表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新装版 龍馬旋風の会ーぼくが出会った変な侍ー  作者: 村松希美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

2 キャッチャーの孤独と三銃士



 龍太さんは自分のことを、決して「政治家」とは呼ばなかった。


「俺は『キャッチャー』ながよ、カケル」

「キャッチャー? 野球の?」

「そう。政治ってのはな、高い演台から御託を並べることじゃない。

 誰かが闇夜に投げた、形にならない悲鳴や、飲み込んだ涙……そんな『暴速球』を、ど真ん中のミットで音を立てて受け止めることながぜ」


 彼は僕の隣に座ると、僕がなぜ学校に行けないのか、その理由を根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。代わりに、彼がバッグに放り込んでいるボロボロの文庫本を取り出した。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』、はやみねかおるの『夢水清志郎』、そしてアレクサンドル・デュマの『三銃士』。


「いいか、カケル。今の日本には、リシュリュー枢機卿(すうききょう)みたいな奴らがそこかしこにおる。あいつらが一番恐ろしいのは、俺たちの『感情』さえも、システムの部品として計算しちょることながぜ」


 龍太さんはふと、かつてアルマーニのスーツを着て出席した、あの忌まわしいパーティーでの会話を吐き出すように語り始めた。


「俺は見たがよ、カケル。シャンパングラスを片手に、『大先生』たちが笑いながらこう言うのをな。

『アニメやなんかで夢を応援する歌があるだろう? 子供たちは純粋に感動して夢を目指すが、政治的に言えば、あれは効率的な国力強化のツールに過ぎん。夢を餌に才能を開花させれば、国にとっては上質な歯車が増えるわけだ。これほど安い投資はない』……ってな」


 僕は背筋が凍るのを感じた。僕が部屋で一人、何度も繰り返して聴き、かろうじて心を繋ぎ止めていたあの熱血な応援ソング。あの勇気づけられる歌詞さえも、彼らにとっては「歯車を磨くための研磨剤」に過ぎないというのか。


「身も蓋もないっすよ、それ……。俺、あの歌マジ推しだったのに」

 龍太さんがその時、大先生たちに食ってかかった言葉をそのまま呟くと、彼は悲しそうに、でも力強く頷いた。


「そう。俺も同じことを言ってやったぜよ。だが、奴らにとって人間は『リソース』ながだ。中学時代の親友、ユウキもそうだった……」

 龍太さんの瞳が、深い闇を映して沈む。彼には、生涯消えない傷があった。


「あいつはな、本当は『三銃士』のダルタニアンになりたがっちょった。だが、学校という名の狭い(おり)の中で、ならず者どもの暴力に心を折られた。システムにとって使い物にならん『不良品』だと見なされた瞬間に、誰も見向きもせんようになった。俺は……あいつが投げ続けていたSOSのボールを、一度も捕ってやれんかった」

 龍太さんが30歳になった今も、Tシャツの袖で額の汗を拭うその腕が微かに震えている。


「だからな、俺は決めたがよ。死んで意志を(のこ)すなんて、そんな綺麗な死に方は絶対にせん。国力だのシステムだのの都合で、俺たちの命を計算させてたまるか。

 死んだら負けぜ。泥をすすってでも、無様な格好を(さら)してでも、生きて、あいつが見たかった『洗濯された世界』をこの目で見届ける。

 それが、俺の生存戦略ながぜ。死んで花実が咲くものか、ぜよ!」







アイデアとプロローグを入力してこの章もすべてAIが書きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ