ダンジョン前の様子
ウィズテーラスとしてB級へ昇格した翌日。俺達はいつも通りギルドへと足を向けた。ギルドの中は、どこか閑散としている気がする。
受付にいるジェシカさんが声を掛けてくれた。
「おはようカイル君、それにアメルちゃん達も」
「ジェシカさん、おはようございます。今日はなんだか、静かですね」
「そうね……今ダンジョンはギルドによって封鎖してるし、厳重に警備体制をとっているものだから。先日の事もあって、ダンジョンへ行こうっていう人は居ないし、そのせいかも」
昨日アメルに聞いた話だ。上層にいるオーガに、冒険者が被害を受けたと。今でこそ俺達は戦える様になったものの、オーガはやはりダンジョン内で別格の強さを誇っている。
「それでカイル君、今日は?」
「そうですね……いつも通りに来てしまった所なんですが、ダンジョンに行けないってなると、俺達も活動自体はあんまりですね」
目ぼしい依頼があれば受けてもいいけど、ギルドはそれどころじゃないだろうし。どうしようかなと考える俺に、ジェシカさんが真剣な表情を向けてきた。
「……一応、ギルド本部クラス。所謂B級以上の冒険者、及びパーティーなら入ることは出来るはずよ」
「え、そうなんですか?」
「ただ、オススメはしにくいわね。カイル君達の実力は知っているけれど、手放しに頑張ってきてと言える状況じゃないからね。それに」
「それに?」
ジェシカさんが声を抑えて話してきた。
「……今回の件、オーガの変異種がいるんじゃないかって見立てになっているの」
「え!?」
オーガの変異種……ってことは、イッカクと同じ強さのオーガが今回の件に絡んでるのか!?
「ダンジョンはギルドの戦闘職、それもかなり熟練の人達が集められて、調査にあたっているそうよ」
変異種がいるという前提でね、とジェシカさんは教えてくれた。被害者も多数出ているみたいだし、ジェシカさんが真剣に言うのも納得だ。文献にあった百鬼夜行みたいな事が起きちゃ、中央都市がパニックになるしな。
「ダンジョン前まで見に行く、位なら大丈夫ですかね?」
「それなら良いんじゃないかしら。ついでと言ってはなんだけど、ギルドの戦闘職、その方々と顔合わせをしておくのも悪くないかもね」
貴方達も大事な戦力だから、とジェシカさんは、そこで初めて表情を和らげた。昨日から大分気を張っていたんだろうな、どこかいつもの笑顔に陰りがある気がする。
「じゃあダンジョンの方へ行ってみます。ジェシカさんも、休める時にゆっくりして下さいね」
「えぇ、ありがとう。気をつけてね」
俺達はギルドを後にして、ダンジョンへ向かうことにした。
ダンジョン前に到着。ギルドによって規制線の様な物が張られていた。俺達が近付くと、一人の男性に呼び止められる。
男性は年配に見えるけど、かなり体躯が良い。大盾も持っているし、アミカさんと同じく【重戦士】みたいだ。
「止まれ! 見て分からんか、今ダンジョン内は非常事態だ。貴様達一般の冒険者は、立ち入りは禁止している!」
「あ、いえ。ダンジョンへ入ろうとした訳じゃ無くてですね」
「えぇい、話の通じん奴め! 早く立ち去らんか! 非常事態と言っておろうに!」
……どうしよう、会話をさせてもらえないぞ。
「主、ドウスル?」
今日一緒に来てくれているのは、ライム、アメルとアプサラス、それにイッカクだ。リリはふらっとどこかへ行ったし、アニエスは自身の家へ。どうする? って言ったって、現状を見たかったけど実力行使をしてまで中に入りたい訳じゃないしな。イッカクへ大丈夫、と告げて中央へ戻ろうとした時、後ろから声が掛かった。
「あれ、カイル君じゃん」
「あ、リョウさん!」
ダンジョンから、リョウさんが顔を出していた。




