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Dragon Night  作者: -満月-
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15/19

第11話 共闘

 戦場は混乱の渦に包まれていた。

 帝国軍の機体が一機、また一機とドラゴンの猛攻によって撃墜されていく。巨大な尾が振るわれるたびに岩壁が砕け、翼が羽ばたくたびに暴風が機体を飲み込んだ。


「くそっ!」


 クロは機体を急降下させ、ドラゴンの足元へ向けて射撃を浴びせる。

 動きを封じるつもりだった。しかし、そのたびに鋭い尾が襲いかかり、さらに口から放たれる怪しく輝くブレスが行く手を阻む。

 クロの表情にも、じわじわと焦りが浮かび始めていた。

 そのとき、通信機に声が飛び込んだ。


『小僧、聞こえるか』

「……誰だ」

『俺だ。翼を狙え。羽ばたきが起こす風は厄介だ。だが、的はデカい。狙いやすいはずだ。』


 オスカーだった。

 クロは舌打ちしながらも照準を上へ移す。


「ふんっ」


 放たれた弾丸が翼の付け根をかすめる。続く一撃が鱗の隙間へ食い込み、ドラゴンは苦痛の咆哮を上げた。片翼が大きく揺らぎ、負傷させることに成功した。


「よし!」


 一方のオスカーは巨大な岩陰へ機体を潜ませ、長距離ミサイルの照準を静かに合わせていた。


 狙うのはただ一か所。

 首の後ろ――脊髄。


 ——————


 クロはなおも攻撃を続ける。傷ついた翼を狙い、隙を見て足元へ撃ち込む。

 だがドラゴンも愚かではない。

 大きく口を開き、不気味に発光する黄緑色の炎を一直線に吐き出した。


「っ!」


 紙一重で回避したものの、熱風だけで機体が激しく揺さぶられる。


『もっと周りを見ろ!地形を利用するんだ、小僧』

『無理に近づくな!丸焼けになるぞ、小僧』

『小僧、無駄撃ちするな!弾切れになるぞ』


 通信越しの助言が続く。

 

 プチンッ。


 クロの中で何かが切れた。

 こめかみに青筋を浮かべながら、


「僕を……」


 声が震える。


「僕を小僧と呼ぶなああああっ!! クソじじーッ!!」


 叫びながらも、オスカーの助言どおり機体を旋回させた。 

 狙いを変えた先は切り立つ崖。連射された弾丸が岩盤を砕き、轟音とともに崖崩れが起こる。


ドゴォォォン!!


 大量の岩石がドラゴンの周囲へ降り注ぎ、その巨体の動きを封じた。


「今だ!」


 岩陰から飛び出したオスカーは照準を固定する。

 迷いなく引き金を引いた。

 長距離ミサイルが白煙を引きながら一直線に飛翔する。オスカーは命中を確信した、その瞬間――。


ギャアアアアアアアアアアアアッ


 天地を揺るがす咆哮。耳を塞ぎたくなる嫌悪感。

 ドラゴンは天へ向かって炎を吐き出した。不気味に発光する黄緑色の奔流が雲を貫いた直後、空が急激に暗く染まっていく。突風が吹き荒れ、黒雲が渦を巻き、雷鳴が戦場を震わせた。


「なんだ、この天気は……!」


 次々と雷光が落ちる。

 その一本が、飛翔中のミサイルへ直撃した。


バチィィィンッ!!


 稲妻が閃いた瞬間、


ドォォォォンッ!!


 耳をつんざく爆発音が戦場に響き渡る。

 火球は空中で膨れ上がり、衝撃波とともに爆炎が四方へ広がった。ミサイルは跡形もなく砕け散り、無数の破片となって地上へ降り注ぐ。


「……うそだろ」


 オスカーは思わず呟く。

 絶好の好機は、一瞬で消え去ってしまった。


 ドラゴンは再び翼を広げ、嵐の空へ舞い上がる。負傷した翼の膜が風にあおられ、羽ばたくたびに巨体がわずかに傾く。それでもドラゴンは余裕があるかのように、雷鳴轟く嵐の中から鋭い眼光で戦場を見下ろした。その黒紫色の巨体は雷光を受けて妖しく浮かび上がり、鋭く光る瞳が地上の多くの兵士を恐怖させた。


 だが、一機だけは違った。


「まだだ!」


 クロはためらうこともなく操縦桿を握り込み、再びドラゴンへ突撃する。

 その背中を見て、オスカーは口元を緩めた。


「あきらめるには、まだ早いな」


 オスカーも加速する。

 本来なら敵同士である二人は、今だけは肩を並べ、同じ空へ飛び立った。


「クロ……」


 リゼは心配そうにクロの機体を見つめる。その隣でリリーは静かに空を見つめ、小さく呟いた。


「どうか、ご無事で……」


 帝国軍機と連合軍機。

 本来なら刃を交えるはずの二機が、今だけは同じ敵を見据えて並んで飛ぶ。

 戦場の誰もが、その光景に息をのんだ。

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