにたくさん巻き込まれてたのね」


「話せば長い。帰って暇ができたら、ゆっくり聞かせてやる」ウェルズは彼女の手の甲を軽く叩いて宥めた。


給仕が酒を注ぎ足して壁際へ下がるのを待ってから、霄は袖から紋様の刻まれた銀の徽章を取り出し、卓の上にそっと押し当てた。肉眼ではほとんど見分けられない漣が徽章から広がり、長卓全体を包み込む——四階の「遮音結界」だ。結界の外では給仕たちが変わらず恭しく控えているが、卓での話し声はもう一言たりとも届かない。


「応策局の古い習慣です。皆さんにはご容赦いただきたい」霄はかすかに微笑んだが、その眼差しは次第に鋭さを帯びていった。「では、本題に入りましょう」


「公文書の上での私の称号は『仁徳皇子』ですが、ここにいるのは気心の知れた方ばかりです。堅苦しい礼儀は抜きにして、第二皇子か霄と呼んでいただければ結構です。隠さず申し上げると、この数か月、私は幾度もの秘密の面談を通じて、匠極(しょうきょく)財閥の黒蓮お嬢様と深い協力協定を結びました。今や彼女と、その背後の勢力は、私の陣営に立つ筋金入りの同盟者と見なしていただいて構いません」


名を挙げられた黒蓮は多くを語らず、席に端座したまま、優雅な物腰でウェルズたちに微笑みと会釈を送った。


霄はウェルズへ視線を向けた。率直で、射抜くような眼差しだった。「ウェルズさん、あなたが質麗皇妹の個人的な意向を代表し、この皇位争奪戦で私を全力で支持するつもりだと聞きました。直接確かめておきたいのです。これは本当ですか?」


「もちろん、間違いありません」ウェルズは少しも迷わずに答えた。


霄はわずかに身を乗り出し、誠実な口調で言った。「同盟者となった以上、今、私からあなたにご提供できる助力は何かありますか?」


ウェルズは卓に肘をつき、両手の指を組んで顎を支えた。その目には、深謀遠慮をうかがわせる冷静な光が宿っている。「物資と金はさしあたり足りています。今、私に最も必要なのは情報です。第二皇子殿下、現在表舞台にいる帝位を狙う者たちについて、詳しく分析していただけますか。彼を知り己を知れば百戦殆うからず、と言いますから」


霄は重々しく頷いた。その落ち着いた、磁力を帯びた声が、がらんとしたレストランの中にゆっくりと響いた。まるで全局を握る指し手が、この変転極まりない巨大な政治の盤に、正式に最初の一手を打ち込むかのように。


「まずは一番上の兄上です。生まれた時から第一順位の継承者として、あらゆる資源を注ぎ込まれて育てられました。傍から見れば独断専行、唯我独尊の性格で、ほとんどすべてを睥睨し、体制改良のたぐいはどんな形であれ鼻で笑う人です。その背後で支えているのは、根深く食い込んだ守旧派の貴族と、彼らに長年支配されてきた古参の財閥です。さらに恐ろしいことに、装備の整った帝国陸軍、天宮の安全を担う禁衛軍、そして国家の命脈を握る中央銀行までもが、明確に兄上の支持を表明しています。しかもこれは、大貴族が私的に抱える膨大な私兵を勘定に入れない場合の話です。誇張なく言って、兄上の勢力は現在のすべての競争者の中で群を抜いて最強であり、あの黄金の玉座を必ず手に入れる構えです」


「私自身の性格については、自画自賛は控えておきましょう。今後お付き合いいただく中で、皆さんがおのずと判断されるはずです。現在私を支持している勢力は、主に変革を渇望する開明派の貴族、匠極に代表される新興財閥、そして広範な知識人階層です。一方、軍事面では比較的劣勢で、私の手にある実質的な軍隊は、かつて勤めた応策局と帝国海軍の一部、それに市外に駐屯する首都戍衛軍団だけです」


「次に、弟の第三皇子です。博愛の心の持ち主ですが、幼い頃から書物を広く読み、長年書斎にこもっていたせいか、その思想には強い、いくらか非現実的なほどの理想主義の色があります。穏やかな改良によって帝国内外の鋭い矛盾を鎮めたいと望んでいるのです。本人も実力ある四階神術師で、奥深いスコラ哲学に通じています。その背後で全力の支持を与えているのは、全国に勢力を張り巡らせた教会とその私兵、そして国内の治安維持を担う武装警察部です。教会はそれ自体が膨大で敬虔な平民の支持基盤を持っており、ひとたび武装警察部の警察用の備蓄銃器と結びつけば、その潜在力は決して侮れません」


「それから、拓遠(たくえん)おじ様……」その名前に触れたとき、霄の表情にははっきりと尊崇の色が浮かんだ。「誇張なく言えば、私は幼い頃から、各次元界を巡るおじ様の冒険の叙事詩を聞いて育ちました。心の底から畏敬している方です。それは底知れぬ個人の武力のためだけではありません。おじ様は幾度となく危険な半次元界で帝国のために版図を広げ、赫々たる戦功を立ててこられたのです。さらに得がたいことに、おじ様は常に底辺の民を気にかける冒険家で、貴族の反対を顧みず、平民医療保険などの急進的な社会改革制度の推進を帝国議院へ公然と強く建言したことさえあります。最大の金主こそ貪欲な次元界越境植民会社ですが、帝国のあらゆる階層、さらには敵対勢力の中にまで、おじ様の名を慕う追随者が無数に潜んでいます。常識では見積もれない、隠れた力です」


「最後に、質麗皇妹です。彼女は翡翠のように純真で善良な人です。幼い頃から警備の厳重な天宮の奥で暮らし、凡人には想像もつかない富貴栄華を享受してきましたが、権力に毒されることなく、常に世を憂い人を憐れむ心を失わず、最も身分の低い召使いにさえ限りなく優しく接しています。法理の上では、彼女もたしかに合法な継承権を持つ皇位候補者の一人です。ただ、正直に申し上げれば……権力闘争の中で彼女を支持しようという人は、帝国全体を見渡しても、おそらくウェルズさん、あなただけでしょう」


第二皇子の筋道立った長い説明を聞き終え、ウェルズはひそかに頷いた。霄の語った核心的な情報は、これまで彼がさまざまなルートから繋ぎ合わせて把握していた情勢とおおむね一致しており、しかもより正確で透徹していた。


「ご安心ください」ウェルズは重々しく約束した。「質麗皇女にお引き受けした以上、私は労を惜しまずその意向に従い、この残酷な闘争の中で、あなたが皇位に就かれるよう全力でお支えします」


それからウェルズはわずかに目を細め、話をがらりと変えると、ずっと胸に引っかかっていた極めて重要な問いを投げかけた。「第二殿下、あなたご自身は、蓮華本人と、彼女に従う者たちをどうご覧になりますか?」


その名を聞くと、霄はわずかに眉を寄せ、取るに足らぬと言わんばかりに軽く鼻を鳴らした。「帝国上層部の動揺に乗じて、鼠のように暗がりで細々と生き延び、機を窺って勢力を伸ばしている極端なテロリストの一群に過ぎません。この世界では、聖階の魔法使いが控えていない組織など、所詮は三流の野盗であって、何者でもありません」


そこまで言うと、霄の口調には上位者らしい冷酷さと、絶対的な理性ゆえの傲慢さがかすかに滲んだ。「この闘争に決着がつき、新帝が即位して帝国の権力の中心が再び固まれば、聖階の強者を誰か一人差し向けるだけで済みます。虫を潰すように、彼らを容易く残らず抹殺し、徹底的に掃除できるでしょう」


「では……応策局にいた間に、彼女本人を深く調べさせようとしたことはありますか?」ウェルズは霄の目をじっと見つめ、さらに問いを重ねた。


「我々応策局は、たしかに彼女を狙った暗殺行動を幾度か計画し、この厄介事を一挙に、永久に片付けようとしました」霄は首を振った。取るに足らぬ小事でも語るかのように、平静な口調だった。「ですが行動の途中で、精鋭の外勤局員が数名、原因不明のまま消息を絶ちました。投入に見返りが見合わないこと、加えて帝都の情勢が緊迫していることを考慮し、我々は行動を断固として中止しました。貴重な人員はすべて引き揚げ、他の皇子たちがもたらす、より重大で致命的な脅威への対処に集中させたのです」

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