変異種
ちょっと短いのが続きます。
中層をそのまま直進していく俺達。道中、襲ってくる敵は居なかった。イッカクに聞くと、やはり中層にいる魔物はオーガばかりの様で、他の魔物は滅多に見掛けないらしい。そのオーガも辺りには見当たらない。こっちだ、と歩みを進めるイッカクの後を付いていく。
「居タゾ、主」
イッカクが朱を前方へ浮遊させる。浮き上がってきたのは、大岩へ佇む一体の鬼。角は額から三本生えており、肌色は紫色に見える。
「コイツが……」
イッカクと同じ、オーガの変異種。威圧感が半端ない。
「……貴様だな、我が同胞を殺していたのは」
動くことなく、こちらへ発せられる言葉。やっぱり、話せるよな。変異種はイッカクへ向けて話している様に見えた。
「中層ノ魔石ガ必要ダッタノデナ」
「操れん個体がいると思えば……この、同胞殺しめが。今更何をしに来た、今までの事を謝りにでもきたか? それならば従えてやらんこともないぞ? 我は寛大だ」
「俺ノ主ハ、コレダ」
そう言って俺を指差すイッカク、言い方よ。……コレって。一応、主だよ? 俺。それを聞いた変異種は、豪快に笑った。
「ハッハッハ!! そんな下等生物を主にしたというのか? 同胞を殺すことといい、お前は何を考えているか分からんな」
変異種はゆっくりと立ち上がり、こちらに歩んできた。
「我が祖の悲願。それを邪魔する者は、たとえ同胞であろうと容赦はせんーーーー死ねッ!」
変異種は一気に加速し、イッカクへ拳を振るう。イッカクは、その攻撃を手でしっかりと受け止めていた。
「イッカク!」
イッカクへ加勢しようとした瞬間、横からとんでもない衝撃と共に吹き飛ばされて、俺は勢いよく地面を転がってしまう。
「がっ……!?」
イッカクが朱を側まで寄せてくれたみたいだ。俺の周囲は明るくなったが、代わりにイッカクの姿は見えなくなった。痛みは一瞬で収まり、衝撃があった場所を見ながら起き上がると--そこには、オーガが三体。どれもが、俺へと向かってきていた。赤が一体、青が二体だ。
「……三対一は、ちょっとズルいんじゃねぇの?」
俺は鬼斬を抜き、迫りくる脅威に構えた。




