表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/49

謁見

「ギルドの方、今そんな感じになってるんだ」


「はい。昼前になって落ち着いてきたから、もう大丈夫ってセラさん……えっと、カイルさんを診てくださった医療班の方が言ってくれたので」


「あぁ、あの人ね」


 優しそうな人だったのを覚えている。俺達は領主へ謁見、そして昇格の書状を受け取るため、領主宅へ向かっていた。アメルに聞いた話だと、ダンジョンの上層、その丁度中間くらいまでオーガが来ているという。そんな中、俺達は呑気にしてても良いのかな。


「カイルさん、ジェシカさんからの伝言です。『こっちは気にしなくていいから、先ずは領主に悪印象を与えないように! 必要時は呼びに行くわ』だそうです」


「そっか。じゃあ、今は謁見の方に力を入れないとだね」


 先読みされちゃったな。まぁ、二年以上顔を合わせているし、俺の考えもバレバレか。一つずつこなしていこう。俺達は遅れないように、領主宅への進みを早めた。



 領主宅前に到着。外観だけでも、とにかく大きいのが分かる。警備も厳重で、騎士団が担当しているみたいだ。知っている人もちらほら見かける。入口の警備をしている騎士団へ、昇格の為謁見へ来たことを伝えると、中まで案内してくれた。


「ここはかなり広いものですから。それに、時間厳守の綴りがあったと思います。その、領主は自分の時間を大切にされている方で。それを乱されたくない、という事みたいです」


「なるほどです」


 話しながら、俺達は一際大きい扉の前まで来た。案内してくれた方は、扉前にいる騎士団へ話を通してくれていた。俺達へ挨拶し、持ち場へ戻っていった。


「昇格の書状を賜る為、謁見と伺いました。ウィズテーラスの皆さんで間違いありませんね?」


「はい」


「くれぐれも不敬の無い様お願いしますーーーーアロガンス様、ウィズテーラスの方々がお見えになりました」


「通せ」


 騎士団が扉を開けると、広い空間が顔を出す。目線の先には段差があり、そこに王座、といっても過言ではない装飾が施された椅子へ腰掛ける人物が。その後ろには、それも部屋の装飾なのか分からないが、綺麗な剣が台座へ突き立てられていた。大剣、か? 大きいな。


 座っている男性は、若く見えるが少し小太りという印象が強いか。


「--私が三代目領主、セバンタート・アロガンスだ」


 そう名乗った領主は、俺達をどこか睨みつける様に言い放った。



「此度はB級への昇格だったな? ウィズテーラスとやら」


「は、はい。そうです」


 俺が返事をすると、面倒くさそうに側で護衛をしているであろう人に、持ってこいと告げる。紙を受け取った領主は、そこへ何か書いている様だ。


「B級以上の昇格からは、私の直筆となる。有難く思え」


 領主からそんな言葉が飛んできた。そういえば、今までの書状はサインだけだったか。それにしてもえ、えらく横柄な態度だな。


「こんな短期間で、まるで飛び級ではないか。ギルド本部は何をしているんだ全く……ほら、何をしている。書き終わったから取りに来い」


「は、はい」


 領主の側まで向かい、護衛が見守る中書状の紙を受け取る。今回は個人の昇格ではなく、ウィズテーラス自体の昇格とジェシカさんが言ってくれていたな。アニエス氏がいるならB級でも低いくらいよ! といつにも増して熱が入っていたし。


「……お前がリーダーか。住民からはオーガキラーと、随分名が知られているそうではないか」


 返事をしようとしたが、領主は矢継ぎ早にこう言ってきた。


「ーー囃し立てられているようだが、あまり調子に乗るなよ? 中央都市ここの領主は、私だ」


 下がれと言われ、かろうじて分かりました、と返事を返すことしか出来なかった。な、なんか俺、嫌われてる?


「すると、そっちのが水の巫女候補か。名を何という」


「……アメルです」


 領主が尋ねると、アメルはぶっきらぼうに答えた。ち、ちょっとアメルさん? 睨まないでおこう? 領主なんだから。


「肩に水鳥か……ふん。ジュエレールとの交易が以前より盛んに、そして円滑となった。褒めてやろう。中央都市繁栄の為、ジュエレールからの要求には積極的に応える様に」


「善処します」


 アメルを一瞬睨むように見つめた領主は、溜息を吐いた。


「……もう用は済んだだろう? 私は忙しいんだ、下がれ」


 と告げ、俺達を見ようともしなかった。


 西の都ジュエレールの領主であるルーベルさん。領主として比較対象がそこしか知らないから、そもそも比べたりしちゃいけないんだけど。なんだか……当たりの強い人だな。人数を絞っておいて良かった。リリが居たらエラいことになってたぞ、これ。


【……嘆かわしい】


 こちらも、ずっと嫌な空気にさらされるのは嫌だから、会釈をして扉へ向かおうとしたんだけど……どこからか、声がした。


「……?」


「カイルさん?」


 俺達でも無いし、領主の声でもない。振り向くが、人数が増えた訳でもないな。辺りを見渡していると、領主と眼が合ってしまった。


「……なんだ、まだ何かあるのか?」


「い、いえ」


「ならばさっさと行け、私は忙しいんだ」


 領主の手を振る仕草に少し苛つきを覚えながらも、俺達はその場を後にした。


【貴方は、もしや……待っていますよーー可能性の子よ】


 部屋を出て、扉を閉め切られる前に、そう聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ