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東の森で.4

 アニエスさんの口から、またも知らない話が出てきた。


「恩恵と誓約?」


「あぁ、従魔との間に決して反故に出来ない約束事を作り誓わせる。従魔はそれを自らの意思で破ることは出来ない。そして、主の為に働く駒となる。その代わりとして、従魔が望むものを授ける事が出来る。これが従魔契約というスキルだよ」


 今まで、それっぽくしか分からなかった従魔契約というスキルの輪郭がはっきりした。アニエスさんの言う通りなら、俺の予想していた事も的中している部分があるな。


 でも、今まで従魔契約をした中で約束事を作ったかと言うと、あやふやな点も多い。ハッキリしているのはアプサラスだ。ーーアメルを側で護りたいというアプサラスの願い。それを叶える代わりに、アメルをこれからも護って欲しいとお願いしている。これは、従魔契約として成り立っているはずだ。ライムやリリは……どうなんだろう? しっかりとした約束事をした覚えはないから、都市に戻ったら確認してみるか。後から誓約を交わすことって出来るのかな?


「ということは、アニエスさんも何か望むことがあるという事ですよね?」


「あぁ、そうなるね」


「でしたら……アニエスさんが良ければ、従魔契約をしませんか?」


 アニエスさんは博識だ。俺より深い知識を持っているのは明らかだった。そんな人が仲間になってくれるなら、俺達としては心強い限り。だが、そこに異を唱える声が。アメルだった。


「私は反対です」


「アメル?」


「だってそうじゃないですか。いきなりそこの魔物をカイルさんにけしかけたり、今だってカイルさんの事を弱いって……ライムちゃんと融合したカイルさんは、凄く強いのに」


「うーん……」


 どうしたもんか。アニエスさんに仲間になって欲しいけど、今の仲間達と不仲になるのは避けたいよなぁ。俺は頭をかいて思案する。するとアニエスさんから声が掛かった。


「そのお嬢さんが言ってるからじゃないんだけれどね、従魔契約は少し待って欲しいんだ」


「? そうなんです?」


 あぁ、と言いアニエスさんは話を進める。


「これから仕える事になるかもしれないんだ。カイル、お前さんの人となりを知りたい。会って間もないからね」


 そういう事か。もしアニエスさんの眼鏡に叶わない場合は、この話自体無しになる訳だ。


「分かりました、無理強いをする気はありません。それで大丈夫です」


「……物分かりが良いね」


 アニエスさんは少し驚いた様子を見せた。でも、どうしようかな。俺達は今回、現状で迷えなくなった森は解決したでいいと思う。原因は取り除いてもらえたようだし。それとは別に、もう一つ調査した方がいい件がある。


「アニエスさん。今日俺達が来たのは、アニエスさんが展開していた結界とは別に、もう一つ気になることがあって」


「なんだい? それは」


 ウィッチがこの森で暴れそうになっているというのを、エルフの事は濁して伝えた。が、分かってるといわんばかりに、アニエスさんはこう返してきた。


「ということは、差出人はエルフだね」


「え、いや、近くの住民がですね……」


「大方、森が燃えないか不安なのだろう。実力があれど心配性なエルフの事だ。いざとなればイッカクを向ける気でいたが……お前さん、エルフ領へ行くのかい?」


 ……隠しても、もはや無駄っぽいなこりゃ。


「はい、出来れば。なるべく力ある者をと手紙には書かれていたそうです。俺達に務まるかは謎ですが、話を聞きたいなと思って」


「カ、カイルさん……」


 アメルが困った顔を見せる中、アニエスさんがふむ……と少し考え、こう切り出した。


「道は分かるのかい?」


「正直な所、何ともいえません。一応、商人が使っている道を辿って行こうかと」


 結界が無くなった今、商人が使っていたという道も復活してるだろう。確か一本道だったはずだし、迷うことはないと思う。


「そういう訳でアニエスさん。俺の人となり? を知ってもらうのは、その件が済んでからということに」


 ここへまた戻ってきますからと告げると、アニエスさんからこんな提案が。


「そういう事なら、私がエルフ領まで案内しよう」


「えっ」


「商人が使っている道は、整地こそされているがかなり回りくどく造られている。私が案内した方が早い。それに」


「それに?」


「そのまま逃げられても困る。道中でお前さんをよーく観察しようと思ってね」


 ニヤリと口角を上げ、こちらを見つめるアニエスさん。……変な事は絶対しないようにしよう。従えているイッカクという魔物へ、準備をするんだと命を下していく。アメルが心配そうに声を掛けてきた。


「カ、カイルさん。あの人達の事、信用するんですか?」


「信用っていうと、それこそ会って間もないから何とも言えないね。だけど、話し合いは出来た。アニエスさん達がその気になれば、俺達ではまず勝てないと思うからね」


 信用と諦め、半分半分というのが俺の心情だった。


「こちらの準備は済んだ。お前さん達、行くよ」


 アニエスさん達は、先に外へ行ってしまった。……鍵とかいいの?


「夜までには一度森から出たほうが良い、って職員さんも言ってたしね。エルフ領へいけるなら早い方がいい。本来なら疑って掛かるのが当然なんだろうけどさ。さ、行こう」


「……カイルさんはお人好し過ぎます」


 不満そうに言いながらも、アメルは俺の後をしっかりと付いてきてくれた。

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