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悠々異世界漫遊譚 〜おっさん旅すりゃ、世界がさざめく〜  作者: かたか那由他
第4章

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第48話「反撃の牙」

 俺を助けた宰相がレヴォルフに向かっていく。


 やれやれ元気な爺様だ──。


 自動回復が終わったのを確認して、後に続く。


 魔法兵の拘束魔法がレヴォルフの脚に絡みつき、レヴォルフはそれを嫌い振り払う。


 拘束魔法は他愛もなく外れるが、その隙を狙いバルマが攻撃を加える。身の丈ほどの大剣、叩きつけられたレヴォルフが身を捩る。


 続けて宰相が斬り上げる。凍気を含んだ刃はレヴォルフの動きを鈍らせる。


 二人が更に追撃を加えようとしたその瞬間、レヴォルフは二人に咆哮浴びせながら大きく体を震わせる。


「ぬおっ!」


 衝撃で弾き飛ばされた二人を後に控えた盾兵達が受けとめる。


 防御の結界があっても、ダメージはでかいはずだ。回復魔法をかけるために後方から兵が集まる。


 認識阻害の結界は張ってあるが油断はできない。


 二人に追い打ちをしようと、レヴォルフは鼻を鳴らして周囲を探る。


「こっちだ!」


 注意を引きながら、レヴォルフの脚を狙うがレヴォルフは飛び退いてかわす。


 さらに詰める。


 前肢で袈裟がけに振り下ろされる爪をかわしつつカウンター気味に鼻っ柱を棒で打つ。


 鼻血の代わりに瘴気が漏れて、地面で煙を上げる。


 ぐらつきながらも体勢を整えようとする所を拘束魔法が邪魔をする。


 うまい。


 もう一撃入れようとしたところで、先に復帰してきたバルマが雄叫びを上げながら大剣をたたき込む。


 更によろけるところに一撃を入れ、再度振りかぶったバルマに、レヴォルフが飛びかかる。


「ぬぅ!」


 振りかぶっているが、一瞬遅い。


 俺が間に入り、大きく開かれたレヴォルフの顎に棒を立てる。


 溢れた魔力が棒状になり、その噛み付きを阻む。


「余計なことを!」


「はいはい」


 バルマの憎まれ口をあしらいつつ、力を込めてレヴォルフを捻り倒す。


「開けろっ!」


 声のする方を見ると、シェルダが剣を抜いて、こちらへ駆けてきている。


「リンド!」


「はい!」


 合図を受けて、リンドが結界の中から燐光を操る。レヴォルフへ向かう足場を作り、それをシェルダが駆け上がる。


 そして、大きく振りかぶった剣に魔力と体重を乗せて、倒れ込んだレヴォルフの背に突き立てた。


 突き立てられた剣の先から瘴気が蒸気のように漏れ出る。


 大ダメージにレヴォルフが叫びを上げる。


 立ち上がり、激しく背を振るレヴォルフに振り払われたシェルダが盾兵達の近くへと着地する。


 レヴォルフは俺達から距離を取るように盾兵を弾きつつ、後方に跳ぶ。


「包囲し直せ!」


 宰相の指示を受けた盾兵達が隊列を組み直すが、レヴォルフが包囲を抜けて壁へと向かう。


「何をする気だ?」


 バルマがレヴォルフへと向かいながら呟く。


 逃げる動きではない。壁を背にして背面の憂いをなくすか、あるいは──


 壁へと走るレヴォルフのスピードが更に上がる。


「盾兵!構えろ!」


 咄嗟に叫ぶ。


 レヴォルフは壁へと向かい猛スピードで跳び、壁を蹴って、包囲に向かっていた盾兵の列に突っ込んだ。


 速度を増した体当たりに、盾兵達が吹き飛ばされる。


「負傷者を封印の結界へ下がらせろ!」


 宰相が下知して、距離を取らせる。


 レヴォルフは、速度を増しながら、壁や床を蹴って縦横無尽に走り始める。


 体から漏れる瘴気が無軌道な軌跡を描く。


「きゃっ!」


 リンドが小さく悲鳴を上げる。封印の結界がレヴォルフに攻撃された。


「大丈夫!まだ保ちます」


 ノルがリンドに、声をかけながら更なる結界の術式を構築している。


 だが、このままやらせておくわけにはいかない。


 結界の外を心配そうに見るリンドと目が合う。


「リンド、いけるか?」


 俺の言葉に、リンドがきっ、と口を結び頷く。


 燐光を走らせたリンドが広範囲を跳び回るレヴォルフの動きに集中している。


「ユキオさん!」


 リンドが一点を見つめる。


「よし!」


 リンドの見た場所に向けて踏みだす。


 瞬間、天井を足場に方向転換したレヴォルフの眼前に燐光が生じ、激しい音を立てて激突した。


 レヴォルフは勢いを失い、落下しながらも、脚に力を込める。


 俺は、魔力を棒に込めつつ、落下するレヴォルフに迫る。


 同じく、リンドの動きに合わせて動いていたシェルダが横から来ている。


 シェルダと一瞬目が合い、シェルダの視線がレヴォルフの後肢に向かう。


 ──よし。


 先行して飛び上がってレヴォルフの右の後肢に斬り込む。


 更に、俺へ意識を向けた隙に、シェルダが炎を帯びた剣で、レヴォルフの左の後肢を切りつけた。


 レヴォルフが激しい音を立てて地面に激突する。


 瘴気を垂れ流しつつ、なおも立ち上がるが、その四肢に先ほどまでの力はない。


 宰相とバルマが、レヴォルフの爪をかいくぐりながら、更に攻撃を加える。


 もう少し。


 そう思った瞬間、レヴォルフの赤い眼光がこれまでにないほどに強く光った。


 ──まずい。


 背筋が冷える。


 まるで、地面が一瞬で無くなったかのように、広場の床が一面、漆黒の瘴気で覆い尽くされる。


 俺は跳べる。


 だけど──。

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