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悠々異世界漫遊譚 〜おっさん旅すりゃ、世界がさざめく〜【旧題:LV99のゆるっと最強異世界漫遊記 〜スローライフは世界の安寧の後で〜】  作者: かたか那由他
第1章

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第4話「ようこそエルフの里」

「……これがエルフの里か。イメージ通り、良さそうなとこじゃない」


 森の奥、緑の木々の中に白い樹脂で固められた家々がひしめき合っている。


 樹木の間を歩き、大きな木の枝を渡るエルフたちの姿も見える。


「ただ……なんかあった?通りに人はいないし、なんか物々しくない?」


 木々の葉はざわめいているのに、里の通りは妙に静かだ。鳥の声も聞こえず、風の音だけが耳をかすめる。


 俺の言葉に、ノルは少し不安げな顔をした。


「……里長のところへ急ぎましょう」


 ノルはそう言うと、足早に中央にそびえる大きな木へと向かう。


 俺とシェルダは、何も言わずに後に従った。


「中央執務舎です。こちらに里長であるミエラ様がおられます」


 ノルが木と同化した建物を見上げて言った。


 入口に控えるエルフの兵士がノルに視線をやり、一歩下がる。屋内は静まり返っており、中央に一人の老エルフが立っていた。


 ノルもこんな状況を予想していなかったのだろう。戸惑いが浮かんでいる。


「エルド様。ミーファの子、ノル。ただいま戻りました。先触れの通り、ミエラ様へご報告へ伺いたいと存じます」


 (うやうや)しくエルドとよばれた老エルフに向かい、自分の胸に手を当て目線を下げる。秘書官のような役割の方なのだろう。


「ミエラ様へ取次ぎます。まずはあちらへ……」


 エルド老は応接間らしき扉を手で示した。


 指示に従い、部屋に入る。落ち着いた白壁の部屋に、鉢植えの植物が並んでいる。


「ノルさん、先触れなんて出してたの?」


「今朝方、森の結界を通して知らせておきました。簡易な伝達しかできないので、詳しい報告は今から行いますが……」


「ふぅん」


 微かに応接室の外で人が動く気配がする。


「のんきだな……」


 シェルダは張り詰めた表情をしている。


「構えたところで何か変わるもんでもないし、気を張りすぎても、しょうがないぞ」


 シェルダを促して、部屋の中央のソファに腰掛けた。


「念のため言っておきますけど……」


 ソファの脇に立ったノルがこちらを見る。


「くれぐれも、本当にくれぐれも失礼のないようにして下さいね。……ユキオさん」


「俺?……信用ないなぁ。一応わきまえてるつもりだよ?」


「大丈夫かな……」


 ノルは小さくつぶやいた。


 ◆


 しばし経って、エルド老が部屋へと入ってくる。


「ノル。先にあなたから報告を。お二人はこちらでお待ちいただきたい」


 ……ああ、これはそういうことだろう。先程の人が動く気配から察することができる。


「ちょっとお待ちいただきたいのですが」


「何か?」


「こんなところで荒事はごめんです。どこか案内したいところがあるなら、案内して下さいませんか?」


 シェルダに繋がれた紐を見せた。一緒に、という意味だ。


 エルド老の顔に深く刻まれた皺がピクリと動いた。


「穏便に、お願いします」


 重ねて言う。ノルは俺が何を言い出したのか測りかねて、戸惑っている。


「ではこちらへ」


 俺の意図するところを察したのか、部屋をでると合図をして兵達を下がらせた。


「よし、行こうか」


 俺が立ち上がるとシェルダはため息を一つついて、立ち上がった。


 そして、連れられたのは建物の奥の一室にある牢屋。頑丈そうな木の柵が設けられている。


「結構明るいね」


 ここに来るまでに、ノルは行き先を察して、エルド老へ抗議していたが、それを俺が執り成すという妙な状況が繰り広げられていた。


「厳重な結界が張られています。ただの木格子とは思われませんよう。それと……」


 部屋の隅に待機していたエルフの兵士が俺とシェルダの手首に銀色のバングルをつけた。


「エルフ銀の魔法封じか。厳重なことだ」


 シェルダが小さく鼻を鳴らす。


「外したら即座にわかるからな」


 無表情な兵士が下がりながらそう言った。


「ま、しばらくのんびりさせてもらうよ」


 バングルがつけられた手をひらひらさせて、ノルに手を振った。


「何もそこまでしなくとも……!」


 改めて抗議しようとするノルを制してエルド老が口を開く。


「里長が正式な裁可を下すまで、しばし猶予をいただきます。調べが済むまでご辛抱願います」


 ノルにちらりと目線をやった後、


「ええ」と返事をして、牢から出ていくエルドとノルを見送り、シェルダの縄を解いてやることにする。


「いつ投獄されると気付いた?」


 縄を解いてやってる最中、シェルダが尋ねる。


「まぁ、里の入口から向かってる時から、なんかあるだろうな―とは思ってたしさ」


「それに、あんな待たされ方して、ノルさんだけ部屋から出すなんて、『配置完了』って言ってるようなもんじゃない。……よし、解けた」


「わざわざ捕まってやるなんて、余裕だな」


 シェルダは部屋の隅に座りながら、鼻で笑う。


「あっちにはあっちの事情があるさ。俺には(やま)しいこともないし、よっぽどでもない限り荒立てる必要もないしな。それに、変に抵抗したら連れてきたノルさんの立場がないだろ?」


「お人好しめ」


「褒め言葉と受け取るよ」


 シェルダから少し離れて腰掛ける。


「あ〜、ちょっと横になっててもいいか?」


「好きにしろ。どうせすることもないんだ」


 窓もあるし、風も入ってくる。ひとまず昼寝をするつもりで、体を横たえた。


 ただ、少し引っかかる。


 ……な―んか空気が綺麗すぎるんだよなぁ。


 そう思いながら目を閉じた。

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